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氷原に咲く華  作者: 水瀬黎
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Episode.07 水竜への歌は終焉を迎える

『あ、れ……。ぼく、生きてる?』

「生きておるぞ」

頭の上においた氷をどかしながら答える。

『ちょっと寒いね』

「あたりまえだ。ここは外だからな」

『へ?』

「外だといっておる」

上をみてみろ、と促すように人差し指で上をさす。

『うわあ…っ黒っぽくて青っぽいのの中にいっぱいキラキラが浮かんでいるよ! キレイだねっ』

「なんと情緒の感じられない感想」

わざとらしくため息をつきながら言う。

『ぶー、失礼だな』

「ずいぶん幼い口調で話すとは思うておったが、まさかこんなに幼いとは」

『さっきからバカにして何さ。ぼく君よりずっとおじいさんなんだから』

「そんなかわいらしい姿で言われてものう」

『かわいらし……え?』

言われてはじめて自分の身体をまじまじと見る。

色の白い肌。蒼い髪。もしやと思って近くの川をのぞきこむ。

『ぎゃあああああああぁぁぁぁっ』

水面に映っていたのは蒼い竜ではなく、空色の瞳の七、八歳の人間の少年だった。

「かしましいのう」

『だだだだだって、ぼくの翼が、(かぎ)(づめ)が……!』

「よいではないか。それにあの姿は目立って仕方がないゆえ」

くっくっくとあやしい薬を新品のカバンにつめながら言う。『何があったか説明してくれないかな?』

今の薬はなに?毒じゃないよね、というような疑うような視線を向けながら尋ねる。

「うむ、それもそうだな。時間はたっぷりあるのだからな」

そう言って愉快そうにくちもとに笑みを浮かべた。


【用語集】


◇黒っぽくて青っぽいのの中にいっぱいキラキラが浮かんでいる…星空のこと。

            なんと幼稚な感想なのだ。実に嘆かわしい。

◆あやしい薬……その辺で老人が売っていた怪しい薬品。

        人ならざるものを人の姿にする。

  

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