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第3話 岬と昼休み

 今は昼休み。

 転校生の男の娘――藍森岬あいもりみさきの周りには、ほとんど客寄せパンダよろしく、興味を満たす為にクラスの連中が一斉に群がった。



「……おまえら、ちょっとどけ」

 これを助けたのは久遠。本当に面倒見のいい学級委員。ま、性格なんだろうけど。

 クラスのまとめ役の久遠にこう言われたら、他の連中は道を譲るしかない。

「藍森。おれはこのクラスの学級委員の高梨久遠だ。

 給食一人で食べるのは寂しいだろ?俺たちと食べようぜ」

「え……本当にいいの?」

 藍森のその笑顔は、まさに美少女だった。俺もちょっとやばかった。と、あとで久遠が言っていたけど。

 えーとか、ひでーとか。よくわからない不満の声が上がる中、久遠がぼくたちのところに藍森岬を連れてきた。

 


 ぼくたちは、いつも何かと一緒にいることが多い。

 ぼくと修平、久遠に右京。なんとなくこのメンツが揃っていたって感じ。

 今日、そこに藍森岬が入ってきた。



「よろしく」

 ぼくは緊張気味の藍森岬……長いから岬でいいや。

 その岬に笑いかけた。

「よ、よろしく」

 すごく緊張してるんだろうなぁ。笑顔がぎこちない。

 百六十ニ㎝あるぼくと同じぐらいかなぁ。本当に女子みたい。

 マジ、こんな男子の制服を着ていなかったら、普通に可愛い女の子だ。



 ぼくたちはそれぞれに自己紹介をして。

「えっ!?新里さんって女の子なの?」

 岬は言い方まで女子っぽい。

 ぼくは登校と下校のときは女子の制服を着るけど、学校にいるときはずっとジャージ。

 だってスカートなんて大嫌いなんだ。

 髪も短くしてるし――長いのは面倒で嫌。

 だから男子に見えるのかなぁ。久遠とか修平たちに紛れてたら、ぼくの華奢な体なんて女子っぽいじゃん。でもわかりにくいかな?

「そんなにぼくは男子に見える?」

「うん、かっこいい。だから言われないとわからなかったよ……でも女の子がいると安心する」

 かっこいいだけは余計だけど、ぼくが女子とわかった途端。岬はすごく安心したような笑顔になった。

 岬ってちょっと変わってる……なんだ、こいつ?とか思ってしまう。

 修平だけじゃない。久遠も右京も、岬のリアクションに冷たい視線を送っている。

「おまえ……そっちなのか?」

 と、これは右京。

 結構、右京の言い方はストレート。

「そっちって?」

 笑顔で何の事だかわかっていない岬。え?もしかして……天然とか?

「あー。オカマなのかってことだ。悪気はないけど……変なこと訊くなよ、右京」

 岬の外見もこともあるんだろうね。

 久遠は申しわけなさそうに岬に言い訳すると、右京を睨んだ。右京は肩を竦めて「ごめん」と小さい声で謝った。

 別にオカマさんが悪いんじゃないんだけど。男子には問題あるのかな。

「いいよ、大丈夫。よく言われるから。でも違うよ。ちゃんと女の子が大好き」

 岬はめげることなく、そう言って笑ってた。

 強いなぁ……とぼくは思う。



「新里さん」

「かつみでいいよ」

「じゃ、ぼくも岬でいいよ」

 なんか苗字で呼ばれるとよそよそしい感じがして、ぼくは嫌いだ。

 だからクラスの連中には、名前で呼んでもらうようにしてる。

 岬も嬉しそうに、自分を名前で呼ぶように答えてくれた。人懐っこい性格なんだなぁ。岬は。

「友達になってくれる?」

 岬がぼくを不安そうに見てる。

「それはもちろん。そんな気がなきゃ、名前でなんか呼ばせないよ」

「よかったー」

 まるで女子と話しているみたい。不思議なやつだなぁ、岬。



 ここでふと修平たちの視線に気がつく。

 そう言えば、ぼくたちだけで会話をしてた。

 


 あれ?なんとなく、修平の目つきが鋭いというか……岬を睨みつけてるような?

 それ、久遠も同じ?何で?



「ぼくたちだけで話して悪かったよ。

 でもどうして修平と久遠は怖い顔してんの?」

 ぼくがツッコミを入れると、二人は気まずい感じで視線を逸らした。

 で。どうして右京が笑ってんのさっ。

「こいつらは気にするな。スルーされて寂しいんだから」

「え、そうなの?」

 ぼくが驚くと、「「違う」」と修平と久遠の声が同調シンクロして右京に叫んでいた。

 岬もきょとんとしてる。変な修平と久遠だな。




 給食を食べ終わってから。

 岬の話を聞きながら、ぼくは昨日買いこんだチョコの箱を開けて、食べようとしてた。

「かつみも『マツタケの山』が好きなの?ぼくも大好きっ!!」

「だよねっ!!このチョコが世界で一番おいしい!!」

「うん、そうだよねっ!!」

 うわぁ。岬もぼくと同じなんだっ!!

 いつも昼休みにこれを食べてると久遠は怒るし、修平は文句言うし。

 ウザいのが二人もいたから困っていたんだけど。

「ねぇ、これから岬もぼくたちとお昼一緒に食べようよ」

「うん。かつみとは趣味合いそう。うれしいな」

 相変わらず。右京はずっと笑ったまま。 

 久遠と修平は……なんだか口数が少ない。

「ねぇ、久遠、修平。いいでしょ?」

「……ああ。俺は構わない」

「俺も」

「暗いな、二人とも。嫌なのっ!?」

 ぼくがテンションの低い二人に怒る。

 岬が気にするじゃないか!!

「……迷惑……かな」

 ほらぁっ!!

 岬が落ち込んで、そんなことを口にした。

「俺は右京に怒ってるだけだ」

「は?俺っ!?」

 久遠が低いテンションのまま、驚く右京を睨んでる。

「修平は?」

「俺は腹が痛いだけ。もう大丈夫だから。気にしなくていい、藍森」

 修平は落ち込んでいる岬にそう言った。

「ありがとう」

 岬が嬉しそうに久遠と修平に笑って見せた。

 でも修平は、おなかなんて痛かったなんて言ってたっけ?

 なんかひっかかるけど……まぁ、いいか。



◆◆◆



 そして――学校が終わって、帰宅。

 


 ぼくは晩御飯のときに、転校生の岬のことや修平たちの様子のことを姉貴に相談がてら話して聞かせた。

 姉貴はこういう場合は、人生の先輩なわけだし……。



「そう。でもその岬くんって、今日転校してきたばかりでしょ。

 大切は時期でもあるし、もう少し様子を見てもいいと思うな」

「……やっぱ、そうだよね」

「ただ岬くんとは仲良くしてあげることは忘れないように。

 一番大変なのは岬くんだと思うからね」

「うん。それはぼくも同じ意見」

 こういうときの姉貴は何気に頼りになる。いつもこうだといいんだけどなぁ。



「ねぇ。だったら、今度その岬くんや久遠くんたちもうちに連れてきたら?

 もっと仲良くなれるんじゃないの?」

 急に姉貴がぼくにこんな提案をしてくる。

 ぼくは怪訝な顔をして姉貴を見た。昨日の修平とのこともあるから……。

「そんなに警戒しなくてもいいわよ。ただ仲良くなるチャンスを増やした方がいいんじゃないってこと」

「……それなら。明日でも、岬や皆に話してみるよ」

「うん。お姉ちゃん、頑張っておいしいお菓子作っちゃうから」

 ここは姉貴を信じてみよう。ぼくはそう思いなおして、姉貴に頷いた。

「……修平があのドーナツをおいしいって褒めてた」

「それは嬉しいな。頑張るから、連れてらっしゃい」

「わかったよ」

 たまにはこういうのもいいかもしれない。

 日曜日とかなら、久遠や右京も部活は休みだと思うし――岬と仲良くなるいいチャンスだよね。



◆◆◆



<nanami sied>


 よっしゃ――っ!! 

 まさかそっちから、チャンスが転がってくるなんて、私ついてるっ!!

 いいわねぇ……かっくんを巡って、超面白いことになってるじゃないっ!!

 


 ここは私の腕の見せところよ。 

 ガチリアル乙ゲー計画発動っ!!ってね。



 うわぁ……萌えちゃう。

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