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「さすがおーひさま、強いねっ!」
ゼイルはユティシアに向かって剣を振り降ろす。
ユティシアはそれを難なく受け流した。
ディリアスが執務に追われている間、ユティシアは鍛練場でゼイルと手合わせをしていた。
ユティシアは魔物を討伐した一件以来、剣を振るうことに躊躇いを持たなくなっていた。吹っ切れたように積極的に剣を手に持ち、ゼイルと剣を交えて腕を磨くのだった。
「魔法を使わなければ、実力は、それなりでしかありませんから」
ユティシアは剣を横に凪ぐ。
ゼイルがそれを避けて、再び襲ってきた剣を切り結ぶ。
「ところで、こんなところで仕事サボってていいの〜?」
「陛下は優秀ですから」
キン、と音がして二人の剣が交わる。
同時に二人の視線も合わさる。
「俺、へーかに怒られたくないんだけどなぁ〜」
「別に、怒られるようなことはしていません」
「前もこうやって訓練場に来て怒られてたの、誰だったっけ?…怪我なんかさせたら、へーかにお仕置きされちゃうかも」
「怪我は私の実力不足です。ゼイル殿に責任はありません」
「それでもな〜、へーかはユティシアちゃんのこと大好きだから、心配しちゃうんだよなあ」
「そんなこと…ありません、よ?」
ユティシアはゼイルの剣を押し戻して、後ろに跳んで距離を取る。
二人は視線を合わせると、走り出して再び距離を詰める。
互いに、剣を振り上げる。
「ぶっちゃけ、へーかと何があったのさ?」
その瞬間、ユティシアの剣筋がぶれる。
ゼイルは慌てて方向を変えるが、間に合わなかった。
ユティシアの首筋に血が流れる。
「だ、だいじょーぶ?おーひさま」
これって、へーかにバレたらまずいんじゃ……。
ゼイルの額から冷や汗が流れる。
ユティシアにとっては、怪我など騎士団生活で慣れたもので平然としているが、結構な血の量である。
きっと、皆が見たら卒倒するだろう。特にディリアスなどは…。
「ユティシア」
聞きなれた声に思わず振り返ると、当の本人が。
ゼイルの心臓がばくばくと脈打つ。
「はい。なんでしょう?」
「ちょっと来い。話がある」
ゼイルは訓練場を去っていく二人を見て呆然としていた。
あのへーかが、おーひさまの怪我に目もくれなかった…。
これは重症だ、とゼイルは呟く。
とりあえず現状を報告すべく、ローウェの元へと急ぐのだった。