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最初の方がグダグダですが、見捨てないで頂けると嬉しいです。
豊かさや軍事で名高い大国ディスタールは現在、大きく発展しつつある。以前までは手の回らなかった街道が整備され、孤児院などにも資金が回ることによりさらに富んでいる。軍事の面では対魔物戦闘に関しての備えが強化され、最強の軍が作られている。魔法に関しても知識、技術面ともに向上し、対魔物用の戦力として活用できる日がそう遠くないと言われている。
それに貢献しているのは言うまでもなく、国王と王妃だった。しかし、国王が実力を発揮し始めたのは今の王妃になってからであり、王妃のおかげと言っても過言ではないのかもしれない。
以前から国王は新たな政策を打ち出す気でいた。王妃は国王の仕事を負担し、私財を投げ打つことで、国王に政策を思索する時間と潤沢な資金を与えた。また、戦闘の面ではたくさんの知識を惜しげもなく教え、“剣王”と名高い国王と共に自ら指導にあたっているのだという。
王妃の有能さは国王も認めるところであり、国王は大層王妃を愛していた。前王妃の子フィーナを蔑ろにすることもなく、非常に優しい王妃は皆が認める存在である。
この国の未来は間違いなく明るい。皆がそう思っていた。
しかしそんなディスタール国の王城では今、臣下たちを悩ませる問題が発生していた。
「アル、陛下と王妃様に何があったか知りませんか?」
宰相のローウェは、共にお茶を飲んでいたアルに問う。
魔法の名門家出身の少年アルは魔法師たちを束ねる魔法師長の位についており、将来が嘱望されている存在だ。まだわずか10歳ということで未熟な面が心配されたため、大陸最高の魔術師である王妃のもとに弟子入りしている。そのため王妃とも接する機会が多い。
最近、国王ディリアスと王妃ユティシアの不仲が囁かれ始めていた。二人の雰囲気は、城で働く者たちの労働意欲の低下を招いている。特に国王は、王妃が日々の動力源となっているため、執務が滞ると臣下にとっては死活問題なのだ。
「さあ、俺の前ではいたって普通だけど?」
まだ男女の機微もわからない10歳のアルに聞いても仕方のないことだが、聞かずにはいられなかった。
「フィーナ王女に泣き付かれたのですよ、『おとうさまとおかあさまがなかよくしてくれないの』と言って」
幼い少女が純粋に両親を心配する姿には胸を打たれたが、一番辛い思いをしているのは、彼女だろう。人一倍賢く、人の心に敏感な姫が不憫でならなかった。
アルも同じことを考えていたのか、ショックを隠し切れない様子でいる。彼は、城内で唯一年下のフィーナのことを気に入っていた。
「実際に、専属侍女の2人からも陛下が王妃様に話しかけなくなったと報告があるのです」
アルは、宰相が語った事実に対し信じられないとばかりに眉を顰めた。
「何で仲が悪くなるんだ?あの国王が、師匠を邪険に出来る訳ねーじゃん」
あれだけ王妃を溺愛している国王を見てきただけに、アルは未だ現状が信じられない様子である。何言ってるんだ?という顔をしているが、出来ればこちらだって信じたくはない。
「むしろ私が聞きたいくらいですよ。一体、お二人の間に何があったのでしょうか?」
宰相は窓辺に立ち、訓練場で剣を握る王妃を見つめながら呟いた。