その8
俺が家についたときにはすでに夕陽が地平線に沈みかけていた。
「おーいー、太志。どうしたんだぁー?今日は『定例会』の日だろー。俺のこと置いてけぼりにして酷いじゃないかー。」
家についたとき俺は心の友に声をかけられた。
「は!!忘れでた!!ごめん、高志。」
俺は全身の肉を震わせながら頭を垂れた。
ここで俺が唯一親友と言える唯一無二の友、細山高志について説明しよう。
高志は俺のことを『デブ』とか『チビ』とかいうあだ名ではなく名前で呼んでくれる唯一の人であり、俺が唯一対等な立場で会話できる人物だ。
身長は2メートル、体重は50キロ。
とてもノッポでとてもガリガリな人物である。
ストリートファイターのダルシムを想像してもらえばいいだろう。
俺と同じく2次元アイドルを愛する好青年だ。
高志は俺と同じように『ダルシム』とか『のっぽ』とか『ガリ』だとかもう悪口としか取れないようなあだ名でしか呼ばれない。
そんな高志とは同じクラスになったことはなく、学校であまり会話を交わしたことはない。
合同体育など、少ない機会に交わした少ない言葉で俺と高志は仲良くなった。
いつも一緒にいて、くだらない会話をしなければ友好関係を築けないようなそこら辺のボンクラどもとは違う次元で俺たちは友好関係を築いたのだ。
まぁ、本音を言うと俺と高志が2人揃って歩くととても変だから学校では一緒に行動しないようにしているのだけれど。
だって想像してみ?身長150センチ、体重150キロのチビデブな俺、その横に俺よりも50センチも身長が高くて俺の2分の1の横幅しかない高志、そんな2人が仲良さそうに学び舎の廊下を闊歩している姿を。
道行く人々の全てが2度見、いや3度見をすることだろう。
あなたの想像通りとても気色の悪い絵面なのだ。
だから俺たち2人は学校では極力会うのを拒み『定例会』と称して月に1度お互いの家に集まり、お互いが敬愛する2次元アイドルについて夜が更けるまで語り合っていた。
今日は久し振りの定例会の日だったのだが熱血教師高橋のせいでおじゃんになってしまったことはみなさんならもうおわかりだろう。
「ずまん、高志。今日はもう疲れだから定例会は無理だ。明日に変更じよう。」
「了解。」
高志はそう言うと本当にそれは歩くために使えるのか?と疑問に思うほど細長い足を器用に動かしながら帰っていった。