その60
結局、無心にはなれなかった。
わかったのは、俺の気持ちがぐちゃぐちゃであるということ。
俺はまだ迷っているということ。
そして、それが俺の今の素直な気持ちであるということ。
『迷っている』ということ、それはそれで答えの一つだ。
ごちゃごちゃ考えるのはやめだ。
迷っている自分のまま思いっきりいろんなことにぶつかってやろう! 俺がそんな風に少しポジティブな考えになったころ、すでに夕日が空に浮かんでいた。
「室松様! お嬢様の居場所が見つかりました!!」
「よくやった!! 神原さん、細山さん今すぐ向かいましょう」
「ハイ!!」
俺は元気よく返事をして、滝壺から出ようとした。そのとき、
「ドバァアァァアアアアンンン!!!!!」
滝の上から真っ黒い、デブコロリンの神様が落ちてきた。
「ひゃふほ!! へほ、ほへぇ!!」
落ちてきたのは神様じゃなくて、高橋先生だった。
「話はすべて聞かせてもらったわ!!! 波風さんの身の安全が心配だわ!! 急ぎましょう!! そこの役立たずはおいていって良し!!」
滝の上に仁王立ち姿で立っている唐沢先生がいた。
どうやら、高橋先生を滝から突き落とした犯人は唐沢先生らしい。
こうして、俺と高志と室松さんと高橋先生と唐沢先生は友子が拉致されている倉庫へと向かった。