その5
「大切なのは目標を定めること。文化祭にみんなの前で披露するという目標が生まれたことでよりいっそうやる気が生まれるはずだ。それに裸踊りというリスクを用意することで背水の陣の精神で120パーセントの力を発揮できる。」
と、わけのわからん説明を高橋先生は俺に説教をするように言ってきた。
今一度先生の言わんとすることを理解しようと先生の言葉をかみ締めてみた。
きっとこの言葉の裏には真理が隠れているに違いない。
仮にも教師の言葉だ、きっとありがたい言葉であるに違いない・・・やっぱりわけがわからん。
「おい、三段腹。全校集会で言っていたこと本当なのか?」
「裸踊り楽しみにしているぜ。」
「お前に逆上がりは無理だろ。三段腹。」
クラスに行くと予想通り質問及び罵声攻めにあった。
「Ahahahahahaha!!!」
人だかりの奥からきみの悪い外国なまりの笑い声が聞こえてきた。
「今日の全校集会は最高にたのしいShowだったわ。チビデブ。まさかあんな宣言をしてみずから首をしめるとは・・・くくくう」
ジェシカは腹を抱えて笑いだした。
「ムキー!!笑うなーー!!」
俺は大量に流れ出る汗をハンカチで拭き、そのハンカチを噛んで悔しさを表現した。
「なにそのハンカチ、じじくさ!!」
そう言うとジェシカは俺の三段腹の二段目を強くつまんだ。
「ホゲェーー!!」
俺は痛みのあまり変な声で叫んだ。
「まぁ、この1週間私との約束が怖くて逃げ出したと思っていたけど、逃げてはなかったようね。少し見直したわ。」
ジェシカは俺より20センチ高い目線で俺のことを見下した。
「おめぇだっておでが逆上がり成功じたときの罰ゲームが怖くて夜も眠れなかったんじゃないのか?」
俺は椅子の上に立ちジェシカと同じ目線で強がりを言った。
「別にあんたが逆上がりに成功したらキスするなんてことちっとも怖くなんかなかったわよ!!だってあんたがあと2週間で逆上がりができるようになんかなるわけないんだから!!」
ジェシカの言葉にクラスがどよめいた。
「キスってどういことだ?」
「ジェシカと三段腹が?まさかぁ・・・」
「おい、三段腹てめぇーー!!」
クラスは大混乱。
ただでさい暑い部屋が更に暑くなった。
もう、Yシャツがびしょびしょだ。
着替えてこよう。
俺は自分の心の中にだけ正当な理由を掲げて教室から逃げ出した。