表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デブ、宙を舞う  作者: たこき
55/66

その55

「おめぇ、最低だな。追いかけてそんしたよ」

 俺はそう言い放ち、ジェシカをおいて帰路についた。

 ムカついた。

 腹がたった。

 ジェシカにじゃない、俺自身に。

 ジェシカの言葉が本心ではないことをわかっているのにそれを許せなかった自分自身に、無性に腹がたった。

「ブオオオ!!」

 車が通る音が聞こえ、俺は大きな体を道端に寄せた。俺の視線を通り過ぎたのは真っ赤な車だった。

「友子? ……人違いかぁ」

 俺には何故かその車の後部座席に乗っている人が友子に見えた。

 友子のことを思い出した俺は同時に屋上で友子に言われた言葉を思い出した。


『大切だから怖いんです。ちゃんと気持ちが伝わるのかなぁ? もしかしたらもっと傷つけてしまうんじゃないだろうか? もしちゃんと自分の気持ちが伝わらなかったら、この大切な気持ちは行き場を失って迷子になっちゃう。それが怖いんです』


 この言葉を思い出したとき俺はあることに気付いた。

 そう、俺は自分の気持ちを一つもジェシカに伝えることができなかったことに。

 このままでは、俺のこの気持ちはきっと迷子になってしまう。

 それは嫌だ! それに俺はジェシカの本当の気持ちをちゃんと聞いてない。

 いままで俺はジェシカのうわべだけの言葉に一々反応してその裏に隠されている本心を聞こうとしていなかった。

 このままではジェシカの気持ちも迷子になってしまう。

 お互いの本当に伝えたい気持ちが相手に届くことなく迷子になり、その代わりに本心とは違う言葉が、気持ちが相手に届いてしまう。

 そしてお互いがそれを相手の本心だと誤解してしまう。

 こんな悲劇ほかにあるだろうか? このままじゃだめだ。

 “後でいいや”じゃだめなんだ。

 今すぐ、“今すぐ”じゃなくちゃだめなんだ! 俺は自分の心との葛藤に決着をつけ、ジェシカがまだいるであろう川原へと急いで向かうことにした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ