その50
「安心しなさい。私たち『おっぱい盗賊団』は決して暴力は振るわない。あんたのお父さんから金を貰ったらすぐに開放してあげるから、それまでがまんしてね」
おそらくボスであろうマシュマロヘアーの女が優しい口調で言った。
私はこのマシュマロヘアーの女に非常に親近感を覚えた。
なぜならこのマシュマロヘアーの女(面倒臭いので以下マシュ子)は他の盗賊団3人に比べておっぱいが著しく小さいのだ。
おそらくAカップいや、もうあれは胸板と言ってもいいくらい胸が小さい人だった。
「父が、父が何かしたのですか!? もし、あなた達に悪いことをしたのなら、私謝ります。父の代わりに謝りますから……父を許してあげてください」
この子はなんておしとやかな動きをする子だろう。
私は転校生の思わず見惚れてしまうほど滑らかな所作に感心した。
「許すなんてできないわよ!!!」
突然、マシュ子が大声でヒステリックな叫びをあげた。
「父が何をしたというのですか?」
転校生はマシュ子の叫びに怯むことなく強い目でたずねた。
この転校生は芯の通ったとても強い、とてもいい子なのだと思った。
それと同時にこの良い子を悪女呼ばわりした自分に嫌気が差し、私は自己嫌悪に陥った。
「あんたの親父のせいで私は結婚できなかったのよ!! あんたの父親が経営している化粧品会社、『波風コスメティック株式会社』の製品を買ったのよ。その製品のせいで……」
マシュ子はなにやら思い出したらしく、思い出し笑いならぬ思い出し怒りをしているようだった。
「どの商品だったんですか?」
「……『バストデカクナール』よ!! あれのせいで……あれの効果が出なかったせいで……『ぺチャパイの子とは結婚できない』って、言われたのよ……」
マシュ子は思い出し笑いならぬ思い出し悲しみをしているようだった。
『バストデカクナール』これは私も良く知っている。
何を隠そう、私も一度試したことがあるのだ。
結果は……私とマシュ子の胸を見ればわかるだろう。
確かにあの商品は効果のないガセ商品だったことは間違いない。
しかし、それと結婚をこじつけるのはちょっと行き過ぎな気がする。
私は「ぺチャパイのせいにするんじゃない!!」と叫ぼうとした。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。あなたの結婚を邪魔してしまって……なんと謝罪すればよいのかわかりませんが、申し訳なく思います」
転校生はつぶらな瞳からまるでスコールの様に涙を流しながら謝罪した。
この転校生は本当にいい子だなぁと改めて私は感心した。
「あんた……私のために泣いてくれるのかい?」
「涙を流せば許してもらえるとは思いません。でも、あなたの境遇を考えると、あまりにも哀しくて涙が自然と溢れてくるのです」
マシュ子は突然、転校生を抱きしめた。
「あんた可愛いい子だね。名前は?」
「友子です」
「どうだい? 私たち『おっぱい盗賊団』に入らないかい? 私ずっとあんたみたいな妹が欲しかったんだよね。おっぱいも大きいから合格だよ。ちなみにこの『おっぱい盗賊団』はEカップ以上の女しか入れない決まりなんだ。外人かぶれ、あんたはだめだね」
マシュ子は私のことを『外人かぶれ』と呼び、私の胸を見て一瞥した。
「あんただって小さいじゃない!!」
「だまらっしゃい!!!!」
マシュ子は私の言葉を遮るように鬼のような顔で叫んだ。