その4
「校長先生ありがとうございました。以上で全校集会は終わりですが何か連絡がある先生はいらっしゃいませんか?」
何のことはない、全校集会中だったのだ。
俺は自分のクラスの場所へと行こうとした。
「違う!そっちじゃない、こっちだ。」
しかし、高橋先生は俺の二の腕をはなしてくれなかった。
俺は高橋先生に引っ張られるように壇上へとあがらされた。
「ちょっといいかな?」
「あ、はい。えーっと、高橋先生からお話があります。」
司会進行の生徒会役員の子からマイクを奪い取ると高橋先生は大きな声で宣言した。
「今日はみんなに報告がある。ここにいる3年A組の神原太志が2週間後の文化祭で逆上がりを披露することが決定した。もし、逆上がりに失敗した場合はみんなに最高に面白い裸踊りを披露すると神原は言っている。」
会場が静まり返った。
先生?あんたはいったい何を言っているのですか?
俺は正直かなり困惑していた。
先生には一言もジェシカとの約束のことは話していない、ましてや裸踊りをするなどと言ったことはない。
ただ逆上がりの特訓を頼んだだけ。
それなのに先生の口からは信じられない言葉がでてきている。
これはいかに?なにゆえ?
「報告は以上だ!みんな、神原が逆上がりできるように応援してくれな。」
そういうと高橋先生は満足げな顔をしながら壇上を降りた。
一人壇上に取り残された俺はもう後戻りできない状況に陥ってしまったことを改めて実感していた。