その46
「ジェシカ!! おでの話を聞いて欲しい。さっきのは、違うんだ。友子は……」
俺は思いのまま喋った。
いつものように心の中にある感情を厳選し、ふるいにかけ、最終的に現物とはまるで違う形で出荷するようには、しなかった。
心にある思いを、純粋に、何も手を加えることなく、言葉にした。
いや、正確には言葉にしようとした。
「よかったじゃない。あんたみたいな肉団子好きになる人間がいるなんて、100年に一度、いや、100000000年に一度あることじゃない。奇跡だよ。付き合えばいいじゃない。別に私に断る必用もないし。安心しなさいよ。別にいいふらすことなんかしないわよ。あの転校生かわいいし、気立てもいいし、それに……私と違って胸大きいし!!! ……とにかくお似合いのカップルじゃない。身長だって同じくらいだし。それにもう、謝らなくていいから。っていうか私別にあんたに謝られることされてないし。あんたのしたことなんか一々覚えてないし。っていうかあんたに関することなんて覚える価値ないし。あんたは私の日ごろのうっぷんを晴らす掃溜めみたいなもんなのよ!! 私のストレスをぶち込むゴミ箱みたいなもんよ。しかし、あの転校生もほんとに物好きよね。こんなブタ野郎好きになるなんて頭おかしいんじゃないの? っていうか、あんたのこともてあそんでいるんじゃないの? きっとそうよ、だってあんたのこと好きだなんて嘘にしか聞こえないもん。あーゆー子に限って悪女だったりするのよね。きっと10股くらいかけているわよ。いや! 汚らわしい。悪女とブタ、お似合いのカップルだわ。これは傑作、ワハハハ……」
ジェシカは崩壊したダムのように喋った。
俺の言葉は全て遮られた。
俺には、ジェシカの言葉を受け止めるだけの器量はなかった。
「おめぇ、最低だな。追いかけてそんしたよ」
俺には、ジェシカの、痛いほど降り注ぐ言葉達の奥に隠された真の気持ちを受け止めるだけの度量もまた、なかった。