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その42
「ま……でぇ…………」
いったいどれくらい経ったのだろう? 呼吸が辛い。
気がつくと夕陽が浮かんでいた。
夕陽に照らされて赤く輝くジェシカは、とても綺麗だった。
「し、しつこい……いい加減諦めろ……この、チビデブ……」
さすがのジェシカも疲れたらしく、歩いていた。
しかし、俺も疲れて歩いていたので一向に距離が縮まらない。
いや、俺ははきっと意図的にこの距離を保っていたのだと思う。
この距離が、俺とジェシカの一番素敵な距離だと、無意識のうちに俺は感じていたのだと思う。
このままずっと、この距離を保ちながら、罵りあいたい。
俺は心からそう思った。