その32
「ぐぉー、ぐぉー。」
俺は大きないびきをかきながら夢をみた。
夢の中の出演者は俺とジェシカ、そしてトモ子の3人。
俺は必至で逆上がりに挑戦していた。
しかし、現実同様一向に成功しない。
俺が鉄棒にぶら下がっていると突如鉄棒が上空に伸びていった。
どんどん遠ざかる地面。
どんどん近くなる天。
俺は「ひょえぇええ」と叫びながら必至で鉄の棒を握る手に力を込めた。
しかし、所詮はデブ。短い腕で150キロの巨漢を支えられるわけがない。
俺はすぐに落下した。
ぎょえぇええ!!
普段重力に負けているぜい肉が重力に逆らうように揺れた。
落下した俺は下で俺のことを待ち構えていた穴の中に入った。
穴の中は巨大なすべり台のようになっていて俺は肉団子の様に体を丸め、転がりながら移動した。
数分後、俺は「ガコン」という音とともに穴から放り出されて穴の真下に用意されていたくぼみにスポッとおさまった。
俺の左右には俺と同じように丸くて穴が3つ開いたボールが置いてあった。
「はて?これはいったい?」
俺がそう思ったとき目の前に巨大なジェシカが現れた。
ジェシカは
「うーん・・・」
とうなりながらこっちを見ている。
どうやら、どのボールを使うか悩んでいる様子だった。
「俺のことを選ばないでくれ!!」
俺は必至でそう願った。
「よし、これに決めた!!」
そういうとジェシカは俺を持ち上げた。
そしてジェシカは俺の鼻の穴に指を突っ込んできた。
「ふが!!」
激痛が鼻を襲う。
ジェシカは痛がる俺のことなど気にせずにフォームを整え、深呼吸をした。
そして俺を後方に一度振りかぶり助走をつけた上で前方へと放り投げた。
「うわぉー!!目が・・・目がまわ・・る・・・」
俺は右側にある溝にかするように弧を描きながら前方に聳え立つ10本の白いピン目掛けて転がった。
「ストライク!!」
俺は見事に10本の白いピンを倒してジェシカにストライクを献上した。
俺はあまりに目が回り立てなかったのでその場にしゃがみこんだ。
遠くにガッツポーズをするジェシカの姿が見えた。
「大丈夫でございまするか?」
突如声をかけられた。
え?女神!?そう見間違えるほどに美しいトモ子が俺に手を差し伸べてくれた。
俺はトモ子の白くてやわらかそうな手を握った。
そこで目が覚めた。