その30
とにかく俺はトモ子のおかげで元気を取り戻すことが出来たのだ。
トモ子のおかげで俺はひきこもりから卒業できたのだ。
トモ子のおかげで・・・今の俺があるのだ。
だから俺にとってトモ子は神なのだ。大切な存在なのだ!!
「・・・あれ!?」
俺は改めてトモ子の大切さを実感したとき、驚いた。
俺はそんな大切なトモ子のことを賭けに使ったのだ。
神と思えるほど大切な存在を賭けてしまうほど今の俺にとって逆上がりに挑戦するということはとても重要なことになっていたのか・・・
「グフフフ・・・」
俺は逆上がりに挑戦する自分の気持ちが変化したことに改めて驚いた、と同時に少し滑稽に思えて不気味に笑った。
「逆上がり!!頑張るぞ!!」
俺は暗闇の中、大きな声で宣言した。
「トモ子のことを忘れるなんてまっぴらだ!絶対に成功させてやる!!ついでに高橋先生のプロポーズのきっかけになってやろうじゃないか!!!絶対に逆上がりしてやる!!!!そして・・・」
突然、ジェシカの顔が浮かんだ。
そして、ジェシカに謝りたいという気持ちが湧き上がってきた。
「・・・そして、ジェシカに謝ろう。逆上がりを成功させて、ジェシカに俺が嘘つきじゃないということを信用してもったうえで謝ろう。」
俺はある日の体育の授業中にジェシカと交わした言葉を思い出した。
『おでだって少し練習ずればずぐにでぎるようになるさ。今までやらながっただげでやればできるさ!!』
俺が文化祭でもし、逆上がりに失敗すればあの言葉は嘘になってしまう。
嘘つきの謝罪の言葉なんか誰も信用しない。
だから俺は絶対に逆上がりを成功させなくてはいけない。
俺は嘘つきじゃないとジェシカに信用してもらうためにも。
ジェシカに俺の謝罪の言葉を、謝罪の気持ちを聞いてもらうためにも絶対に成功させなければ!
俺は新たに逆上がりに挑戦する理由を手に入れた。
それだけでまた一つ、強くなれたような気がした。
「逆上がり!!頑張るぞ!!」
俺は暗闇の中、再び大きな声で宣言した。
「うるせーぞ!!今何時だと思ってんだ!!!静かにしろ!!」
怒られた。
俺は布団の中で「明日から特訓がんばるぞ!」と小声で言ってすぐに寝た。