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デブ、宙を舞う  作者: たこき
26/66

その26

俺は久し振りの我が家に感動した。

長い間ベッドの下の狭いスペースにいたことを思い出すといつもの見慣れた部屋がとても素晴らしく見える。


「さてと、久し振りにホームページでも更新するか。」


俺はパソコンを立ち上げて自分のホームページ『二次元アイドルの館』を開いた。


「あちゃー。やっぱり、炎上しているよ。」


二次元アイドルの館の掲示板を見ると予想通り大量の書き込みがあった。


『毎日更新を欠かさずにしていたぽっぴーさんが1週間も更新しないなんて信じられない。』


『もしかしてぽっぴーさん死んだんじゃないの?』


『今まで毎日更新していたほうが信じられないことなんだよ。1週間更新しないくらい騒いでんじゃねーよ。バーカ。』


『お前がバカだろ。』


『別にたいしたホームページでもないし、どうでもいいだろ。ポッピーなんてカスだよ。カスのこと心配したってしょうがないだろ。』


『ぽっぴーさんの悪口書くな!!』


『お前なんかぽっぴーさんの足元にもおよばねーよ。』


『ぽっぴ-がいなくなったら2次元アイドル界の覇権争いはごんぞうと室松の一騎打ちだな。おもしろそー』


等々、とにかく沢山の書き込みがあった。その沢山の書き込みの中にグリゴレンからの書き込みもあった。


『ぽっぴーさん、こんにちは。グリゴレンです。最近ホームページの更新をしていないようですが、大丈夫でしょうか?もしかして僕との約束を守るために困難に立ち向かっているのでしょうか?だとしたらすいません。僕の何気ない質問のせいでぽっぴーさんが苦労しているのかと思うと胸が痛みます。もう、キスのことなどどうでもいいので帰ってきてください。ぽっぴーさんが帰ってくることを願っています。』


俺はこの書き込みにすぐに返信した。


『グリゴレンさん、お久し振りです。ぽっぴーです。グリゴレンさん、あなたには失望しました。確かに私がここ最近ホームページを更新しなかったのはグリゴレンさんのお察しの通り、美人とキスするためにとある特訓を行っていたためです。グリゴレンさんとの約束を守ろうと苦労を重ねました。グリゴレンさんがそんな私のことを心配してくれるのはうれしいことです。しかし、「キスのことなどどうでもいい」とはどういことですか!!2次元アイドルの館に集う人々の掟をあなたもご存知でしょう?

~掟第5条:この館に集う男は絶対にエロゲーの『戻るボタン』及び『スキップボタン』を使用してはいけない。『戻るボタン』及び『スキップボタン』を使うヤツは真の男ではない。~

この掟は現実でも同じです。一度言ったことをなかったことにするヤツは男ではない。グリゴレンさん、あなたもこの2次元アイドルの館に集う男ならば、自分の言ったことを否定してはいけない!!』



俺は自らの思いを綴った。

俺は2次元アイドルを愛する人こそ真の男であると思っている。

いや、真の男でなければいけないと、ヤンキーやスポーツ選手なんかよりも男らしくなければいけないと思っている。

その信念が認められたからこそ俺は2次元アイドル3人衆と呼ばれるほどになったのだ。

数分後、グリゴレンからの書き込みがあった。



『ぽっぴーさん、こんにちは。グリゴレンです。すいませんでした。僕が間違っていました。やっぱりぽっぴーさんはすごいです。一生ついて行きたいと思います。

~掟第1条:2次元アイドルを愛するものは真の男でなければならない。~

この言葉が身にしみます。約束の日まであと2週間、がんばってください。ぽっぴーさんならきっと美女とのキスを成功させると信じています。』



俺はグリゴレンの気持ちに答える文章を書くことができずにパソコンの電源を切った。

もし逆上がりに成功しても今更ジェシカに「キスしろ」なんて言えない。

だから俺はどちらにせよグリゴレンとの約束を果たすことはできない。

ということは、俺は嘘つきになってしまう。

嘘つきは真の男ではない。

そう思った俺は文化祭の日に2次元アイドルの館を閉鎖することを決意した。

真の男ではなくなってしまう俺に2次元アイドルの館を続ける資格はない。

そして俺はもう一つ決意をした。

自らに賭けるのだ。

高橋先生が俺の成功に賭けてくれたように俺も自分自身の成功に何かを賭けようと決意した。

正直、今の俺には文化祭の日に無理して逆上がりに挑戦する必要はない。

成功してもジェシカからキスしてもらえないのであればグリゴレンとの約束はどちらにせよ果たせないし、例え失敗しても裸踊りは高橋先生がやってくれるのだ。

だから今の俺はどうしても逆上がりを成功させなければいけないという状況にいないのだ。

でも、もしこの現状に甘えて逆上がりに挑戦することをやめたらそれこそ真の男ではない。

もし、ここで逆上がりに挑戦することをあきらめたら俺は真の男どころかただのブタに成り下がってしまう。

それだけは断固として避けなければならない。

だから俺は自分に厳しい条件の賭けをしようと決意した。


「おでは自分の成功に2次元アイドルの全てを賭ける。もし、おでが逆上がりに成功したらこれからも2次元アイドルを愛し続ける。でも仮に失敗したら、おでは2次元アイドルから足を洗う。当然、おでが神と崇めているトモ子のことも綺麗さっぱり忘れる!!」


俺はそんな独り言を呟いて消灯した。

俺は暗闇の中、トモ子について考えた。


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