その23
「なぁ、神原。そろそろ俺の話を聞いてはくれないか?」
「なんでずか?食べながらでいいのなら聞ぎまずよ。」
俺はこの店でもイチゴ&チョコレートのチョモランマパッフェの大食いチャレンジに挑戦した。
巨大なパッフェを10分以内に食べきれば賞金1万円というチャレンジだ。
「あれ?なんだこの封筒の束は・・・?」
ふと気がつくといつの間にか俺の手には9万円という大金が握られていてビックリした。
もし、このチャレンジに成功したら全部で10万円になる・・・このお金で何を買おうか?
俺は色々と買いたいものを思い浮かべながら先生の話に耳を傾けた。
「実はな、唐沢先生に俺は悪くないとお前の口から言ってもらいたいんだ。特訓してくれと頼んだのは自分で高橋先生は嫌々特訓に付き合ってくれのだと。不注意で溺れた自分を高橋先生は体を張って助けてくれたと唐沢先生に言ってくれないか?」
「嫌でず。」
俺は先生の話に耳を傾けたことを後悔しながらイチゴ&チョコレートのチョモランマパッフェを平らげた。
「チャレンジ成功です。どうぞ賞金の1万円です。おめでとうございます。」
「あの、おがわりもらえまずか?」
俺は賞金の1万円を受け取ると2杯目のイチゴ&チョコレートのチョモランマパッフェを注文した。
「そう言わずに頼むよ神原。今頼んだイチゴ&チョコレートのチョモランマパッフェ奢ってやるから。」
「当然です。今日はずべで先生の奢りでず。でもそれど先生の頼みを聞ぐどいうこどは全く関係ありまぜんので。」
俺はコップに入っていた水を全て飲み干し、毅然とした態度をとった。
「お待たせしました。イチゴ&チョコレートのチョモランマパッフェです。」
俺はかわいらしい店員さんが持ってきたイチゴ&チョコレートのチョモランマパッフェを今度はゆっくりと味わうように食べた。
さすがの俺も10件も飲食店をまわったためお腹がいっぱいになっていた。
「これだけは言うまいと思っていたのだが・・・」
高橋先生は先ほどまでとは違う雰囲気で話し始めた。
「実はな、俺がお前の特訓に付き合ったのは俺の意思ではないんだ。頼まれたんだよ、お前の特訓に付き合ってあげて欲しいと。」
「誰に頼まれだっていうんでずか?」
俺はイチゴ&チョコレートのチョモランマパッフェを食べながらテキトーに聞いていた。
「ジェシカだ。」
「え!?」
正直俺は驚いた。何故ジェシカが?
「『もし、神原の特訓に付き合ってくれたらキスしてあげる』と言われてな。つい下心に負けて嫌々引き受けてしまったんだ・・・。考えても見てくれ、何の見返りもなしに俺がわざわざお前の特訓に付き合うなんていう面倒臭いことすると思うか?」
・・・確かに先生の言うことにも一理ある。
それに今思い返して見ると1週間ほど前の全校集会の時に『逆上がりに失敗したら神原が裸踊りをする』と高橋先生は宣言していた。
別に裸踊りじゃなくてもいいのにと疑問に思っていたが、もしジェシカと俺の間で交わされたあの約束をジェシカから聞いていたとしたら・・・。
俺はいろいろと考えて「もしかしたら先生の言っていることは本当なのかもしれない」と思い始めた。
「なぁ、だから頼むよ。水中グルグル大回転を考えたのも全部ジェシカなんだよ。ジェシカが全部悪いんだよ。俺はぜんぜん悪くないんだ。ジェシカの命令どおりに動いただけなんだ。頼むよ神原、唐沢先生に俺は悪くないと言ってくれ。一緒に謝ってくれ、頼む!!」
俺はイチゴ&チョコレートパッフェを食べながらどうしようか必至で考えた。
もし、先生の言っていることが本当ならば先生も被害者だ。
それなら唐沢先生に高橋先生の弁明をしてあげてもいいかもしれない・・・そんなことを考えていたそのとき、
「高志―!!」
と俺を呼ぶ声が聞こえた。