その18
「ハウゥ!!」
気がつくとあたり一面真っ暗で俺はビックリした。
「こごはどこだ!?暗くでなんにも見えない・・・こわぃいびぃいいいいい!!!!!!!」
俺は怖さのあまり叫んで暴れようとした。
しかし、体がまったく動かない。こ、これが世に言う『金縛り』というやつか!!俺は更に恐怖した。
「コツ、コツ、コツ、コツ・・・」
闇の奥からなにやら足音が聞こえる。
とても小さな音だったが体が動かないせいで研ぎ澄まされた俺の耳には確かに聞こえた。
お化け?見つかったらきっと俺は殺されてしまうのでは・・・。
俺は昔見たホラー映画を思い出していた。
タイトルは確か『お化けのプーちゃん』だったと思う。
『お化けのプーちゃん』というかわいらしいタイトルにだまされた幼少期の俺は怖い映画だとは知らずにビデオを借りて見た。
すると画面上に映し出されるおぞましい映像。
その映像の数々に俺は絶叫したことを今でも鮮明に思い出せる。
内容はかくれんぼをして遊んでいる子供達の中にお化けがまざっていて、そのお化けに見つかってしまった子供は殺されてしまうというものであった。
この映画は全編に渡って恐ろしい映像が続くのだが、中でもお化けのプーちゃんが恐ろしい顔で『みーつけた。』と言って隠れていた子供を見つけるシーンは最高に恐ろしかった。
その恐ろしいシーンを思い出した俺は足音の主に気付かれないように息を殺した。
ここで一つ、デブにとって『息を殺す』という行為は『自殺行為』に等しいということを皆さんには理解していただきたい。
みなさん、デブに理解を!!デブに愛を!!デブに食料を!!とにかく俺は「頼むからこっちにこないでくれ!!」と思いながら命がけで身を潜めた。
「コツ、コツ、コツ、コツ・・・」
俺の願いとは裏腹に足音がどんどん近づいてきた。
「ガラガラ」
扉を開ける音が聞こえた。
どうやら俺が今いる場所はどこかの個室らしい。
「ゴクリ・・・」
生唾が分厚い脂肪に囲まれた喉を通る音が聞こえた。
俺はさらに息を潜めた。
暗くてよく見えないが白くてふわふわしたものがすぐそこでかすかに動いているのを確認できる。
もうすぐそこにお化けがいることを確信した俺の体からは大量の汗が流れ出た。
「コツ、コツ、コツ、・・・コツ。」
お化けはどんどん俺のところに近づいてきた。
そして俺の目の前で止まった。
息を殺して必至に耐える俺の体から汗という汗があふれ出した。
もう、緊張しすぎてどうにかなってしまいそうだ!!・・・そう思ったそのとき
「みーつけた。」
その言葉を聞いた俺は・・・皆さんのお察しの通り口から泡を吹いて気絶した。
当然、そのあと看護士さんが発した言葉など聞くことはなかった。
「よかった。鍵なくしたかと思っちゃったけどここにあったんだ。」