その16
さて、読者諸君お久し振りです。
この物語の主人公、神原太志です。
ここで俺と高橋先生が意識を戻すまでの間に俺がこの店でイチゴ&チョコレートのチョモランマパッフェなる食べ物を食べるに至った経緯をお話しよう。
まず、高橋先生が嘘の発言をして、それに対して俺が「ムキー!!」と怒りをあらわしたところまではみなさん御存知だろう。
そのあと俺は先生に見つからないように逃げた。
逃げたと言ってもどこか遠くではない、隣の病室へと逃げ込んだ。
そして、ベッドの下へと隠れたのだ。
かなり厚みのある俺の体だが柔軟性があったため上手くベッド下のスペースに入り込むことができた。そして俺が「ふー」と一息ついたとき
「ほらー、コーラー買ってきたぞー・・・あれー?太志ー?どこいったー?」
高志がコーラを持って戻ってきた。
俺は高志にばれないように息を殺した。
ここで一つ、デブにとって『息を殺す』という行為は『自殺行為』に等しいということを皆さんには理解していただきたい。
みなさん、デブに理解を!!デブに愛を!!デブに食料を!!とにかく俺は命がけで身を潜めた。
俺は身長の高い高志が普段から地面にある段差などによく躓いているのを知っている。
つまりそれは、高志は低いところを普段から見ない人間であるということだ。
だからここにいれば高志に見つかることはない。
俺は妙な自信を胸に見つからないことを神に祈った。
当然、神というのは2次元アイドル『トモ子』のことである。
「先生―、太志が逃げましたー。」
俺の予想通り高志はベッド下にいる俺の存在に気付くことはなかった。
「先生、これを見てくださいー。」
高志が病室を出てから数分後、廊下から高志と高橋先生の話し声が聞こえた。
「何だこれは!?ここだけ壁の色が違うじゃないか!!」
「きっとー、神原は暑かったからーヒンヤリとして気持ちいいこの壁にー引っ付いていたんですよー。」
「とにかくこれが神原のものだとしたらそう遠くへは行ってないな。」
この言葉のあと、高橋先生のものらしき足音が遠くに行くのを感じた。
どうやら高橋先生は病院外へと俺を探しにいったらしい。
俺は狭いベッドの下でガッツポーズを取った。
すると少し安心したためなのか、急に眠気が襲ってきた。
そして俺は眠りについた。
そこで俺は再び夢を見た。