その13
僕たちが到着したときにはすでにハンバーガーショップは閑散としていた。
「はぁ、はぁ。すいません。さっきまでここに飛び切りのデブがいたと思うんですけど・・・」
ジェシカさんはすでに大食い大会の後片付けに取り掛かっている男の店員に息をきらしながらたずねた。
「あぁ、あの人。いやーすごい食いっぷりでしたよ。一人で100個のハンバーガーを食べたんですよ。信じられますか?信じられないですよね!?でもほんとなんです!!ものすごく汗をかいていてね、途中でビショビショの服を脱いで絞っていたんだけど絞ったTシャツから滝のように汗がでていてそれはもう・・・」
男の店員は先ほどまでここで繰り広げられていたフードファイトを思い出し熱く語り始めた。
「その人はどこへ行ったかわかりますかー?」
息苦しそうなジェシカさんの代わりに僕は店員の話を遮るようにたずねた。
「わからないなぁ。ただ、賞金の1万円を渡したとき『まだ食いたりん!!次はラーメンだ!!』と言って黒いジャージに鉢巻姿の人と一緒にそっちのほうに向かって行ったよ。ほら、そこに水溜りがあるだろ?それは太った人がTシャツを絞ったときに出来た水溜りさ。そっちに行くときにTシャツを絞っていたのを見たから間違いない。水溜りができるほど汗をかくなんてほんとにすごいデブだった。もはや伝説だよ。」
確かに店員が指差すほうには不自然な水溜りがあった。
「黒いジャージに鉢巻姿・・・高橋先生だ!!ということは一緒にいたデブは神原の可能性が高い!!大食い大会に参加していたデブは絶対に神原で間違いないぞ!!」
そう言うとジェシカさんは再び走り出した。
「行くぞ!!ガリノッポ!!次はラーメン屋だ!!」
僕は無言でジェシカさんの後に続いた。