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デブ、宙を舞う  作者: たこき
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その9


家に入ってからの俺の行動はとても簡潔だった。

フロ!メシ!寝る!この日、俺は今まで毎日必ず更新していたホームページを始めて更新せずに眠りについた。よっぽど疲れていたのだろう。

久し振りに夢など見てしまった。

とても恐ろしい悪夢を。


夢の中の出演者は俺とジェシカの2人。

俺は必至で逆上がりに挑戦していた。

しかし、現実同様一向に成功しない。

気がつくと俺の四方八方は透明な壁で囲まれていた。

なにやら様子がおかしいと思い天井を見上げるとそこには見上げてしまうほど大きなジェシカがいた。

これはいったいどういうことだ?と思い、回りを見渡すと先ほどまではいなかった俺と同じくらいの大きさのぬいぐるみ達が俺を囲んでいた。

「ウィーン」という謎の機械音とともにジェシカの右腕がカクカクした動きで俺の頭上へとやってきた。

俺の頭上でピタリと止まったジェシカの手はそのまま真っ直ぐ俺の方へと下りてきた。

「これはまずい。」と思った俺は必至で逃げようとしたが周りのぬいぐるみ達が俺の太い手足を掴んで離さない。

動けない俺をよそにジェシカの手はどんどん俺に近づいて下りてくる。

そして、ジェシカの手は俺の三段腹の二段目を強くつまむと俺を空中へと持ち上げた。

「いでででででえぇ!!!!」


あまりの痛みで目が覚めた。

この悪夢の唯一の救いは熱血教師高橋が出てこなかったことだけであろう。

俺はこの悪夢を振り払おうと二度寝をしようとした。

しかし、そうやすやすと俺の希望は通らなかった。

「ピンポーン、ピンポンピンポーン!!」

またしてもうるさいチャイムの音が俺の惰眠を許さなかった。

高志?にしてはちょっと早い時間だな・・・まさか高橋先生か?俺は昨日の教訓を活かしてすぐに玄関の扉を開けずに様子を伺った。

「太志ー。俺だけどー。」

扉越しにうっすらと見えるシルエットはとても高くてとても細いものであった。

俺は訪問者が高志であると確信し扉を開けた。

と、同時に腕をつかまれた。

「神原!!特訓だーーーーーー!!!!!!」

はめられたぁぁあぁああ!!と思う間もなく俺は高志と共に車の後部座席に押し入れられた。

「ブォオォオォオオオオ!!」

150キロの俺と50キロの高志を乗せた車はとても燃費が悪そうな鈍い音を立てて走り出した。

「先生・・・どこに向かっているんでずか?」

「・・・」

高橋先生は運転中終始無言だった。

「着いたぞ。」

終着地点はやはり学校だった。

「細山、これに着替えてこい。」

そう言うと先生はピチピチサイズの三角水着を高志に渡した。

「安心しろ、神原。太っているお前ではこの競泳用水着が着用できないことを俺はちゃんと理解しているつもりだ。ほら、お前はこれに着替えろ。」

そう言うと先生は俺に純白の生地で作られたふんどしを手渡した。

「先生・・・まざかこれをおでに着用じろと?」

俺は冗談ですよね?という意味を込めて先生に笑顔でたずねた。

先生は俺の笑顔につられるように笑顔で頷いた。

「探すの苦労したんだぞ。早く着替えてこい。」

「無理でず。」

俺は頬の肉をブルブル揺らしながら抵抗した。

「はい、ネガティブ発言。罰決定!」

「ムキィー!!」

俺は股ずれして痛む太ももを揺らしながらささやかな怒りを体で表現した。

「着替えたらプールにこい。お前のために今日は貸切にしてもらったんだぞ。ありがたくおもえ!!このデブ!!」

結局俺と高志は先生の言われるがまま水着(俺はふんどしだが・・・)に着替えてプールへと向かった。

「おお!!良く似合っているぞ2人とも。特に神原、まるで関取みたいだな。よし!早速特訓開始だ。」

高橋先生のテンションは明らかに見てわかるほどに高まっていた。

「先生ー、いったいどんな特訓をするんですかー?」

いつものゆったりした口調で高志が先生にたずねた。俺はこのとき高志が今のこの状況を特に嫌がっていないように感じた。むしろ、高橋先生と一緒に楽しんでいるように見えた・・・きっと気のせいだと思いたい。

「良くぞ聞いてくれた!!名付けて『水中ぐるぐる大回転』だぁ!!!」

感極まった高橋先生はアントニオ猪木のようにコブシを掲げて「だぁ!!!」と叫んだ。

と、この高橋先生の叫びを聞いたところで俺の意識は途絶えることとなる。


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