部活動6 お詫びのクッキーと感謝を込めたクッキー
これからどうしようか一人で悩む白井真子であるが、その時彼女の目に映ったのはとある喫茶店。
彼女はしばらくその喫茶店を見つめ、考えそして、彼女がでた行動は‥‥‥。
やがて放課後になり、結局なにも考えられなかった。
仕方なく私は部活に行かずにそのまま帰宅をする。
そういえば今朝お母さんに買い物を頼まれたのに気づいた私は町に寄った。
お母さんに買ってきてほしい物が書いてあるメモをポケットから取り出す。
買い物リストのメモを見てその店に行く。すると行く途中にある店が目に入った。「スイーツ・ライフ」という名前の喫茶店でこの辺りではおいしいという評判のお店であって、しかもそこでお菓子作りのレッスンも受ける事ができる。
私はその店に近づき、前にあるショーケースを見る。そこにはたくさんのお菓子が並んである。どれもおいしそうだ。どうやらこのお店で作った自家製のようだ。どおりで中からいい匂いがするわけだ。
私はしばらくそこに立ち止まる。
「‥‥‥」
すると私は動き出し、買い物を済ます前にその店に入る。
-午後8時26分- 随分遅くなってしまったようだ。手には買い物したものを持ち、家に帰宅する。
「ただいまー!」
私の帰りを出迎えてくれたのはお母さんだった。
「おかえり、真子遅かったじゃないの。どうしたの?」
「あぁ、ちょっとね寄り道してしばらくそこにいてね。そしたらこんな時間になっちゃったの‥‥‥。そういえばご飯はどうしたの?」
「もう食べたわよ。あなたの分もあるから、早く着替えなさい」
「はーい」
服を着替えようと自分の部屋へ向かう。すると、お母さんは私が手に持っている袋を見た。
「ねぇ真子、あなたが持っているそれ何?」
「えっ、いや何でもないよ!じゃじゃあ着替えてくるね」
私は慌てて自分の部屋に入る。
危ないところだった。これは大事なものだから‥‥‥。
私が帰ってくるのが遅かった理由はこの小さな袋にあるのだ。
あのとき私は喫茶店「スイーツ・ライフ」に入った。
喫茶店に入ると、メイド服を着た店員が挨拶をしてきた。
「おかえりなさいませ、ご主人様♪」
「あ、あの入り口の前にあった貼紙を見たんですけど‥‥‥」
「お菓子作りのレッスンでございますね。ではこちらの用紙にお名前と住所、年齢、電話番号と後このメニューから作りたいものを選択してください」
メイドさんからメニューとレッスンの申し込み用紙を受け取り、記入をする。
「はい、かしこまりました!それではお部屋へとご案内しますご主人様」
メイドさんにお菓子作りのレッスンの会場を案内してくれた。
「こちらでございますご主人様。それではこのエプロンを着てください」メイドさんからエプロンを受け取るが、なんだろう‥‥‥。これはエプロンというより、メイド服ではないか。
「あのぅ、すみません、これってメイド服では‥‥‥」
「はい、それはお料理をするときに着るクッキング用のメイド服ですご主人様」
仕方なく私はメイドエプロンを着ることにした。私はこういう服を着るのは初めてだから緊張しちゃうなぁ。
「すごく似合ってますご主人様♪」
「あ、ありがとうございます‥‥‥」
なんか照れてしまいそうだ。
「それではご主人様の希望通りクッキーを作りましょう」
メイドさんの指示に従って準備をし、クッキーの作り方を教えてもらった。
それにしてもメイドさんってとても背が高いイメージがあるのだが、このメイドさんはあまり背が高くない。むしろ私とほぼ同じ身長である。同い年なのだろうか。何歳?と聞こうとしたけど、さすがにそれは向こうに対して失礼だなと思い自重をした。
「それではやってみてくださいご主人様」
「は、はい!」
しまった。考え事をしていたせいで全然説明を聞いていなかった。と、とにかくやらないと‥‥‥。
「あぁだめですよご主人様!バターはクリーム状になるまで混ぜないといけません!」
「す‥‥‥すみません」
はぁ‥‥‥、なんて恥ずかしいんだろう。私って製菓部の部員だよね?とはいってもあまり天野先輩から作り方をまだ一品も教えてもらってなかったっけ。
やはりこういうのはできるかできないかの差なのかもしれない。
クッキーは見た目簡単そうで思ったより難しいんだなと私は思った。
「いけませんご主人様、薄力粉をかけるには篩を使って掛けないとうまく混ざりませんよ!」
「うぅすみません‥‥‥」
また失敗をした。私って今は一様「ご主人様」だよねぇ‥‥‥?
その「ご主人様」がメイドさんに怒られるって全く想像がつかない。ただ想像がつくのは、その「ご主人様が」がMで「メイドさん」がSとなればそれは成り立つと思う。
いや、それはありえないな。だめだだめだ、もうこんな妄想はやめにしよう。
そうすれば、まだメイド喫茶に行ったことがない人のイメージを崩してしまうことになる。
メイドさんとの個人レッスンは手取り足取り教えてもらい、およそ3時間近く続き、ようやくクッキーが完成した。
「お疲れ様ですご主人様♪」
目的が達成した後に見るメイドさんの笑顔がものすごく和んでしまう。これが噂に聞く「萌え」というのはこのことだったのか。
なるほど、確かにこれは女の私でも萌えてしまう。
クッキー作りで疲れた私はスイーツ・ライフでしばし休憩せさせてもらった。
「ご主人様の着ている制服は美紗姫学園ですか?」
「うん。もしかしてあなたも同じ学校の生徒?」
「いいえ、私は『美紗姫ヶ丘女学校』の生徒です」
「あぁ、そこ知ってる。あの難関の女学校でしょ。やっぱり将来就職するの?」
「はい、私あまりお金を持っていないので公立の学校で今お勉強をしています」
彼女が言う「美紗姫ヶ丘女学校」とは公立の中では難関な女学校で勉強は難しいが、就職率は100%の学校である。
「じゃあ君、高校生なんだ」
「はい、高校1年生です」
「嘘!?私も1年生なの」
「まぁそうなんですか。奇遇ですね」
しばらく私は彼女とおしゃべりをしていた。
「おっと、お母さんに買い物頼まれていたんだった。そろそろ行くね」
「そうですか。とても楽しいお話をしてくださってありがとうございます」
彼女は私に向かって丁寧に礼をしてくれた。とても上品な子だなぁ。
「いってらっしゃいませ、ご主人様~♪」
私が出ると、それに続いて彼女も出てきて見送りまでしてくれた。とても高校生とは思えない人だった。
私は買い物を済まし、喫茶店で作ったクッキーが入っている袋を手に持ち、帰宅したのだった。
翌朝、私は起床して学校の制服に着替えた。昨日のうちに準備をした教科書類と机の上に置いてある小さな袋を鞄に入れる。
「いってきまぁす!」
「ちょっと、朝ご飯はどうするの?」
「大丈夫コンビニにに寄ってなにか買うから」
今日はやけに朝の目覚めが良い。
教室にはもう堀川さんがいた。
「真子ちゃんおはようございまぁす!」
「堀川さんおはよう!」
「どうしたんですか?真子ちゃん今朝から元気ですねぇ。なにか良いことでもあったんですかぁ?」
「堀川さん、私頑張るからね!」
「え?あ、はい‥‥‥頑張ってください」
堀川さんはなんのことか全く理解ができなかった。
今日の私はかなり気合が入っている。放課後私は製菓部の部室へ行くことを決心した。あぁ‥‥‥、早く放課後にならないかな。
とても長い6時間の授業がようやく終わり、私は急いで製菓部の部室へ行った。
部室の扉をノックをする。
「し、失礼します!」
部室には天野先輩がいた。
「白井さん‥‥‥」
「あ、天野先輩‥‥‥。その‥‥‥ごめんなさい!」
「えっ?」
「私ったら、自分でこの部活を廃部させないって言ったのに自分からやめてやるってすみませんでした!これって無責任ですよね」
「いや、こちらこそ僕も君に謝ろうと思っていたんだ。だってほら白井さんいつもお菓子作らずに、食器を洗わせたりしちゃったから‥‥‥。こちらこそごめん!」
これはなんと予想もしなかったことだ。まさか、天野先輩まで謝ることになるなんて。私は鞄から小さな袋を取り出す。
「先輩、これを受け取って!」
小さな袋を天野先輩に渡そうとする。
「これを僕に?ありがとう」
天野先輩は私から小さな袋を受け取り、中を開ける。中にはクッキーが入っていた。
「それはお詫びのクッキー!なにも渡すものがなくて、そしたら製菓部だからクッキーがいいかなって思って」
「ありがとう!最高のクッキーだよ。実は僕も白井さんにプレゼントがあるんだ」
「えっ?」
今度は天野先輩から私に受け取ってほしいとお願いがきた。そして私はそのプレゼントを素直に受け取った。
「あ、ありがとう‥‥‥。一体なんだろう?」
中を開けると私と同じくクッキーが入っていた。
「それは僕からの君に感謝を込めたクッキーなんだ。廃部の危機を救ってくれた白井さんには本当に感謝しているんだ」
「‥‥‥」
「白井さん、どうしたの?」
「な、何よ!べっ、別に私は嬉しくないから!ど、どどどうしてもっていうなら受け取ってもらってもいいわよ」
天野先輩の前では素直ではない私であるが、本当は先輩からのプレゼントをもらってとても嬉しかった。
「あのさ天野先輩‥‥‥。い、一緒に食べよ」
「‥‥‥うん。いいよ」
私は天野先輩と一緒にお互いにもらったクッキーを食べ合った。私が作ったのと天野先輩が作ったクッキーと味の違いが激しいくらい分かりやすかった。でも天野先輩が作ってくれたクッキーはとても優しい味がしていた。
天野先輩から事情を聞くと、どうやらいつも忙しかったのは、私にあげるお菓子はどんなものにしようか考えていて、それを見られたくないために私を部室から追い出したり、先に帰ったりしていたそうだ。
もう少し優しくしてくれたりすることはできなかったのだろうか‥‥‥。
そう今日の放課後までに退部届を提出する期限がきたのだ。
「よくきましたわねぇ白井さん。とうとうやめる決心をついたのですね?」
「教頭先生!その件なんですけど‥‥‥」と私は制服のポケットから退部届を取り出した。
「?」
突然教頭先生の前で退部届をビリビリッ!っと破いた。
「なっ!何の真似ですか白井さん!?あなたは自分が一体何をしているのか分かっているのですか!」
「はい、教頭先生。見ての通りこれが私の答えです!」
「ほほう。ようやく退学する気になったということですね」
「違います。退学は絶対しませんし、退部もしません!」
そう、これが私の出した答えなのだ。その自分で選んだ部活をやり続けると何か良いことが起きるということを教えてもらった高橋先生にも後でお礼を言った。
こうして私は再び製菓部という場所に戻って来れたのだ。
「よかったですね真子ちゃん!無事に部活に戻れて」
「うん、ありがとね堀川さん」
「後、天野先輩と仲直りもできたしよかったですねぇ♪」
「ちちち違うよ!あれは先輩に謝っただけなんだから!」
堀川さんは本当に私をからかうのが好きみたいだ。
「部活にも戻ってこれたし、これも堀川さんのおかげだよ。ありがとうね」
「いえいえ私はそんな大したことはしていませんよ。まぁでも真子ちゃんが部活に戻れて本当嬉しいのです」
「ねぇ堀川さん。今度からルミちゃんって呼んでもいい?」
「えっ、名前で読んでくれるのですか!?」
「うん。もう私たち決行仲がいいからね」
「ありがとうございます!私友達から名前で呼ばれるの初めてですぅ!」
堀川さんは私の前でかなりの号泣をする。よほど嬉しかったのだろう。
これでまた私と堀川さんとの友情がまた少し大きくなってきたかもしれない。
ようやくこのお話にお菓子が登場しましたね(^_^)
実は私もお菓子を作るの大好きでたまに自腹で材料費を出して、それで作ったりしています。
これがまた面白くてたまりませんw
さて、無事白井真子は製菓部に帰還したことにより、次回から再び部活動が行われるわけです。
是非とも、白井真子の活躍とツンデレぶりを温かい目で見守ってください♪