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春菓愁糖  作者: ゴキポン
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部活動3 私はあきらめない!

 ついに製菓部が廃部を迎えようとした今日、真子はある作戦を決行する。しかし、誰も入部してくれず絶望を感じる。

 教頭が校長室にいると知った真子は校長室に入るが、そこには天野先輩が‥‥‥。

 翌日私はある作戦を実行しようとしている。そのある作戦は昨日の夜に考えた。そのときの私は学校で問題があり、それがトラウマになってそれ以来登校拒否をして引きこもりになったような状態だった。

 これなら完璧だ。もうあんな頼りない先輩の力を借りる必要がない。

「廃部がたしか今日の夜になる予定のはずだから、まだ時間はあるわ」

 私は行動を開始した。まずは、ビラ配り。ただ掲示板に貼るだけでは見る人がいないかもしれないから、直接ビラを渡して入部してもらおうという方法である。

 この日のために私は誰よりも早く朝一番に学校に着き、入ってくる生徒をずっと待っていたのだ。

「お願いします、製菓部です」

 校門に入る生徒一人ずつにビラを配った。すると、そこには堀川さんの姿が見えた。

「おはようございますぅ、白井ちゃん。何をしているのですか?おばさんからもうとっくに出かけたよと聞いたんですけど」

「実は私製菓部に入部したの」

「へぇやっぱり白井ちゃん製菓部にしたんだ~」

「やっぱりって、どういうこと?」

 すると堀川さんはくすくすと笑い出す。

「だって白井ちゃん、初めて製菓部の部室にいる先輩を見ていたいたじゃないですかぁ。それってもしかして‥‥‥」

 それを聞いた私は一瞬に頭に湯気が上がった。

「あわわわ!ち、ちょっと堀川さん違うってば。べ、べべべ別にあの人が好きだからって入ったわけじゃないんだから」

「あー、やっぱりあの先輩が好きなんですね。白井ちゃんやるねぇ」

「もう、だから違うってば!」

 私は堀川さんに完全に遊ばれていた。

「くすくすわかりました。お菓子を作る事が好きだから入部したんですよね」

「うん、そうなんだけど‥‥‥。実は今日で製菓部廃部になっちゃうんだ」

「えぇっ!どうしてですか!?せっかく好きな先輩と一緒に部活動ができるのに」

「だから違うってば!」

 私は堀川さんに昨日あったことと廃部のことを全て打ち明けた。それを聞いた堀川さんはちょっと暗い表情になった。

「そんなことがあってんですね」

「うん。でも廃部は今日の夜だから諦めるのはまだ早いと思ってこうしてビラを配ってるの」

「がんばってくださいね」

「ありがとう」

 堀川さんの応援のおかげで私はさらにやる気が上がってきた。

 やってやるぞ。あのドS教頭にぎゃふんと言わせてやるんだから。

 しかし、いくらビラを配っても減らない。たくさん刷りすぎたせいだろうか‥‥‥。

 今更そんなこと考えても仕方が無いので、とにかくビラを生徒達に配るほかはない。

「おねがいしまーす!」

 私の得意の元気な声で生徒達に目を向けさせる。

 すると、その声に釣られたのか男子生徒達が私のもとに来た。

「君かわいいね、何してるの?」

「部活の部員募集のビラをみんなに配っているの」

「へぇ、一人だけでがんばるね。何の部活なの?」

「製菓部です」

「製菓部か、がんばれよ」

「ありがとう!」

 男子生徒達はビラを手にして行った。

 こうしてビラ配り作戦は一時間でほとんど無くなった。なんかとてもうれしい気分になる。

 そろそろ教室に帰ろうと思い後ろに振り向いたら、配ったはずのビラがあちこちにバラバラにあった。

「これはもしかして、みんなに配ったはずのビラじゃ‥‥‥」

 仕方なく地面においてあるビラを全部拾う。その中にはビリビリに破かれていたり、クシャクシャにされているのもあった。

 これはひょっとして、さっきの男子生徒達のせいでは‥‥‥。

 いやだめよ。人を疑ってはいけない。

 ビラを全て回収し終わると、朝のHRのチャイムが鳴った。

 結局私は遅刻をし先生に怒られた。

 クラスメートの中には笑う人が少しいた。

「へへへ、高校生にもなってるのにまだその遅刻の癖は直ってねぇのかよ」

「なんですって!」

 男子生徒に注意しに行くと、彼は今朝私に声を掛けた人だった。

「あっ、あんたあのときの!」

「何っ、さっきの女の子っておまえだったのか!」

 ビラを捨てていった犯人だということを確信した私は校舎でビリビリに破かれていたビラを彼に見せる。

「なんだよこれ?」

「見ればわかるでしょ。これ、あんたがやったでしょ」

「ちぇっ、ばれたか‥‥‥」彼は私に軽く舌打ちをする。

「あんたさっきまで『がんばれよ』って言ってくれたのにどうしてこんなことするの!私は一生懸命やってるのに」

 するとイライラしたのだろうか彼は突然怒鳴り声で言う。

「うるせぇんだよ!何が製菓部だ。そんな犬の糞臭え部活なんぞ入りたかねぇよ!」

 部活を馬鹿された私は思いっきり、彼の顔面に一発パンチをお見舞いした。

 その威力は後ろのロッカーにまで吹っ飛んだ。

「いってぇ‥‥‥」

「あんたこれ以上私の部活を侮辱したら、ただじゃ済まさないからね!」

「知ってるんだぜ。俺の兄貴はこの学校のOBだからよ。学園祭で製菓部の連中のせいで滅茶苦茶にされて兄貴の屋台まで灰になったってな」

 去年天野先輩の先輩達が視聴覚室を燃やすときに出た火が男子生徒の兄の屋台まで火が移ったそうだ。

 私はそれ以上彼に何も言えなかった。

「はいはい白井席について、授業が始まるわよ」

「‥‥‥」

 昼休みの時間、私のクラスで噂をしていた。

「ねぇ聞いた?さっきの〇〇君のお兄さんかわいそうよね」

「そうそう、実は私の友達のお姉さんも彼のお兄さんと同じ学校でひどいありさまだったって」

「マジ、それやばくない?」

 あのときの話で持ちきりとなった。このままじゃ製菓部の勧誘作戦が台無しになってしまう。

 でも、私はあきらめない。たとえどんな理由があっても絶対に廃部なんてさせない。

 昼休憩みんなが昼食の時間をとっているなか私はいろんなクラスを出回り問答無用で教室に入り込んで次の作戦にうつったのだ。

「たのもーーー!」と大きい声で言った。

「えー何、何事?」

「お菓子が好きな人、作るのが好きな人是非、製菓部に入ってくださーい!」

「何だよ、部活の勧誘かよー」一人の男子がめんどくさそうな口調で言った。

「見学でもいいので来てくださーい!来てくれると製菓部の様子がよりわかりやすいです!」

 ビラをクラス中に配るが誰一人受け取ってくれない。

 声を掛けても無視される。なんか少し寂しく感じる。天野先輩も去年こんな感じで何も悪い事してないのにいじめを受けながら部活動をしていたんだね。

「‥‥‥」

 私は静かに教室から出た。結局誰一人入部の声も掛かって来ずかつ昼休憩のときに食べる弁当も食べ損なってしまった。

 

 午後の授業が終わると、三時過ぎだ。もう時間がない。このままじゃ廃部になってしまう。そんなの嫌だ。製菓部が無くなったら私はいったいどこの部活へ行けって言うの。

 もはやビラを配ったり勧誘は全く効果がない。

 私は奥の手を使うことを決意する。本当はこんなことはしたくはないのだが、仕方が無い。

 職員室に入り、教頭先生は何処にいるのか聞くと校長室にいると聞いた。

 校長室‥‥‥、なぜだ。ま、まさか‥‥‥。

 私はやな予感がし急いで校長室へ向かった。

「失礼します!」

 校長室のドアをノックし入る。そこには校長と憎たらしいドS教頭ともう一人いた。

 なんと天野先輩だった。どうしてこんな所にいるの。

 すると天野先輩は教頭に何かを渡そうとしている。

「本当によろしいんですね?後で吠え面かいても知りませんよ」

「いいんです。もう僕には製菓部を続ける資格もないし、部長になる資格もないと自分で思っています」

「随分ときっぱり言うのね。去年私があなたに言ったこと覚えていませよね」

「はい。『一年だけチャンスをあげましょう』と仰っていました」

 なにやら、去年のことを話しているみたいだ。

「今まで有難うございました」

 天野先輩が持っているのは、なんと部活の廃部届だ。

「だめーーーー!」

 私は無意識に天野先輩が持っている廃部届を奪い取った。

「あ、あなたは白井さん!どうしてあなたがここに‥‥‥」

「あぁ、私が入れてあげたんですよ」

「校長先生、あなたという人はいっつも言っていますでしょ!用も無い生徒をここに入れちゃいけませんって‥‥‥特に女生徒!」

「いいじゃないですか、若い女の子を見ていると私は元気が出るんですよ」

「そんなくだらない言い訳は私には通じませんよ!そ、そそんなことより白井さんどうしてこんなところに?」

 教頭は本当に話を切り替えるのが速過ぎる。

「‥‥‥」

 天野先輩も私がこんなところに来る事は想定外のような表情をした。

「白井さん、まさか君は‥‥‥」

 天野先輩は気づいたが、私は教頭にお願いをする。

「お願いです教頭!製菓部を廃部しないでください!」

「フンッ!言ったでしょ。もう廃部するのですってね。もう約束の一年は今日が丁度その日なんですのよ」

 天野先輩は教頭に後一年だけ部活動の時間をくれたから、おそらくそのことでここに来たのだろう。

「‥‥‥」

 私は沈黙した。

「どうしたのですか白井さん?何も言わないということは負けを認めたということですね」

 私はしばらく考えた結果ついに奥の手を使う。

「な、何のまねですか?」

 私は土下座をして教頭にお願いをした。

「お願いです!廃部しないでください!」

「い、今更土下座をして許せるを思っているのですか?」

「私は製菓部が好きなんです!だから私から大好きな部活を消さないで!」

 天野先輩はその言葉を聞いて目の色が変わった。すると、

「僕からもお願いです!製菓部を廃部しないでください!」

「えっ!?」

 私は突然天野先輩も一緒に土下座をしたことに驚く。

「いけません!約束は約束です」

 校長先生は私たちが土下座をしている様子を見てこう言う。

「教頭先生、製菓部の廃部を免除しなさい」

「ちょっ、校長先生!何を仰っているのですかお」

「彼らは製菓部を愛しているのです。その愛している部活を、大好きな部活をあなたは消すのですか?この世には軟弱というものは何もないんです。どうして生徒達はあんなにがんばっているかわかりますか?それは、大好きな部活があるからなのですよ。そのことはあなたもご存知ですよね?」

「そ、それは‥‥‥」

 さすがの教頭も頭が上がらない。

「い、いいでしょう。製菓部の廃部を免除しましょう‥‥‥」

 教頭の口から免除という言葉を聞き、私は叫んだ。

「やったーーーーー!」

 嬉しい、とても嬉しい。今日製菓部が廃部になるはずなのにまさかの奇跡が起きたのだ。

「校長先生ありがとうございます!」

「いやいや、大した事はしていませんよ。二人ともしっかりがんばってください」

「はいっ!」と私はしっかりした声で返事をし校長室から出た。

「白井さん、今回だけですからね!もし何か問題を起こしたら即刻廃部してやりますからね!」と教頭は私に捨て台詞を残してすぐさま去っていった。と

 これで一件落着となり、明日から正式に部活が始まる。その時私は急に天野先輩に言うべき事を思い出し、帰ろうとした天野先輩を呼び止めた。

「天野先輩。その‥‥‥」

 やはり、すぐには言えない。すると天野先輩の口が開き、

「そういえば、白井さんに言いたい事があったな」

「えっ?」

「白井さん、ありがとう!」

 私は天野先輩にお礼を言われ、急に顔が赤面した。おまけに私より先に言われて、なんかちょっとムカッとした。

「べ、別に先輩のためにやったわけじゃないんですからね。私はただ製菓部が無くなってほしくなかったし、ほ、他にもやりたいことがあっただけなんですから‥‥‥」

「やりたいことって?」

「そ、それは‥‥‥。な、何でもいいでしょ!」

「ふーん、そっか。じゃっまた明日ね」

 天野先輩は私にさよならをして去ろうとした。

「天野先輩!」

 私はまた天野先輩を呼び止めた。

「私は絶対にあきらめませんから!たとえどんなことがあっても私はこの部活をあきらめませんから、天野先輩もあきらめないでください!」

 私が最後に言いたかったことがようやく言えた

「うん、わかった。一緒にがんばろう白井さん!」

「はいっ!」

 私は天野先輩に大きく手を振ると、天野先輩も私に手を振ってくれた。

 こうして私と天野先輩は製菓部を守ることを決意し、明日から二人だけの部活動が始まるのだった。

実によかったですね。校長先生の言葉で教頭を圧倒してしまいました。まさに校長先生は切り札といっても過言ではありませんねwww。

 さて次回からは真子と天野先輩との二人きり(?)の部活動が始まります。


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