プロローグ
『Fランクの倉庫番 ~実は最強の兵器庫を持つ男、学園都市で平穏を望む~』
「俺は、普通に生きたいだけなんだ――たとえこの倉庫に、軍隊一つを詰め込んでいたとしても」
神様は不公平だ、なんて言葉は、この島では何の意味も持たない。
ここでは、不公平こそが唯一の法であり、絶対の真理だからだ。
二十一世紀中盤、人類が発見した進化の残滓――『異能核』。
それは少年少女の胸の内に宿り、世界の物理法則を塗り替える力となった。
火を操り、風を切り、重力を捻じ曲げる。
かつて空想の産物だった「超能力」は、今や数値化され、管理され、そして格付けされる対象へと成り下がった。
太平洋の中央、青い海を切り裂いて築かれた巨大人工島。《アストラリウム学園特区》。
表向きは未来の英雄を育てる学び舎。
実態は、能力の優劣ですべてが決まる巨大な檻。
AからFまで振り分けられた階級。
富と名誉を独占する上位者と、そのおこぼれを拾って生きる下位者。
この島に降り立った瞬間から、俺たちの価値は腕に巻かれた「色」で決定される。
「――俺の能力は、ただの倉庫番だよ」
そう言って、俺は自分の「価値」を隠した。
かつて、その力で取り返しのつかないものを壊してしまったから。
かつて、その力の深淵に触れて、絶望を知ったから。
無限の広がりを持つ、ガラクタだらけの亜空間。
誰も見向きもしない、戦闘能力ゼロの「収納」スキル。
それが俺の選んだ、平穏への盾だった。
けれど、運命というやつは、倉庫の中に放り込んでおけるほど都合のいい代物じゃなかったらしい。
これは、世界に「不要」と断じられた俺が、そのガラクタ(兵器)の山を抱えて、学園の頂点を静かにぶち壊していく物語だ。




