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2 修羅場メンバー紹介


 まず勇者に陥落したのは聖女セーラ。


 豪奢な金髪に透き通る緑の目。アイアリスとは違う法衣に身を包んだ聖なる乙女。勇者より年下の十七歳。祈りでメンバーの強化と回復(祝福)を行い、敵に異常効果(呪詛)を与える後方支援を担当していた。

 彼女は最初から旅の同行が決まっていて、国からも勇者と結ばれる事が求められていた。だからというだけではないが、彼女は真っ先に勇者と親密になった。


 それは全然構わない。聖女セーラは純朴で、初々しさにほのぼのとした。

 しかしほのぼのしたのは最初だけだった。


 続いて魔法使いヴァーシプが陥落。


 耳の下で切り揃えられた青みのある黒髪に、涙で潤んだ緑の目。とんがり帽子に真っ黒いローブを羽織った彼女は、意外と背が高く勇者と同い年だった。

 気弱な言動に騙されがちだが、彼女の魔法の威力は甚大。火炎系が得意で、よくやり過ぎて周囲を焦土にしていた。

 その手加減のできなさから落ちこぼれと言われていた彼女だが、勇者に選ばれた事で実力を発揮できるようになり、転がり落ちるように勇者を崇拝。求められたら我が身すら捧げるほどの信者になってしまった。

 文字通り、身体を捧げてしまったのである。


 これは流石に笑えない。

 盛大に引きつったし、純朴だった聖女は嫉妬で怒り狂ったし、献身でしかないヴァーシプは何故騒ぎが起きたのかわかっていない顔だった。勇者もよくわかっていない顔だった。これにはフィストの拳が唸り、一発ぶん殴った。なんで何もわからない顔をしているんだ。何してんだテメェ。


 更にガンマンのリルス。

 こいつは一際厄介だった。


 ふわふわの赤毛をサイドテールにした青い目の美女。露出が高いわけではないが、張りのある胸元と腰は人目を引くほど蠱惑的。狙った獲物は必ず打ち抜く射撃精度を誇り、戦いですら舞のように飛び回る超移動型。

 明らかに、魅せ方を熟知した大人の女性だった。実際、アイアリス(規格外)を抜かせば年長者の二十三歳だった。


 そんな彼女は自ら混沌の人間関係に飛び込み、勇者を誘惑してベッドイン。


 何してんだとフィストがぶち切れても仕方がない所業。

 聖女もぶち切れて拳で殴りかかった。理由のある暴力だった。

 ちなみにヴァーシプは勇者様が望むならと笑顔だ。ある意味一番怖い。


「よくないぞリンジ。こういうのはよくない。勇者だからとかじゃなく、人としてよくない」


 ぶん殴って正座をさせて、宿屋の一室で説教をする。

 節操のない勇者相手に何度も説教を繰り返すフィストはこめかみを揉みながら頭痛を和らげようと必死だった。

 相変わらず、勇者リンジは不思議そうだった。どうして怒られているのかわかっていない顔で、フィストを見上げていた。


 戦闘になれば頼りになる、本当に平和な国から来たのか疑いたくなるような少年だったが、私生活は本当にダメダメだった。


 掃除も洗濯もやった事がない。料理も未経験で、貨幣の数え方も覚えない。あまりにもぼうっとしているので、聖女が嬉々として世話を焼いていた。


 それでも魔王討伐までは一緒に戦う仲間だ。

 仲間だからこそ、秩序を保たねばならない。フィストは何度も勇者に訴えた。


「セーラを愛したなら責任をとれ。ヴァーシプのはちょっと行きすぎた信仰かもだからおいとくが……二人も情を交わした相手が居ながら、更にリルスは欲張りすぎだろう。たとえ相手が誘惑してきても、ちゃんと拒め。何でもかんでも手を出すのは不誠実だ。ちゃんと一人に絞れ」


 フィストとしては当たり前のお説教だったのだが、リンジにとっては違ったらしい。


「フィストは俺と寝たくないの?」

「話聞いていたか?」


 お手上げだった。


 魔王討伐メンバーに居る女性五人のうち、三人が勇者のお手つきになると言う珍事。しかも満足していないようで、滞在した村々でも気に入った女性に手を出す始末。

 崇拝者ヴァーシプとセフレ感覚のリルスは気にしていなかったが、真剣に交際を考えていたセーラの怒りと嫉妬は凄まじかった。


 それからというもの、セーラは勇者が他の女に手を出さぬよう監視するようになった。

 既にお手つきの討伐メンバーはともかく、その他に目が向かぬよう日々キリキリと目をつり上げていた。リンジを説教するフィストすら、いつ寝台に引きずり込むかと気が気でないようで、嫉妬に狂う女の顔で睨み付けてきていた。


 正直勘弁して欲しい。

 フィストの目的は勇者と仲良くする事ではなく、魔王を倒す事だ。


 懸命にそう主張したおかげか、セーラはフィストを安全牌と認めた。だからこそ勇者がふらっと女遊びに行くのを止めるフィストを信用するようになったし、比較的会話もスムーズになった。それは偏に、フィストが勇者に対して恋愛的興味がないと確信できたからだ。

 確信して頂くまで、かなりの時間を有した。

 ギリギリでも信頼関係が築けたからこそ、彼らは魔王を討伐する事ができた。

 本当に、ギリギリな戦いだった。


 ――人間関係が。




こんな勇者パーティはイヤだ。


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