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第42話「決戦前夜」

ついに、たどり着いた。 僕たちの、本当の「リベンジ」の舞台に。


愛知県予選決勝戦、対戦相手、私立修明学院。 その事実が、部室のホワイトボードに、神田部長の力強い文字で書き出されてから、僕たちの空気は、今までとは比べ物にならないほど、張り詰めていた。 それは、恐怖ではない。最高の相手と、最高の舞台で戦えることへの、武者震いだ。


決戦を明日に控えた、土曜日の放課後。 僕たちは、最後の作戦会議を行っていた。


「修明学院のデータは、練習試合の時と変わらない。一条蓮を中心とした、論理的で、ミスのない、完璧な大喜利。弱点らしい弱点は、ない」 高橋さんが、タブレットに表示されたデータを分析しながら、冷静に告げる。


「でも、俺たちは、あの時とは違う」 佐藤君が、低い声で、しかし、確信を持って言った。 そうだ。僕たちは、あの敗戦から、多くのことを学んだ。多くの強敵と戦い、多くの武器を手に入れた。


神田部長が、僕たち一人ひとりの顔を、ゆっくりと見回した。 「作戦は、一つだけだ」


彼は、ホワイトボードに、ただ一言、こう書いた。


『楽しむ』


「俺たちは、俺たちのセッションをやる。あいつらが、どれだけ完璧な答えを出してきても、俺たちは、俺たちのやり方で、この場所を、最高のライブ会場に変えるんだ。いいな?」


「「「「押忍!」」」」


僕たちは、武蔵第一の武士たちのように、力強く、一つになって叫んだ。


***


その夜、僕は、自分の部屋で、一人、大喜利用のノートを開いていた。 新しいお題を考えるでもなく、答えをひねり出すでもない。ただ、これまで書き溜めてきた、たくさんの、くだらない答えの数々を、一ページ、一ページ、愛おしむように、見返していた。


『ナマケモノが「光陰矢の-如し」と悟った瞬間とは?』 『教員同士の恋愛を禁ずる』 『AIって、いいよなぁってみんな言ってましたよ。』


僕が、この部室で、仲間たちと出会ってから見つけ出した、僕だけの「発見」。 ノートの文字は、決して上手くはない。でも、その一つ一つが、僕にとっては、どんなトロフィーよりも輝いて見えた。


明日は、このノートの、新しいページに、最高の答えを書き込むんだ。 僕は、静かにノートを閉じると、いつもより少しだけ、早くベッドに入った。


不思議と、心は、穏やかだった。

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