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第39話 「王の証明」

【ROUND 3 WINNER:名城葉月高校】


佐藤の答えがもたらした、静かだが、確かな一本。 スコアは1対2。僕たちは、土壇場で崖っぷちから指一本でぶら下がった状態だ。


「…面白いじゃねえか」 神田部長が、画面の向こうの姫宮莉緒を見つめながら、静かに、しかし、楽しそうに呟いた。 部室の空気は、もう絶望ではない。勝負の行方が全く分からない、心地よい緊張感に満ちていた。


画面に、第四ラウンドのお題が表示される。


お題:『おとぎ話の悪役たちが、ヒーローよりも人気になってしまった。その驚きの理由とは?』


先攻、聖フローラ女学院。答えるのは、再び、女王・姫宮莉緒。 彼女は、佐藤の答えに心を揺さぶられた動揺を、もう微塵も感じさせない。完璧な、冷徹な女王の顔に戻っていた。


「悪役たちが、自分たちの城で、保護猫・保護犬のNPO法人を立ち上げたからですわ」


その、あまりにも現代的で、あまりにも「正しく」、そして、ぐうの音も出ないほど完璧な答え。 僕たちは、唸った。「うわ…」「それは、人気出るわ…」 結果は、【聖フローラ女学院:8点】。またしても、見事な一本。 スコアは、1対3。僕たちの敗北が、決まった。


…かに、思われた。


後攻、名城葉月。 この、敗北が決まったかに思われた状況で、神田部長が、静かにマイクをオンにした。 彼は、誰に言うでもなく、ただ、自分の手のひらを、じっと見つめている。


お題:『おとぎ話の悪役たちが、ヒーローよりも人気になってしまった。その驚きの理由とは?』


そして、彼は、詩を詠むように、こう言った。


「悪役たちの手のひらに、もう一本、生命線が増えていたから」


部室は、静まり返っていた。 誰も、笑っていない。 でも、僕の背筋は、ぞくりと粟立っていた。 それは、面白いとか、そういう次元の答えじゃなかった。物語の「前提」そのものを、ひっくり返す、神の一手。ヒーローが負ける未来を、完璧に、そして、美しく描いてみせたのだ。


投票タイム。 僕たち四人は、震える手で、ボタンを押した。 画面の向こうの、聖フローラ女学院。姫宮莉緒は、呆然とした顔で、画面を見つめている。彼女の隣にいたメンバーの一人が、何かに取り憑かれたように、そっとボタンを押したのが見えた。 そして、姫宮莉緒自身も、ゆっくりと、何かを確かめるように、ボタンを押した。


結果は――【名城葉月高校:7点】。


一本。 僕たちは、敗北の淵から、奇跡の一本をもぎ取った。


【ROUND 4 WINNER:名城葉月高校】


スコアは、2対3。 まだ、負けている。でも、僕たちは、生き残った。 神田部長は、ただ、静かに笑っていた。まるで、勝敗なんて、どうでもいいとでも言うように。 その顔は、僕が今まで見た中で、一番、王様のように見えた。

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