表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/45

第36話 「アイドルへの塩対応」

予選二回戦、当日。 部室に集まった僕たち葉月高校大喜利部の顔には、笑顔は一切なかった。あるのは、これから始まる任務への、静かな決意だけ。 オンライン対戦用のビデオ通話に接続すると、画面の向こうには、聖フローラ女学院の五人が、完璧な笑顔で手を振っていた。


「聖フローラ女学院です! よろしくお願いします、ニャン♪」


対して、僕たち五人は、打ち合わせ通り、無言で、深く、一度だけお辞儀をした。 神田部長が、低い声で「…名城葉月です。始めましょう」とだけ告げる。 画面の向こうで、フローラ女学院のメンバーたちの笑顔が、ほんの少しだけ、こわばったのが分かった。


やがて、画面に、第一ラウンドのお題が表示される。


お題:『童話「シンデレラ」。舞踏会で、王子様が、シンデレラより夢中になってしまった意外なものとは?』


先攻は、聖フローラ女学院。


リーダー格の女子生徒が、自信満々の笑顔で答える。


「(全員で、ガラスの靴をうっとりと眺めるポーズをしながら)…シンデレラが落としていった、ガラスの靴の、キラキラです!」


完璧な、アイドルとしてのパフォーマンスだった。 しかし、僕たち葉月高校のメンバーは、誰一人、表情を変えない。ただ、無表情で画面を見つめているだけだ。


投票タイム。僕たちは、事前に打ち合わせた通り、誰一人、投票ボタンを押さなかった。 結果は、


【聖フローラ女学院:4点】。(フローラ女学院のメンバー4票のみ)


予想外の低得点に、彼女たちの間に、初めて動揺が走る。


後攻は、葉月高校。答えるのは、作戦の要である、高橋栞。 彼女は、一切の感情を見せず、淡々と答えた。


お題:『童話「シンデレラ」。舞踏会で、王子様が、シンデレラより夢中になってしまった意外なものとは?』「舞踏会に、カボチャの馬車で来たのなら、当然、そのカボチャの『種』も、どこかに落ちているはずだ、と。王子は、来年の収穫に向けて、優秀な種子を確保することに夢中だった」


投票タイム。僕たち葉月高校は、全員が投票する。フローラ女学院は、その無機質な答えに困惑し、誰も投票できない。結果は、


【名城葉月高校:4点】。


そして、作戦の第二段階。 高橋さんは、自分のノートを開くと、淡々と、先ほどのフローラ女学院の答えを「分析」し始めた。


「…先ほどの回答、『キラキラ』は、抽象的すぎて、評価が困難です。パフォーマンスへの依存度が高く、回答単体での面白さが担保されていません。再現性に乏しいかと」


その、あまりにも冷徹な分析に、フローラ女学院のメンバーたちは、完全に凍りついていた。


【ROUND 1:DRAW】


結果は、引き分け。 しかし、精神的なダメージは、明らかにフローラ女学院の方が大きかった。 彼女たちの武器である「愛嬌」と「パフォーマンス」が、全く通用しない。


それどころか、「分析」という名の刃で、切り刻まれている。 画面の向こうで、彼女たちの完璧な笑顔は、完全に消えていた。 神田部長の、狂気の作戦は、見事に成功した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ