表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/45

第32話 「王手」

【ROUND 3:DRAW】


画面に表示された文字を見て、両チームの間に、初めて、言葉にならないリスペクトの空気が流れた。 愛工大附属のリーダー、権田が、画面の向こうで、初めて、ほんの少しだけ、楽しそうに笑ったのが見えた。


スコアは、1対1。先に三勝した方が勝利。残りは、二ラウンド。 先に一本を取った方が、勝利に「王手」をかける、極めて重要な局面だ。


画面に、第四ラウンドのお題が表示される。


お題:『宇宙人と野球で勝負。意外すぎるルールを追加して、地球人がなんとか勝った!どんなルール?』


先攻は、愛工大附属。答えるのは、権田とは違う、少し小柄な、いかにも技術屋といった雰囲気の男だった。 彼は、平坦な口調で、こう答えた。


「ルール:『ピッチャーが投げるボールは、必ず、QRコード柄でなければならない』。


理由:『動体視力が良すぎる宇宙人は、回転するQRコードから、大量の無意味な情報(広告サイトのURLなど)を読み取ってしまい、脳の情報処理が追い付かず、バットが振れなかった』」


その、あまりに理系的で、ひねくれたルールの抜け道。 僕たちは、唸った。「すげえ…」「そんな勝ち方が…」 投票タイム。僕たちは、その発想力に敬意を表し、全員がボタンを押した。 結果は、


【愛工大附属:8点】。

見事な「一本」だった。


【ROUND 4 WINNER:愛工大附属】


スコアは、2対1。


ついに、相手に王手をかけられてしまった。もう、後がない。


部室に、重い空気が流れる。 この、絶体絶命の土壇場で、神田部長は、意外な男を指名した。


「山田、行け」


「え、俺っすか!?」


この一番プレッシャーのかかる場面で、ムードメーカーの彼を送り出す。それが、部長の決断だった。 山田君は、ゴクリと唾をのむと、一度だけ、僕たち四人の顔を見回した。 そして、覚悟を決めたように、大きく息を吸って、叫んだ。


お題:『宇宙人と野球で勝負。意外すぎるルールを追加して、地球人がなんとか勝った!どんなルール?』


「『三塁ベースを踏んだ後、必ず、一度、ベンチにいる監督と熱い抱擁を交わしてからじゃないと、ホームベースを踏んではいけない』!」


その、あまりにも人間臭く、あまりにもバカバカしいルール。 感情表現が苦手そうな宇宙人が、三塁ベースを踏むたびに、監督とぎこちない抱擁を交わし、その隙にタッチアウトになる光景が、目に浮かぶようだった。


その答えに、最初に吹き出したのは、画面の向こうの、愛工大附属のメンバーだった。 リーダーの権田も、腹を抱えて笑っている。 もちろん、僕たちも、全員が、涙を流しながら投票ボタンを連打していた。


結果は――


【名城葉月高校:9点】


満票。 完璧な「一本」返しだった。


【ROUND 4 WINNER:名城葉月高校】


「うおおおおおお!!!!」


山田君が、雄叫びを上げた。僕たちは、彼に駆け寄り、頭をぐちゃぐちゃにかき混ぜた。 絶体絶命のピンチを、この男の、渾身の一撃が救ったのだ。


スコアは、2対2。 勝負は、運命の最終ラウンドへ。 部室には、これ以上ないほどの、張り詰めた緊張感が満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ