第31話 「大将戦」
【ROUND 2 WINNER:愛工大附属】 画面に表示された文字に、僕たち葉月高校は言葉を失った。スコアは、1対1のタイ。
「…面白いじゃないか」 沈黙を破ったのは、神田部長だった。彼は、画面の向こうの好敵手を、楽しそうに見つめている。 「あいつら、俺たちとは全く違う脳みそを持ってる。最高だな」 その言葉に、僕たちは少しだけ緊張を解き、改めて画面に向き直った。そうだ、楽しむんだ。
画面に、第三ラウンドのお題が表示される。
お題:『UFOが地球に初めて着陸。宇宙人が、最初に発した、意外すぎる一言とは?』
SF、異文化コミュニケーション。発想の全てが試される、大喜利の王道ともいえるお題だ。 この重要なラウンド、両チームが送り出したのは、やはり、それぞれの「大将」だった。
先攻・愛工大附属。答えるのは、リーダー格の男、権田。 彼は、少しも動じず、無骨な、しかし、自信に満ちた声で答えた。
「この星の、Wi-Fiのパスワードを教えてくれ」
その、あまりにも現代的で、あまりにも実用的で、そしてあまりにもバカバカしい第一声に、僕たちは「やられた!」と唸った。完璧な答えだ。 投票タイム。僕たちは、悔しいが、その面白さに、全員がボタンを押した。
結果は、
【愛工大附属:8点】。見事な「一本」。
絶体絶命のピンチ。ここで一本を取り返せなければ、完全に流れは相手に渡ってしまう。 後攻・名城葉月。 神田部長が、静かにマイクをオンにした。
彼は、静かに、そして、とても優しい顔で、こう答えた。
お題:『UFOが地球に初めて着陸。宇宙人が、最初に発した、意外すぎる一言とは?』
「(地球の土を、そっと一握りして)…ああ、母さん。ただいま」
その、あまりにも詩的で、壮大で、そして、予想の斜め上を行く答え。 宇宙人の侵略や友好ではなく、「帰郷」という、全く新しい物語が、その一言で生まれた。
投票タイム。 僕たち葉月高校のメンバーはもちろん、画面の向こうの、あの武骨な愛工大附属のメンバーたちも、数名が、呆然としながらも、尊敬の念を込めて投票ボタンを押していた。
結果は――【名城葉月高校:8点】。
同じく、完璧な「一本」返しだった。
【ROUND 3:DRAW】
画面に表示された文字を見て、両チームの間に、初めて、言葉にならないリスペクトの空気が流れた。 愛工大附属のリーダー、権田が、画面の向こうで、初めて、ほんの少しだけ、楽しそうに笑ったのが見えた。




