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第23話 「正しい答え」

「……なるほど。内輪でしか通用しない笑い、ということですか。参考になります」




一条蓮の冷たい言葉が、イヤホン越しに、僕たちの心に突き刺さる。




「なんだと…」




山田君が唇を噛み、高橋さんは悔しそうに俯いた。僕も、せっかく芽生えた自信を打ち砕かれ、完全に萎縮してしまっていた。 チームの雰囲気は、最悪だった。


その重い空気を破ったのは、神田部長だった。 彼は、画面の向こうの一条を真っ直ぐに見据えたまま、僕たちに静かに語りかける。




「気にするな。価値観が違うだけだ。あいつらが『データ』を集めてる間に、俺たちは、俺たちの『セッション』を楽しむ。――俺たちの面白いことを、俺たちのやり方でやる。それだけだ」




その言葉に、俯いていた僕たちの顔が、ゆっくりと上がっていく。 そうだ。僕たちは、点数を取るために大喜利をやっているんじゃない。面白いことを、楽しいことを、見つけるために、ここにいるんだ。 僕たちの心に、再び小さな火が灯った。




画面に、第二ラウンドのお題が表示される。


お題:『ネコが経営する不動産屋。どんな物件をオススメしてくる?』




今度は、発想の自由度がより高い、物語性が試されるお題だ。 先攻は、僕たち名城葉月高校。 この重要な局面で、手を挙げたのは、高橋栞だった。さっきまでとは違う、静かな闘志を目に宿している。 彼女は、少しだけ猫なで声を作り、完璧なキャラクターになりきって、こう答えた。




「(猫なで声で)ニャーんと、こちらの物件はですね、日当たりが最高でして。一日中、窓際でウトウトできること、保証しますニャ」




彼女の、完璧な「猫のキャラクター」になりきった答えに、僕たちは「可愛い!」「面白い!」と爆笑し、全員が力強く投票ボタンを押した。




しかし、画面の向こうの修明学院は、誰一人として、顔色を変えない。 投票タイムが終わり、画面に表示された得点は、【名城葉月高校:4点】。 またしても、修明学院からの票は、ゼロだった。




そして、後攻、修明学院。 一条とは別の、データ分析が得意そうな、メガネの男子生徒が、淡々と答える。




「ネズミ捕りの設置数が、他の物件の3倍です」




その、猫の生態を完璧に分析した、ロジカルで、しかし、どこかおかしい答え。 悔しい。悔しいけど、面白い。


僕と高-橋さん、神田部長の三人は、唸りながらも、投票ボタンを押した。 当然、修明学院のメンバーも、全員が投票。


画面に表示された得点は――




【修明学院:7点】




僕たちは、言葉を失った。 画面に、




【ROUND 2 WINNER:修明学院】



無慈悲な文字が表示される。

スコアは、4対7。


一度目の敗北よりも、さらに点差が開いている。 僕たちのやり方で、僕たちの面白いと思うことを全力でやった。それでも、届かなかった。




一条蓮は、何も言わない。 ただ、ノートに「感情に訴えるキャラクター路線は、得点が低い傾向にある」とでも書き込んでいるかのように、静かにペンを走らせるだけ。




その無言の圧力が、僕たちの心を、より深く、そして静かに、えぐっていった。

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