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第22話「先手必勝」

「……そちらが、名城葉月の皆さんですか。今日の対戦、有意義なデータが取れることを期待しています」




一条蓮の、あまりにも無機質な言葉に、僕たちは息を呑んだ。


その冷たい空気を、神田部長の、どこか楽しそうな声が破る。




「面白いデータが取れるといいな」




一条は、表情一つ変えずに続けた。




「では、試合開始前に、ルールの最終確認を。本日の勝敗は、参加者による相互投票で行うことを提案します。よろしいか」


「ああ、それでいこう」




神田部長は、即座に同意した。


画面に、チャット形式で、ルールが箇条書きで表示される。




ルール①:試合は5対5のチーム戦。全5回戦を行う。


ルール②:お題に対し、各チームの代表者が1名ずつ回答する。


ルール③:回答者を除く、残り9名が審査員となる。


ルール④:回答後、3秒間の投票タイムを設ける。「面白い」と感じた場合のみ、1人1票で投票する。


ルール⑤:合計得点が高いチームが、そのラウンドの勝者となる。




つまり、自分たちの答えが面白いかどうかは、相手チームの判断にも委ねられる、ということだ。 ごくり、と僕の喉が鳴った。




「ルールに異論はないな。――では、始めようか」




神田部長がエンターキーを押すと、画面の中央に、明朝体で、最初のお題が表示された。


お題:『SF映画によくある「絶対に押すな」と書かれた赤いボタン。押したら、どうでもいいことが起きました。何が起きた?』


先攻は、修明学院。 僕たちが緊張で見守る中、一条蓮は、少しも表情を変えずに、静かに、しかし澱みなく答えた。


「半径5メートル以内にいる全員の、スマホの充電が1%回復した」




その答えに、僕は息を呑んだ。 すごい…。無駄がない。SFというテーマに沿いながら、絶妙に「どうでもいい」。 画面に『VOTE TIME』という文字が表示される。僕は、その答えの完成度の高さに、素直に「面白い」のボタンを押した。高橋さん、神田部長も押している。山田君だけが、よく分からなかったのか、ボタンを押さずに首を傾げていた。


投票タイムが終わり、画面に得点が表示される。




【修明学院:7点】


修明学院のメンバー四人、そして僕たちの中から三人が投票した、ということだ。 初手から、いきなり高得点。僕たちの間に、緊張が走る。




「…次、後攻、名城葉月高校。どうぞ」 無機質なチャットの文字が、僕たちを促す。 この重い空気の中、最初に手を挙げたのは、やはり、この男だった。 山田健太が、深呼吸一つして、大声で叫ぶ。




「押した本人の、ズボンのチャックが全開になった!」




その、あまりに原始的で、バカバカしい答えに、僕と高橋さん、佐藤君、そして神田部長は、一斉に吹き出した。 僕たちは、笑いながら、全員が力強く「面白い」のボタンを押した。 しかし、画面の向こうの修明学院は、誰一人笑っていない。 一条は、無表情のまま、自分のノートに何かを書き込みながら、冷静に分析している。 そして、投票タイムが終わる。


画面に表示された得点は、無慈悲なものだった。




【名城葉月高校:4点】




僕たち四人が投票しただけ。修明学院からは、一票も入らなかったのだ。 第一ラウンドの結果が表示される。




【ROUND 1 WINNER:修明学院】




僕たちが、呆然としていると、一条蓮が、初めてマイクをオンにした。 そして、僕たちに、冷たく、こう告げた。




「……なるほど。内輪でしか通用しない笑い、ということですか。参考になります」

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