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「桜井誠の最終兵器」

期末テストまで、残り一週間。 僕たち『赤点回避対策本部』の活動は、佳境を迎えていた。 佐藤君の的確な指導のおかげで、僕の成績は、なんとか平均点が見えるところまで浮上してきている。 しかし、問題は、山田君だった。




「あああああ!もう無理だ!分かんねえ!」




部室に、彼の悲鳴が響き渡る。 目の前には、高橋さんが作った歴史の年号の暗記カードの山。彼は、その山をぐちゃぐちゃにかき混ぜると、ついに机に突っ伏してしまった。




「もう無理だって!俺、やっぱ馬鹿だから、やったって無駄なんだよ!」




その言葉に、部室は重い沈黙に包まれる。




「…ちょっと、休憩しよっか」




鬼の学級委員長だった高橋さんも、さすがに心が折れた山田君に、厳しい言葉をかけられない。 佐藤君は、腕を組んで、静かに天井を見上げている。


廃部の危機が、現実の匂いを帯びて、僕たちの周りに立ち込めていた。 このままじゃ、ダメだ。 僕が、俯いてしまった山田君の背中を見つめていた、その時だった。




(…本当に、そうだろうか?)




僕の頭の中に、これまでの光景が蘇る。 僕が考えた、あのくだらないナマケモノのお題。僕が「発見」した、先生たちの秘密の恋。神田部長の、シュールな答えの数々。 山田君は、そのどれもを、一度聞いただけで、完璧に覚えていたじゃないか。




僕の武器は、「発見」だ。 僕は、目の前で起きている問題の、誰も気づいていない本質を、「発見」した。




「……あの」




僕が、おそるおそる手を挙げると、全員の視線が集まる。 心臓が、またうるさく鳴り始める。でも、言わなければ。




「思ったんですけど…」




僕は、山田君のほうを向いて、続けた。




「山田くんって、歴史の年号とかは苦手だけど、僕たちの変な大喜利の答えは、一回聞いたら絶対に忘れないじゃないですか」




その言葉に、全員が「あ…」という顔になる。山田君も、机から顔を上げた。 僕は、勇気を出して、自分のアイデアを提案した。




「だから、この、覚えなきゃいけないこと全部…大喜利のお題にしちゃえば、覚えられるんじゃないかって…思ったんです」




それは、あまりにも突飛で、バカバカしい提案だった。 シーン、と静まり返る部室。 ああ、また、僕は、変なことを言ってしまったんだろうか。


その沈黙を破ったのは、神田部長の、腹の底からの笑い声だった。




「――はっはっはっは!最高だ!それこそが、俺たちのやり方じゃないか!」




彼は、こたつの上から立ち上がると、僕の肩を、力強く掴んだ。 その目は、僕が今まで見た中で、一番、キラキラと輝いていた。




「桜井。お前は、天才だ」

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