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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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ネックブレイク

 ――っし、極まってる、仕上がってる。ヤバい。今回は、筆のノリも最高だ。若干足りないアイデアから、ここまで逆転に持って行けたのは、努力の結果だ。濃い味付けなのは間違いないが、それでも……


「――いや、蛇足だな。じゃあ編集さん、後は頼みますよ」

「というか先生も見に来てくださいよ」

「いいよ。俺って町ではダメ男認識の上、そういう趣味だと思われてんでしょ? そこに突っ込む程度胸ねぇよ」


 酒場なんて所言ったら、それこそ噂の的になって、『あ、あの人よ!』『人って見かけによらないのねぇ……』とか言われるに決まってるんだ。俺は詳しいんだ。


「あぁ成程……羞恥プレイになりますか」

「やめろプレイとか言うんじゃねぇ。変に意識しちまうだろうが」

「何を意識されるんですか?」

「それも忘れて頂けると大変ありがたいのですが……って違う違う! 話題からずれてるんだよ! 兎も角、そう言う事で俺は遠慮しておきますんで」


 良し、ここはね、NOと言える日本人ですよ。後は此処で、昼寝の一つ……は無理だな流石に。硬いし、ここって偶に野生動物とかも入ってくるし。そいつ等に寝てる所を不意打たれたりしたら洒落にもならん……ん? 何、顔伏せて。


「分かりました……先生にも……見て欲しかったんですけど……」

「やめろォ! 分かった! 行けばいんだろいけばぁ!」


 そんなシュンとするな! 何かこっちが悪い事してるみたいじゃないの! 本当にこういうところズルいんだから! ええい……このあざとい! いや、半々で演技じゃないかっていうのは分かるんだよ! でも! でも!


「前は俺が一緒に来るの若干渋ってた事もあったってのに」

「今は先生が追われる立場でもないので。心配する事も無く、私の眼の届く範囲においておけるのでありがたいです」


 もう半分の場合だったら! ガチの反応だった場合が! 凄い! 申し訳なくなるから行かざるを得ないんだよ!! 


「はいはい。じゃあ行こうぜ。俺だって、別に自分の作品のウケ具合が知りたくない訳じゃあないんだからさ」

「――はい。行きましょう先生。今日も、先生のお話で大盛況間違いなしですよ」




『――アンタのパパはね、ママだったんだ、昔ね』

『えっ……』


 ――『狐』さんは、ブドウちゃんにそう言いました。パパはママだった? ブドウちゃんは全く訳が分かりません。そんな風に頭にハテナマークを浮かべている間にも、『狐』さんは一歩前へと踏み出しました。


『私にとってはね、あの子は大事な娘だった。それが、娘をやめて、パパになるって決めた時……本当に祝福した。幸せになって欲しいって思った。良いお嫁さんを貰ったと思って、誇らしかった……』

『お、お前は! 間違いない、貴様、は』

『そんな幸せを邪魔しようとする輩は、私がぶん殴るって決めてるんだよ』

『あの酒場の女将……『男殺し』の狐! 畜生、こんな化け物がどうして!』


 鋭い瞳で、ギロリと悪い男の人を睨みつけて。するりするりと近寄っていきます。


『――やいやいやいやい! 聞きな無粋者! 家の店に出入りしていたアンタが、あの子をずっとつけ回していたのはずぅっと昔から承知だってんだ!』

『なっ!?』

『あの子達の幸せをぶち壊そうとする三下野郎! お天道様が許しても、この狐が許しやしない! ましてや! 二人の愛の結晶を! 盗んで! 二人を別れさせようとするなんざ言語道断! ヌゥウウウウウウウン!』


そして決めるは、堂々不敵なマッスルポーズ! 拳二つを腹筋の前で突き合わせ、爆発させるは体中の筋肉! はち切れんばかり……いや、実際筋肉の勢いに耐え切れず、彼の服ははち切れた!


『そんな輩は……この私がぶっ飛ばす! 天の彼方まで!』

『ひっ、ひぃぃいいいいいいっ!?』

『わぁ!』


 たった一人の女の子を守るために、狐は今、美しき猛獣となって、悪党の前に立ち塞がるのです!




「『――アンタみたいな若い子は、私の店にはちょっとだけ酸っぱすぎるんだよ。もうちょっと、大きくなってから、出直しな』……そう、狐さんは言って、何処かへと去っていったのでした」

「「「ほぉおおおおおおおおおっ……」」」


 うむ。実に反応良し。最後のセリフは大分拘った……訳でも無いけど。流れから考えれば勢いを持ってググっとくるタイプのセリフを選んだつもりではある。それがこうやって嵌ってくれるのを見ると、こっちまでググっと来るよね。フハハハハ。


「すげぇ……よく分かんねぇけど、カッコ良かった! あるんだな、こんなのって!」

「あぁ。俺もボーゼンとしてる。嵐みたいだったなぁ、狐って野郎……野郎?」

「いいえ! アレは女の子よ……あんな可笑しな人、見たのは初めてだけど!」

「えぇ。なんでか可笑しな人、とも思わなかったわ! とっても変な人だけど!」


 おう変、と言う所を強調すんな。確かに濃くは書いたけど、変態ではないだろうがよカッコいいだろうが。作者として断固抗議する! 唯の変なキャラなんて言わせねぇってんだこん畜生が――!


「ホラ大人しくしときなダメ男」

「ぐげっ」


 ……酷い。いきなりカウンターに押し付けるなんて……っていうか重い重い折れる折れちゃいますご容赦をっていうかこんな事されるような事をした覚えはないぞゴラァアアアアアアッ!


「ごらああああ……」

「情けないのは間違いないけど、あんな事されるようなクズには見えないよねぇやっぱりコイツ。それとも人は見かけによらないって事なのか」

「あのスイマセン本当に俺貴女に何もしてないと思うんですけども出来れば放して頂ければ本当に嬉しいというかダメですかスイマセン」

「……本当に情けないだけなのかもしれないねコイツ」


 おかみさん、クビ、クビされちゃう。ちょきん、じゃなくてゴキンっていい音聞こえちゃうから許して。助けて。あっ、ミシミシ音が聞こえて来てる限界限界あっあっあっ……あっ


――ゴキン


「……」

「ってありゃっ!? やっちまった!? ご、ゴメンゴメンちょっと待ってな! おーいちょっと担架担架! 銭投げてる場合じゃなくて……」


アンデルセン先生ごめんなさい。


勢いで書いてたら先生の首がゴキった。

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