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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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ぶっちゃけ一番性格の良い人種じゃなかろうか

「ってこの前話してたのにやる事は変わらないこの悲しみよ」

「結局は日々の生活が崩壊すれば全て無意味と終わりますので。先生には原稿を書いて頂く事にはなるんですよずっと」

「そんなの、誰よりも俺が分かってるさ……ふっ」

「よーしこれからこの冒険の大きな謎に挑むぞー、と今にも言い出しそうな少年みたいな顔を昨日しておいてそれが信じられる訳が無いと思います。もう少し分かりにくい嘘を吐きましょう、先生」


 えっ、そんな顔されてました私。全く気が付かなんだ。む、無意識に凄い良い感じの冒険が出来るんじゃないかな、とかドキドキしてたのかな。いや、昨日は大分テンション上がって、なんか俺っぽくないしゃべり方してたのは否定できない。


「……恥ずっ……クソ恥ずい……そんな感情出しちゃってた……?」

「先生は顔に出やすいタイプなので、まぁそこ迄恥ずかしがることも無いかと」

「あぁ、うん。そうね。そう言われると何も言い返せませんけど」


 感情に出やすいタイプなんて、それこそ今まで何百度とそのセリフで俺が諫められたかと言う話ではあるが、タイミングとか、それが完全に嵌ってしまった結果物凄い勢いで恥ずかしくなって来ちゃった……


「……今はちょっと、あの、顔見ないで欲しい……」

「分かりました。そのまま赤くなっていても構いませんので、話だけは聞いてください」

「うん、そうします……うぅ……」

「取り敢えず、次のお話に関してはアイデアは出て居ますが、私個人の意見としては些か弱い、と思います」


 ……そう、かなぁ。


「ちゃんと、しっかり纏まってるとは思うんだけど……」

「えぇ。起承転結もしっかりしていますが、些か綺麗すぎる。先生お得意の邪道っぷりが薄くなっています。この前かいた話の影響が未だ残ってるんでしょうかねぇ」


 いやそんな話一つ書いただけで影響残ってたら小説書いてらんないよ。多分どうしても偽物の発言が気になってしまって、集中できてなかったんだろうな。


「まぁその理由についてはどうでも良いので……」

「どうでも良いんだ」

「はい。調子が悪かっただけでしょうし、話自体は悪くないので、修正すれば行けると思いますので。という事で推敲をしっかり繰り返してみましょう」


 うーん、推敲、推敲って言っても……しかし、下手に完成してしまってる所為でどうやって上手い事崩して、直せばいいのか……下手に一か所崩して、周りにも連鎖する可能性がある辺り、積み木と感覚は同じなのよな。


「どっから手を入れていくかっていう……」

「先ず狐のキャラをもうちょっと変えてみては? 何と言うか、空き巣では些かパンチに欠けるどころの話ではないかと思います」

「狐っていう名前だからなぁ。ケチな悪党って言うのが丁度良いんじゃないかな、と思ったんだけどね?」

「その発想は間違ってはいないと思うんですけど。葡萄ちゃんのキャラ付けは実に良いと思います。何時も仕事で忙しくて寂しくしている少女と、その家に忍び込もうとして出会ったコソ泥の物語……悪くはない、悪くはないです」


 ……言われてみれば確かに、いい感じには見えるけども、『悪くない』に収まる範囲なのかなぁ。


「でも、ウケそうではあるんだけどなぁ」

「ウケるだけで出してたら腕が落ちますよ。その作品に秘められているスペックを出来るだけ生かす様な練り方をしないと。今回で言えば、少女と言う葡萄と触れ合って少しずつ変わっていく狐の様なつまらない犯罪者。そのスペックを如何に生かせるか」

「キャラにパンチ力を持たせる……」

「つまらない犯罪者でも、パンチ力を生み出すのにも色々あります」

「それが空き巣ではいかんと言う訳か……となると犯罪の内容を……いやそう言う事じゃないな」


ただの空き巣って言うのが薄いって事か。犯罪の内容を変えてパンチが出ればそりゃあ苦労しねぇわ。単に罪の深さを重くしてもソイツがよりクズになっていくだけだ。そうなった理由だとかそう言うのが必要ってこった。


「うーん、やって見て思ったが。大分ボケてんな……それすら分からなくなってるか」

「それほどあの言葉が気になってたって事でしょう。まぁ、今はそれを気にせずに頑張って頂いて。これが終わればいくらでもお付き合いしますので」

「手伝ってくれんの?」

「出来る範囲で、ですけど。と言っても、私が手伝っても解決するとは思いませんが」


 何にも分かってないのが現状だからなぁ。如何に有能編集さんとはいえ、五里霧中の中では辣腕を発揮しようもない、って所かね……そこまで言われちゃ、こっちに集中するのが一番って所かな。


「で、どうすりゃあ良い感じの作品に仕立て直せるか……」

「ベタな所では、主人公の過去の深掘り、ヒロインも然りです。他には、状況に関して色々付け加えるとか?」

「パンチを利かせるのであれば、とんでもない濃い味付けになりそうですね」

「あぁ。話そのものを食っちまいかねないとか、笑い話ににもならんなぁ」


 コソ泥なんてやってる理由が、人生の全てを賭けてやって来たオカマバーが地上げ屋の陰謀によって崩壊して、文無しになったから、とかなったら大変だ。狐が九尾になって地上げ屋の娘を付け狙うオカマ狂気復讐劇になっちまう。


「……それはそれで面白そうか?」

「何となくですが、止めておいた方が宜しいかと」

「そうかぁ。一応聞いてくれる?」

「分かりましたけど……」


 ――で、案の定却下を喰らった訳だけど。濃いどころか吐き気を催すレベルで凄まじい味付けだそうです。ド正論。


「しかし、勢いとしてはそれくらいでちょうどいいかと思いますけど」

「となると……やっぱりオカマバー?」

「だからそれはいけません」

「でもそれ以上のインパクト思いつかないんですけども」

「先生の脳味噌には、インパクトと言えばそれしかないんですか」


 いや、ああいう所って、字面じゃ分からない位に、気の良い人も多くてさ。其処が潰れたとなると、結構衝撃的な出来事として描けるんじゃないかなと。旅行の時、泊めて貰ったバーのママ、マジで男前だったからなぁ。


「……ん?」

「どうされました?」

「いや……いや、そうだ。コレで行く。主人公の背景はオカマバーで決まりだ」

「えっ」


 えっ、じゃない。もう確定した事だ。良し、となれば、張りきって行くぞーっ!


アンデルセン先生ごめんなさい。


ぶつかっても、自分が謝る前に謝って来てくださって。凄い優しい人達だったと思います。

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