後はヨロシク!
――立て看板が、撤去されていく。その数に、ちょっとゾッとした俺が居る。多分全部重ねたら、余裕で俺の身長を抜くだろう。物凄い執念だと思いました。〇。
「見つかってたらマジで処させれてたんだなぁ俺ってば」
「先生であれば、多分あのドロップキックであの世行きかと思いますけど」
「それは言わないお約束」
くちゃくちゃになってお仕舞いだろうなぁ……まぁ今となっちゃ過去の出来事って奴だよ編集さん。俺の偽物はあえなくお縄になり、そして大手を振って、我々は街を歩けるようになる訳だ!
「変にループが始まる前に終わって良かった良かった!」
「あっさりとカタが付き過ぎた気がしないでも無いですけどね」
「……相手が、悪かったんだよ。流石に」
「全くもってそれはそうですが」
弾丸の如く吹っ飛んでいって、速攻ドロップキックとは、お釈迦様が見たら嘆きで風呂を満たすレベルの暴挙。完全に不意打ちだったよねアレ。
「しかし、凄まじいですね。アレで手加減している、というがやはり尋常ではない強さである事を証明している。やはり超人と形容するのは最適ですね」
「ま、俺達が王子の国の方々に見つかったらその超人の暴力にさらされるかもだけど」
「それは今考える事ではありません。取り敢えず、此方のピンチは潜り抜けたのですからループに突入するまでは、我々も平和にしてられるでしょう」
そーねぇ。いい加減、枕を高くして寝たいもんだよいい加減。今の半壊の砦にもようやく慣れて来たし。安眠できてなかったって訳じゃないけど。なんならグーグー寝るのが普通だったけど。アレ? 俺って案外図太い?
「いや、それはいいか今は。今は来る人魚姫だ」
「物語が始まるのは、人魚姫が王子の国を一旦立ち去ってから、一か月後」
「そう。だから、もうちょっと時間かかると思うんだけどさ」
っと、幾らこの隣国ではあんまり噂になってないとはいえ、往来で人魚姫のワードを出すのは宜しくないか……
「いったん帰る?」
「一応、彼がしっかり引っ立てられていくのを見ていきましょう」
「まぁ良いとは思うけどさ。ちょっと趣味悪くない?」
「私としては彼が確実にお縄になった所を見たいのですよ……またぞろ、先生が疑われてもたまったものではありませんので」
あの生アマゾネスが逃がす訳ないと思うんだけどもなぁ。アレから逃げおおせるとかそれこそ神様レベルじゃないと無理だろ。この世界の神様、つまり俺だな! ガハハ! まぁずぅっと犯罪者の濡れ衣着せられるのに怯え続けた無能な神様ですけれど。
「そんなに気になるなら、見に行くか……」
「さ、行きましょう。其処を通るそうなので」
「えっ、大通りを行くのか? 堂々と?」
ああいうのって、そんな堂々と連れてくるものなの?
「見せしめの意味もあると思いますけれど? 罪人には容赦をゼロと言うのは昔からの風習ですよ、っと来ましたよ?」
「噂をしてれば、って所か? ってうぉぉおおお……」
お、檻に車輪付けて転がしてる。スゲェ、大昔のギャグマンガ以外で初めて見たよ。何なら写真に撮りたいんだけど。資料として。まぁスマホも取材用のカメラも無いから無理ですけど……絵だったら書けるか?
「いや、それこそ羊皮紙構えてペン走らせてるとか変態の所業だよな。うん」
「……もしかして、資料として欲しいとか思ってます?」
「ホント良く分かるなぁ。でもコレは隠す事でも無いですし。寧ろ、俺としては堂々と誇れるくらいだよ。今現在も何かを描こうと色々思考してたんだから」
「資料でしたら私が集めますので、先生は書くのに集中して頂ければ」
「努力を認めるって事をしようじゃないの!」
互いを認め合うってとっても素晴らしい文化だと思いますよ多分ですけども!? 頑張ろうってしてる意思も、とてもとても大事だと思います!
「認めても宜しいですけど……」
「けどなにさ」
「私は、先生の書く事のサポートをするのが役割ですから。その仕事を奪われるというのはあまりにも哀しいので……ちょっと、勘弁を頂けると」
「うぅうううううううん怒るに怒れぬ事情っ!」
ちょっと可愛げ見せやがって! 仕方ない、ここは退いてやるから感謝城編集さんめ。次は手加減せぬからな! ……ところで俺は手加減せぬと言っても俺は何と戦ってるんだろうな。
「……しかし、檻の中に自分とそっくりの顔が居る……ゾッとしねぇなぁ」
「その割にはしっかりと見つめていらっしゃいますけど。気になりますか?」
「まぁなぁ。さっきは遠目から見てただけだし、しっかりと見ておきたいってのは間違いないと思うけど」
しかしビックリするほどあの無表情の凄い事。表情筋が完全に仕事を放棄してやがる。不満の色の一つでも浮かべてみて欲しいんだけどなぁ。じゃないと、若干、なんだろう不気味にすら見えるという……ん?
「――」
「……!」
目が合った、な今。こっちを見てる……でも、驚いた、って風じゃない。万が一他人なら俺の顔見て驚いたりするかも、とか思ったけど。それも無し。寧ろずっと俺から視線を離さないと来た。知り合いか? あんなそっくり顔の知り合い、当然いないけど。
「やっぱ整形でもしたのか? でもホント、その動機だけがなぁ……」
こんな穴開くくらい、こっち見られる覚えないんだけど。恨みの覚えも無し、そもそもここに送り込んだ張本人だとしたら、こんな回りくどい事をなんでしたのかっていう。
「――」
「何見てんだか。俺はお前に覚えないぞ。偽物野郎」
「―― ―― ―― ――」
「……あん? なんだ、アイツ……」
表情が……違う、口を動かしてるんだ。なんか言ってる? でも、聞こえない……聞こえない? 本当か? なんか、分かる気がする。なんて言ってるか……
『これからも頼むぜ、上手くやってくれや』
「――!!」
……聞こえた? いや、なんだ。今の。分かった、って感じだった。
これからも、頼む? なんだ、何の話だ……?
「先生? どうかされましたか?」
「……いや、何でもない……行こう」
なんだったんだ。今の。なんで口パクで言ってる事が。俺、読心術とか使えないんだぞ。なのに……自分が言った事みたいに、頭の中に浮かんできたんだぞ。
アンデルセン先生ごめんなさい。
無節操に意味深な発言をばら撒いていく




