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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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最後の一撃は、容赦ない。

「声が聞こえてきたのはこっちだったと思いますけど」

「見学しなくて良くない別に」

「良いじゃないですか。偽物が確保される瞬間に立ち会うのは、物語の王道ですよ」


 そうかなぁ。王道なのかなぁ。王道って言うか、流れ的に偽物と本物とが一遍は顔を合わせないと、っていう都合だと思うし……会わなくていいなら、それで済む話だと思うんだけどなぁ。っと、あそこか。なんかの店の前か?


「――おえーっ! 急げっ! 逃がすなっ!」

「チクショウすばしっこい……! 捕まえなくていい! 取り合えず、この町から出すんじゃないぞ! お城の皆さまが到着するまで時間を稼げばそれで勝ちだ!」

「……!」


 ……凄い囲まれてる。この時代、そしてこのヨーロッパ的な雰囲気に似合わぬさすまた担いで、むつけき男共が追っかけ祭り。あの中に揉まれたら多分、薄幸の美少年が筋肉モヒカンになって出てきそう。そして初めて見たけど……


「そっくりだな。アレ」

「そっくりですね」


 さっきから、周辺のさすまたをスルスルと躱すアイツ……いやぁ、マジで顔が。完璧に俺そのものなの。何となく三下臭のする顔。小柄な体格も俺っぽいというか。俺そのものだな見かけ。まぁそれ以外は欠片も似てないけども。


「あんなに機敏に逃げられない気がする。というか、間違いなくもう掴まっていけにえにされてるまである」

「そもそも逃げるとかそれ以前に、やらないじゃないですか。ビビって」

「それはそう……ってアンタも言うか俺をチキンと」

「まぁ、そこまで度胸がある訳でも無いですし。間違ってます?」

「間違って……ま……せんけど、多分だけど。度胸がタップリあるとは言い切れんけど」

「じゃあ良いですよね?」


 良い訳ないだろうが! と言いたいけども……今は、今はそれを議論してる場合でもないか。兎も角。


「アレでずっと足止めされてたら、流石に捕まるんじゃねぇかな」

「三度目の正直とばかり凄い勢いですね。どこぞのアルセーヌの孫を追いかける日本警察バリと言えば丁度宜しいのでしょうか……」

「大捕り物と言えば良いんじゃないかなと思ったんだけども」


 しかし、おぉっ。また上手い事躱した。本当に身のこなし凄いなぁ。軽業師って感じがする。そしてますます俺と似ていないな此奴。俺こんな身のこなし軽くないもんぶっちゃけた話。あの動きしようとしたら三秒も持たず疲れ切っちゃうもん。


「先生、秒速で倒れますね。あんな動きしてたら。やはり別人です」

「それはそうなんだけども、あの……それを言う必要ある?」

「ありますよ。万が一自分に似てるからと、貴方が勘違いしかねませんし。自分も出来るんじゃないかって」


 いや、そんな事欠片も考えませんから大丈夫ですよ……いや、もしかしたら自分と同じ骨格だし、極めれば、案外行けるのかな、とか思っちゃったのは確かだけどもさ。


「――しかし、凄いクールと言うか。ピクリともしないなアイツの顔」

「えぇ。表情豊かな先生とは全然違います。可愛げと言うものがありません」

「俺に可愛げを求めてたのアンタ」

「そりゃあずっとお付き合いして来ましたから。求めずとも可愛げと言うものを見出しますよ私の全力を持って」

「えっ、全力をもって見出したの……なんで……?」


 俺小説家よ? 可愛げを必要としてる人じゃないんだけど? ま、まぁそれが編集さんのご趣味だって言うなら別にかまわないんだけどさ。こんな見た目微妙な男に何を期待してるんだろうこの人。


「ま、まぁそれは兎も角……もう掴まるかと思ったら、そう簡単に捕まらないな」

「そりゃあ、今まで捕まらなかった泥棒ですし?」

「まぁなぁ。っていうか、どういう鍛え方したらあんな動き出来るんだ」


 なんで俺らにここまで拘るのかとか、聞きたい事はまぁ色々あるけども。今一番気になるのは其処だよ。


「――あ、でもそろそろ終わりますね」

「え、終わるの?」

「終わります。だって、ほらアレ」


 えっと? あ、ホントだ。コレはもう終わるな。凄い勢いで、ガッチャガチャ音がしてるし、そして何なら甲高いヒールが地面を貫通する……よく考えたらヒールが地面を貫通する音って何なんだろう。


「――姫様! 居ました!」

「どっちです!」

「奥です! 奥! 男共が群がってる方! 間違えないで下さいよ!」


 うん。間違えられたら俺、石畳の血のシミになるから……って、オイ! それはアイツも同じじゃねぇの!? ヤベェこの先グロ注意じゃん、ちょ、離れよ。やだやだ。自分とそっくりさんのトマト染みた姿とか見たくない!!!! トラウマになる!!!!


「も、もういいでしょ? 帰ろう?」

「良いんですか? 捕まる瞬間見なくて?」

「その前に一生のトラウマを見ると思うのでいいです!」

「……いや、先生の想像してるような事態にはならないと思いますけど。彼が惨たらしく死ぬと思ってるんじゃないですか?」

「そ、そりゃあそうだろうよ!」

「冷静に考えてください。彼は泥棒を働いたんですよ? 盗んだ物の在り処、吐き出させるまでそんな事する訳ないでしょう」


 ……あ。


「腐っても、いろんな方から慕われるお姫様ですよ? ご自分で考えたキャラクターを何だと思ってらっしゃるんですか? 穏便に終わらせると思いますよ?」

「すいません……」


 先走ったイメージで自分が丹精込めて作ったキャラクター見誤ってちゃ、作者なんてちゃんちゃらおかしいわな。うん。その辺りはちゃんと頭働いてなかったとしか。とか思ってる間に、おぉ、姫様が! 駆けだして、地面を蹴って、跳んで……アレ?


「――ぶっ飛びなさい!」

「……っ!?」


 ドロップキックで目の前のお店内に軽くけり込んだあああああああっ!? ま、窓がっ! 壁とかもっ! 店内も多分滅茶苦茶だよ! 酷いっ!?


「ふぅっ、原型を残して生きている程度に手加減はしました……お前たち」

「はっ! 確保に動きます!」

「店には迷惑をかけた分、たんまりと礼を」

「承知いたしましたっ!」


 ……うーん。


「穏便に終わらせる、かぁ」

「半分は合ってたと思いますよ? 多分ですけど」

「そうかなぁ」


アンデルセン先生ごめんなさい。


倒すのはホント一瞬にしたかったんです。

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