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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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君は泥棒なんて出来ないチキン

……街道での座り込み、極意その一。というかヒッチハイクの経験の流用その一。声をかける車、及び人はしっかり見る事。例えば、車にしても、後ろにしっかりスペースのある様な軽トラ、みたいな車は割と通ってくれるので、主にそこを狙うとか。


「スペースが有るのと無いのとじゃ、話も変わってくるからなぁ……乗用車に道端に座ってる人をそう簡単に乗せる気にはならないしなぁ」


 今は車じゃなくて、人を見る事になるけども。しかし俺、人を見る目はそこまで無いんだけどなぁ。それでもしっかり声をかける人を選ばないといけない。


「……」


 とか思っても、そもそもここ、街道をだーれも通らないと全く意味が無いと思うんですけども……俺ってもう日差しの下に何時間座り込んでるんだろうか、と。いや、何時間って言うのは大げさだけど。


「体感そんなもんだよなぁ……」


 町の近く、ギリギリの辺りの街道に座り込んで、誰かに話を聞こうかとか考えてた訳だけど。アレ? そもそも俺みたいな奴の話、誰が聞くんだろう?


「ヒッチハイクって、そもそも、車に乗せて貰って助けてもらうっていう、大義名分があるからこそ成立する行為だよな。ただこんな格好のしてる道端の人から話しかけられてもみんな逃げるまであるんじゃないか?」


 いやそうならないように人を選んでだな……あれっ? 結局最初の議論に戻って来てないか? っていうか、この思考の堂々巡りももう何度目だ俺。まぁ良い暇つぶしになって良いけども。


「――何を言っても、結局ここで待つしかない訳だけど……?」


 おや? 向こうから……馬車かアレ。っていうか、あの御者の人は、忘れもしないぜ。商人さんじゃないか!


「はーっ、全く。とんでもないなぁ。世界にはそっくりな人間が何人も居るとか聞くけども、本当にそれを体感するとは」

「――もうし」

「うぉおおおおおおおっ!?」


 ……そんなビビりあがる事ないじゃない。いやまぁ恰好からして色々危険な香りがするのは否めませんけども。


「って、お前さんは……それを羽織ってるって事は、弟さんかい」

「どうも。商売、上手く行ってますかい? お兄さん」

「あー、まぁボチボチだよ。それで君の方は、まぁ色々大変そうだねぇ」

「そりゃあこの格好見て貰えればお察し願えるかと思いますよ」


 実はここに来てからと言うもの、余計にこのぼろ布が汚れてしまって。前までは見かけだけの汚れだったのが、いよいよガチの汚れになって、言い訳のしようも無く浮浪者になってるんだよなぁ。


「いや、そういう意味じゃなくて……」

「意味じゃなくて?」

「――居るじゃないか、君の偽物らしいのが。ここら辺に」


 あー成程そういう感じで俺が凄い苦労を背負ってる方向で……っすぅぅううう……あの、ちょっと待ってくれないかな。お兄さん。


「……えっと」

「世界には自分と似た人間が数人は居るって話を、初めて信じる気になったよ」

「それは、あの。一体何方で? というか、何故俺のそっくりさん、だと?」

「来たんだよ、俺の所にも。君のそっくりさん」


 ……はいぃいいいいいいいっ!?


「き、来たぁ!?」

「噂には、色々と盗みを働く悪党って言ってたから、俺の所の商品が欲しくなったんだろうと思うけども。いやぁー来た時点で君じゃないと分かったよね」

「あ、そうなんですか……も、もしかして――」


 俺の事信頼してくれて、こんな事をする様な、悪い奴じゃないとか思ってくれたとか! だとすれば、コレは心にズシンと響きますよ! ちょっとの間だけしか一緒に居なかったのに、この人は慧眼だったんだ!


「いやぁ、君が盗みとか言う大それたことするような度胸があるとは露程も考えられなかったからねぇ。君、姉離れも出来ないようなチキンだし」

「おう信じてくれてありがとうなぁぁあああ戦争するかぃいいいいいい!?」


 他人に向かってチキン発言という侮辱、到底許してはおけぬ! 我が一撃にて、その悪意に満ちた口、粉砕してくれようぞ!


「むっきゅいいいいいいいいっ! うほっ! ほっ! ごおおおおおっ!」

「落ち着け坊や、ちょっと興奮しすぎだ。どうどう」

「馬じゃねぇってんだこのド阿呆! 許さん! 絶対に、その発言を、泥水で口を漱いでから訂正させてやるっ!」

「分かった分かった。チキン発言は謝るからよ」


 ふーっ! ふーっ! ……っふぅうううううううう……良し分かった。落ち着こう。流石に余りにも興奮しすぎだ俺。確かに、チキンと言われて大分カチンと来ちゃったけどもね。先ず話を聞く事を優先すべし。


「……そ、その盗人とやら、本当にアンタの所に来たのか」

「そりゃあ俺だって、ここの辺りでデカイ商いしてる商人さんだからな。そこそこの財は貯えてる。そこらの店よりは、真っ先に狙われたって不思議じゃあない」

「そんなもんか……?」

「そうそう。で、アンタの偽物っぽい奴は、俺の馬車にこっそり乗り込んで、いくらか金を奪っていったよ。入った所も全く見えなかったし、相当腕のいい泥棒だったなぁ。そういう所を考えても君じゃないと思うんだよなぁ」


 その発言にも悪意があるなさては???


「まぁ、兎も角、この国からはさっさと立ち去った方が良い。あそこまで似てたら言い訳も聞かずにお縄も確定って奴だからな」

「そんなに似てたのか? 本物を見た事がないから、分からんのだが」

「あぁ。似てる似てない、の話じゃ無くてなぁ。ホントに、髪型から何まで、君そのものだったよ」


 ……俺そのもの、か。


「何から何まで、瓜二つってか?」

「あぁ。見かけだけならあれは……()()()()()()()()()()、アレは」


アンデルセン先生ごめんなさい。


犯罪も出来ない位気が弱いというのは、いっそ長所な気も。

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