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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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ヒッチハイク先生

「――仕上がり、お見事です」

「あーでもこれだけの数仕上げるのに大分疲れちゃったなぁああああああゴメン今日はお休みって事で宜しいかなぁアアアアアアア!?」

「えぇ。構いませんよ。休んだ分明日からの調査には身が入ると思いますので」


 ふっ、ふぅうううううううん!? そっ、ソウダネ! きっとそうだとも! ふひひひ大丈夫だよ編集さんオイラに任しておいてちょーだい、ちょちょっと、ね!? 終わらせて来るから!


「どうなさったんですか? そんなに超高速で口パクなんかされて」

「ナンデモナイヨーワタシーベリーベリーNormalネ~」

「どうして途中で流暢な英語になってるんですか」


 俺にも分からない。俺がどうしたいのか。もう完全に単独行動に体が怯えてるんだよマジで……旅行の時だって、俺が真っ先に探すのは現地での協力者だもん! 完全に一人でサバイバルなんて一回も無いわ!


「もしかして、怖いとか?」

「えぇとてもとてもねぇ!?」

「そうですか。怖いですか……それは大変良かったです」

「オー無表情で随分な事をおっしゃるさては俺の事が嫌いですね?」

「何度も言うようですが、嫌いだったらここまでサポートしてません。それに、初めてやる事を怖がらない方がマズいです。それは、過度に自信が溢れてしまっている何よりの証拠ですから。ちょっと怖がるくらいが、失敗しなくて丁度いい」


 ……そう言われると何も言い返せねぇ。


「大丈夫です。きっとうまく行きますよ」

「で、でもさぁ……俺、別にトークが上手い訳でもないよ? 人探しなんてした事もないし……どうしろってんだ」

「緊急事態で突っ込む度胸だけは『いきなり海外』で磨かれているでしょう?」

「まぁ、それは……って待って、その『いきなり海外』という呼び名れた呼称が物凄く気になるんだけど?????」


 もしかしてさ、あのいきなり海外に送り込まれて取材するとかいうあのトンチキ、編集さんの独断じゃなくて誰かと一緒に企画してた的な事ないよね?


「それを活かしましょう」

「い、生かすって言ったってなぁ……!?」

「大丈夫ですよ。アメリカの田舎とかいう、変な辺境より明らかにどうしようもない場所に送り込んでも普通にヒッチハイクなど駆使して帰って来た先生ですよ?」

「アレはっ! どうしようもなく! 仕方なく! 地獄を見ながら! 口に脂っこいハンバーガーとか押し込まれながら! 地獄を! 見つつ! ズリズリと必死にアメリカの国際空港までたどり着いたんだよ! リックおじさん! 助かりましたありがとう!」


 二人、暴走した豚の群れを突っ切って国道を走り抜けたあの時は忘れません! リックさんの奇跡的な投げ縄捌きは私の瞳に未だしっかり焼き付いておりますが故! あの経験は生かしていきたいです!


「……ダメだ、経験と言っても豚の群れを泳ぎ切った覚えしかない……っ!」

「何という謎経験。それ初めて聞いた時、私「この人何言ってるんだろう」と思ってしまいました。本当に。事実確認とれてしまった時は衝撃的でした」

「リックおじさんと最近会って無いなぁ……どうしてるかなぁ……」

「ハンバーガー、そんなに美味しかったんです?」

「特別美味い、っていう訳でも無かったんだけど、凄い癖になる味だったんだよね」


 なんか含まれてるか? って恐る恐る聞いた時、『目分量でやってるから、俺の経験値がたっぷり詰まってるな』って豪快に笑った時に、仲良くなれた気がしたのは、未だ記憶に新鮮ですよ。凄いお洒落な言い回しだったから真似したくなっちゃった。


「その辺りを考えて思い出してみると、一人で聞き込む位はそんな大した事も無いかもしれない?」

「そうですよ。頑張りましょう先生。ファイト、ファイト」

「お、おう……応援して貰えてありがたいけども、素直によっしゃ頑張るか、とはなぁ」


 ……でも、こうやって意識がちょっと変わってる時に、向かった方がいいんだろうね。っし、ここだ。ここしかないんだ。覚悟決めて立ち上がれ俺! はぁぁああああ……おおおっしゃああああっ!


「やるぞっ! 明日から!」

「今日休むのは確定なんですね」

「メッチャ疲れてるから無理……無理……限界……」


 俺の脳味噌にお休みをください。お願いします。もう今日はこれ以上は考えたくありません何も。許して。




「で結局今日になってしまったか……さて」


 何かしらプランでもあるのか? この状況、何の考えも無しで行動しても何の成果も得られないのは確実。ならば、其処に踏み込んでいく俺に、果たして、成果を出せるようなしっかりとしたプランを、経験則から導き出せているのか!?


「ある訳ねぇんだよなぁそんなもん……寝こけながら頭が少しでもスッキリしてくれりゃあ儲けものだと思ってけども、全く閃きもしないっていう」


 だって俺の経験則って、なんかプランを立てる方向じゃなくて、いきなり放り込まれた状況下から、ひーひー言いながらも脱出する……すなわちアドリブ方向に全部振り切ってんだもんな。


「つまり経験則を活かしたけりゃ、俺から危機に飛び込んでいくしかないっていう。あの人だってそれは重々承知してる筈だってのに……!」


 いや、承知済みの上で俺にやれって言うんだろうなぁ、あの人は……俺はむしろそうやって突っ込んだ方が無事に済む、とそう分かってるから、俺に寝る魔も惜しんで考えろとかは言わなかった。


「やる必要があるなら、自分も付き合って迄徹夜も辞さない人だ……その必要が無いのであれば、言わないって訳だ」


 いずれにせよ、俺は前のめりに突っ込むしかない事を分かっていたから……


「――そこ迄、読まれているなら。真正面から突っ込むのもまぁ、仕方ないか。あの人の考えに乗るようで、しゃくに触るっちゃそうだけども……それ以外に方法はないんだろうなぁ」


 で、それでどこに前のめりに突っ込むかって話になるが……


「……やっぱ、アメリカでの経験を活かすのであれば」


 アメリカ横断。その殆どを、たまたま通りかかったリックおじさんの車の上で過ごしたのは良い思い出。という事で、始めるならば、街道から。あらゆる道はローマに通ずる。だったら答えにも通じてるんじゃなかろうか。知らんけど。


「街道で座り込みか……本当に、アメリカ横断を思い出す」


アンデルセン先生ごめんなさい。


因みにアメリカでヒッチハイク、と言うのは当然ながらそう上手くはいかないようです。アメリカ旅行に行ってた友人が実体験したそうで。ホント遊び半分でやった事を後悔したそうです。

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