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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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獅子は我が子に容赦せず

考えてみりゃあすぐわかる事態だった。俺が王様を妨害した事でループ現象は起きてしまったのだ。本来の展開を大きく捻じ曲げるような事件は、この物語には許容されないのである。


「――展開を変えるのが許されないのであれば、私達が見所を作るのは?」

「それには大丈夫な理由がある。あくまであの二人を彩るエピソードに華を増やしているだけで、物語の大きな流れを崩すことは無い……『人魚姫と王子が出会い、しのぎを削り惹かれ合う』という大きな流れを」


 だが、今回は違う。


「二部の始まりは、平和だからこそ始まるんだ! 平和じゃなけりゃ始まらない!」

「平和でなくても始まるのでは?」

「いや、ダメなんだ。平和でいた隣国に人魚姫という異物が乗り込んで来たからこそ、彼女はより際立って目立ち、騒動の中心になった……元から事件が起きていたなら、彼女は埋没して、目立たなくなる」

「なんでそう言えるのですか?」

「人魚姫そのものは悪人じゃないからだよ。彼女は、紛れも無い善人だ」


 平和である時は、いかに彼女が善人であっても、その力とオーラは必ずや周りに何かしらを生む。だが、既に混沌である時は?


「それは大して意味を持たない……どうしてか? 自分の身近な危機に目を奪われているからさ」

「……だんだん分かってきました。かの犯罪者がここに居座る限り、目立つのは」

「そう。俺の偽物の方だ。人魚姫は、ここに普通の人として紛れる事が出来る」


 下手すれば、その偽物を追いかけて捕まえる、なんて展開にもなりかねない。それは彼女が、力の強い超人で、自信のある、善人だからだ。悪を見つければ、捕まえようという気にもなるかもしれない。


「下手すれば」

「隣国の姫と協力して、そもそも敵対関係にならない」

「親友になったりしたら洒落にもならない。王子を巡ってのバトルが、学園モノの様な友人に遠慮したり、親友と恋人の間で揺れる、暗い展開になりかねない」


 そうならないように、俺は色々と工夫を凝らしていたというのに! だ! 恋愛モノって色々と感情がドロドロとしかねないから、カラッと晴天の如く素揚げにするのに結構苦労するんだよ!


「最悪の場合、超人三人が殴り合い一つもせず、昼ドラ展開だよ! そんなん流石に見たくないだろう!?」

「――先生がそれを書いてたら、ちょっと泣きますね私」

「あっ、そこまでになっちゃう?」


 そんな似合わないか、いや似合わないな絶対。クラシックと違って書けない訳じゃないし結構そう言うの書くの楽しいけども。でも絶対似合わない。似合う訳がない。


「まぁ、それは兎も角その展開は、この物語には絶対似合わないのは間違いない。それだけは阻止しないと、またぞろ出口のない時間に放り込まれる」

「じゃあ犯人探しに全力を注ぐという事で?」

「そうだ。その上でお姫様に見つからないようにしないとだけど!」

「見つかったらこっちが見つかる前にボロカスにされるからですね。」


 そう! ミイラ取りが、その同業者にゴミクズにされるとか言う本末転倒超えて天地逆転まであり得るとんでもない展開が。そうならない為にも、見つからずに見つけるっていう都合の良いやり方を模索しないといけない。


「……と言ってもどうすりゃあいいのか」

「――要するに、姫の目を他所に向けて、その間に見つける、という事ですよね? であればとっても簡単なやり方がありますよ」

「おぉおおおおおおおおっ! そんなやり方が!?」

「えぇ。寧ろなんで先生がも思いつかないのか、誰でも思いつきますよ」


 そっ、そんなに簡単な方法!? 嘘だ、俺全然頭にも思い浮かばないんだけど。なんか見落としてる……?


「先ず、私が町で仕事をして目立つ……まぁ目立てるかは先生のお仕事次第ですが」

「うんうん……うん?」

「その間、私に視線が行くわけですから……多少先生が動いても全然目立たない訳ですよ。勿論、顔は隠して頂きますけど」

「そ、そりゃあそうだな。うん」


 うーん、なんだろうね。この時点で吐き気がする位、とても嫌な予感がするのよな。俺の予想が間違って無ければ、だけども。


「――それで? 結論を言うと?」

「先ず先生が作品を書いて、それを私が発表する……のはもう何時もの同じ流れではあります。その辺りはまぁ、お分かりだと思いますけど」

「はい」

「その間、先生には独自行動をして頂く事になります」

「ほーん? 俺は何をすれば良いんでしょうかねお嬢さん」

「独自にかの偽物……犯人を追って頂ければと」

「おう小説家に無茶言ってくれんねぇ!?」


 やっぱ俺に単独行動しろってか! しかも犯人を追っかけろと申すか! あのねぇ、期待に沿えなくて申し訳ないんですけども、俺探偵でも無ければ、サツでも無く、身体能力はナメクジレベルなんだよ!


「お、俺には無理ですよ! そんな、編集さんのサポートも無しに、国を騒がせる凶悪犯を追いかけろとか!」

「何時でも私がサポートできる訳でも無いですし、いい機会です。ここでお一人で行動するのを覚えて頂かないと。という事で」


 くっ、そ、それは……ここに来るまで、現代に居た時も編集さんには色々お世話になって居る訳でして! そ、その習慣をここで直しに来ると!? しかもそんな厳しいミッションも一緒に課して!?


「獅子は我が子を谷底へダンクシュートすると申しますし」

「そんな鬼の様なことわざあります!? そんな事したら多分死ぬまでありますよ我が子! そして俺は我が子じゃないと思うんですけども!?」

「手のかかり様は我が事同等ですから……兎も角」


 うぉっ! 顔近い顔近い! 止めて! 見つめないで!


「やってください」

「い、いやでもな……」

「いっぺんやったでしょう。浮浪者の時」

「いや、確かに単独行動ではありますけども! でもアレだって、直ぐに編集さんが合流してくれる前提で……!」

「頑張ってください。先生。信 じ て い ま す」


 こ、こんなにときめかない女の子からの『信じてます』発言初めてだよ!


アンデルセン先生ごめんなさい。


編集さん=獅子 先生=我が子

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