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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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この世界は生きている

 ……何処まで行っても、緑と茶色。前回と違うのは、目的地が俺にはサッパリと分かっていない事と、編集さんに付いていくしかない事。そこで、疑問に思う事が当然ながらある訳で。


「……遭難、しないよね? 流石に」

「いえ、普通にすると思いますよ。特に場所が特定できていた訳でもないので……この辺りにありますよっていう感じの証言を元にしてこっちに来てる訳ですし」

「いやぁ大分ふわふわではそれ!? 良く突っ込もうと思ったなその証言で!?」


 俺そんな危機一髪の状況下の中呑気に森でハイキングしてたって訳か! 迂闊さで舌髪切りそうになるね!!!!!! 怒りとかで!!!!!!!


「編集さんもさ! もうちょっと! 冷静さを崩して! ちょっと焦るとかして見せてください! そうじゃないと危機が分からないから!」

「危機の時こそ冷静に、かつ慎重に事を進めないといけませんよ先生」

「あぁそうかい!」


 くっ、ダメだ。この人にもうちょっと焦って、とかいう発言をする事が間違いだ。焦らないし、普通なら焦りそうな状況でも、それだったらダメってよく分かってるから絶対に焦らない! 頼もしいけど! けど! なんか! 納得いかん!


「大丈夫ですよ。本当に大変なのは、この後の荷物の運び込みですから」

「そうなんだよなぁ、こっからさらに荷物を運び込むんだよなぁ……」

「体力限界、ふらつく視界、逃す目印」

「そして森の中での遭難」

「正解」

「黙って歩いてくれませんかねぇ!? もういいですから!」


 チクショウ、喋ったら喋ったでこれだっ! そして森の中での遭難、じゃないわ! その最悪の展開を軽く正解にしちゃダメなんだよ! 他人のね、感情ってもんをもうちょっと理解しろとは、もう何度目か。


「……せめて森林浴してると思って、心を落ち着けないとなぁ」

「ところで、特定のキノコが生えている森って、死体が多いと聞いた事があります。この森、それと似たようなキノコが一杯ありますね」

「心を落ち着かせたくないと!?」

「いつも心には一抹の緊張感を。ですよ、先生」


 確かにそれは悪い事ではないと思うけど、強制するような事でも無いと思うんだよなぁ私は! ね! 編集さん!


「とはいえ二本目の河も、先程超えましたし。そろそろ見えてきても不思議ではないと思うのですが……もしかして完全に風化しきりましたかね」

「だとすれば俺達そんな建物を目指して、ここまで危ない道のりを歩いてきたことになるんだけども? どうすんの? 編集さんは責任取る必要一切ないけども、でも俺は無責任にも文句言うよ?」

「いいですよ? それで気が済むのであれば幾らでも」


 はい。何も言わないでおきます。間違いなく気も済まないし、虚しくなるだけだと思うので……しかし、これで見つからなかったら、またやり直し、って事になるのか。他に情報とかは仕入れてないのかなぁ。


「――考えても仕方ないか。今は……」

「はい。目の前の事に集中してください。見えてきましたよ」

「そうか見えて来たか……えっ? 見えてきたの!?」


 そ、そうか! 迷わず辿り着けたかっ! 助かった……! って。


「……アレぇ?」

「その様ですね。そして予想以上にボロいですねアレは。よく無事にここまで形を保っている物です」

「いや、ボロいっていうか、完全に建築途中じゃないのアレ」


 半分くらい、いや、多分想像だけども。そっくりそのままないよ? マジで砦っていうより遺跡っていう方が正しい感じだよアレは。俺さぁ、前の砦の小ぢんまりした感じの奴を想像してたけど……


「ほぼ野宿じゃないのあそこに泊まるって」

「一応壁も天井もありますし。野宿よりはマシかと思いますよ。多分ですけど」

「そう、かなぁ……?」


 ……うん。そう思う事にしよう。まぁ一切雨風を凌げないって訳じゃなさそうだし。小さいけど、部屋も見えるし。其処に泊まれば、まぁ。


「しかし、全部入るか? 荷物」

「もともと殆ど今使ってる廃墟のスペース使ってませんし、入るでしょう、流石に」

「そっか。じゃあすいません、ちょっと内検させて頂きますねーっと……うっわ、扉がぎっしぎし音立ててるんだけど、コレ立て付けヤバくね? ちょっとした嵐でバキンって綺麗に夜空の向こうに吹っ飛んでいかない?」

「そりゃあ年季入ってる所の騒ぎではありませんし」

「年季どころか廃墟だからね、と……その他には?」


取り敢えず内検ジョークは軽くここまでにしておいて内部のチェック。壁は如何でしょうか……あれ、言う程壁はボロボロでもない。寧ろ結構しっかりしてるな。廃墟っていうのはあんまり似合わないっていうか。もしかしてこれって……


「結構良さげ? さてはですけど」

「見た目の崩壊っぷりに比べると内面は綺麗な物ですね。戦い抜いて放棄したっていう感じじゃない気がします」

「……まさか本当に建築途中で逃げ出した系?」

「それだったら左半分だけが無いって中々の建築途中っぷりですね」


 そうだよなぁ。基本的に上に積み重ねていく所、左右の半分が無いって中々の歌舞伎っぷりだよなぁ……中世ってもうプラモデル式の建築あったっけ? いや、それはないよなぁ流石に。


「でも右は綺麗なんだよなぁ。左だけ、ド派手に破壊されたとか、なのかなぁ」

「どういう戦い方ですか?」

「……どういうっていうか、いや。ああいう王子が居る事を考えると昔の王様って、もしかして……的な、感覚が」


 ……血族だと考えると、可笑しくないんだよなぁ。あれっ? この世界を設立したのは俺なのに、なんかアタシの想像もしない所から生えて来てるんだけど、謎の設定が。うーん世界が活きている事を実感する。


「とすると元・王様のパンチ一発で?」

「可能性はあるわなぁ……とするとこえぇなここ。そんな嵐が暴れて行った跡だよ。想像するだに怖すぎるわ」


 壊れた壁を見る度に、背筋がゾッと冷えて……いやぁ、ぐっすりと眠れるかなぁ、なんか巨大な拳がすっ飛んで来る悪夢を見る気がする。


アンデルセン先生ごめんなさい。


王子がああなら、王様も元はそうかもしれないっていう。

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