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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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創造主の強み

『――私はどうすれば?』

「急いで持ち場にだな……」

「ち、チクショウが! 人魚姫相手に兵士なんて真面な戦いになる訳ないだろうが!」


 ――落ち着け俺。ここは下手に抵抗して逃げようとしたりすると首チョンパにござる。先ずは逃げる為の状況づくり! 先ずは王子の処理! 此奴が居たら、即トマトピューレコースじゃ……!


「なんだと!?」

「はっ! 今の音を聞かなかったのか!? 人魚の姫の蹴りと言ったらなぁ、そりゃあ一気怒涛で防げぬ者無しの剛の拳! 一蹴りで海を縦に割る、正に海の王者に相応しきお人だぜ! 適うものと言えば……王国でもただ一人じゃねぇのかい!?」


 良し良し、こっちに意識が向いたな? はっ、知ってるぜ王子……お前は、強者としての戦いを何時だって望んでいる。取り組むチャンスがあるならば、言い訳があるなら! お前は喜々として向かうはずだぞ……っ!


「――ほぅ?」

「貴様っ! 我らを愚弄する気か!?」

「愚弄してんのはそちらの方じゃねぇのか?! 大海原に吹きすさぶ暴風、相手するのに木っ端の兵だけとは、それこそ人魚姫の顔に泥塗ってるようなもんだろうが!」

 

 お前の親よりもお前の事を良く知ってるんだ。何せ一応創造主だからなぁ!? 俺様! お前のケツのあざの数まで知ってるんだよ! 因みに一個も無いけどな!


「おのれ言わせておけば好き勝手!」

「――いや、一理あるかもしれん」

「って王子!」

「奴の実力は分かり切っていた。だというのに、戦力を小出しにしてぶつけるなど王者の戦い方ではない……真っ向からぶつかり合い、これに勝利してこそだろう」


 ふはははは! やはり乗って来たな愚か者め! そうだ、そのままここから立ち去れ! お前が居なくなれば兵士の一人や二人位なら……! って、なんで窓の方に向いてるんだこの人。


「このまま行く。兵士たちに手を出さぬように釘を刺してくれ」

「……承知いたしました」


 えっ?


「ぬぅううん!」

「っ!?」


 と、飛んだっ!? 窓を開け放って! まるで鷹の如く、広く広く腕を広げて飛び立っただと!? うわくっそ、カッコいい、しかも華麗に過ぎる……! こんな風に映えるシーン入れたかったけどなぁ!


「――全く、王子もお戯れが過ぎる……仕方ない、おいお前。私も王子に続かねばならん。くれぐれもそいつを逃がすなよ」

『……承知しました』


 うーん流石の編集さんも呆然としていらっしゃるようであいたたたたたハイそんな事無かったね思いっきり縄引っ張りやがって動じない鬼みたいな編集がよぉ……っ!


『さ、行きますよ先生。ループを無事突破できたのですから。こんな所に居て無様に処刑される必要も無いでしょう』

「だからってお前そんな勢いで引っ張るな中身出る出ちゃうから! ダメッ! 無理ッ!」

『出るような中身も無いでしょうか大丈夫ですよ』

「さては俺がガリガリだと申すか貴様!」


 おのれ、現代人の栄養価の高さ舐めるなよ。少なくともこの時代の人よりはメッチャ油乗ってるわ! そうは見えないかもしれないけれども!


「……というか、そろそろ兜外したら?」

『お城から出るまでこのままですのでダメです』

「えっ!? このまま羞恥プレイ続けんの!? というか、待て、そっちか? 順路そっちで本当に合ってるのか!? まて、止せ、ストォップ!」


 嘘だろジョージィ……





「……誰も彼もに囚人扱いされるのがホント、ホントに」

「ふぅっ……そのお陰で無事に抜けられたのですから、いいではないですか。色々と手に入りましたし。この果物とか……」

「良かないやい! バーカバーカ!」


 無事に脱出出来たとはいえ、クッソ本当にこの女ぁ……ええい何時までもグチグチ言ってても仕方ない! 謎ループ現象からは、流れとはいえ抜け出せたわけだけど、結局は何が脱出の条件なのかも分からんかった!


「……しかし、さっきは余裕なかったけど、今になって思い出した。人魚姫が誤解を解きに城に来たらその城に居た王子と、視線が交錯して……あーそうだそうだ。何回もリテイク食らった場所だよ」

「二十くらいだったかと」

「覚えてんじゃないわよ!」


 別に言えって言ってんじゃないわ、嫌味で言ってんだよ! ホントに大変だったんだぞって、マジでもうちょっと手を抜けよって言ってんだよ!


「色々提案したけど、結局視線を交わすだけになったしさ……」

「そうですね。それが一番自然かつ、くどくないと判断したので」

「これには原作者も思わず怒りのドストレート」

「婦女暴行罪で豚箱行きですね」


 ……くそっ! 俺の負けだ。この話は此処までしないと俺が完全に不利。おのれ社会的地位は向こうが圧倒的に上なのが本当に悔しい。ああいや……じゃなくて! 城から脱出できたんだ! まず考えるのは一つ! 


「俺達がこれからどうするかを考えないと」

「書いてください」

「一呼吸置かせろ馬鹿野郎が!」


 こう、どうとは? に続いて現状を、こう、良い感じに整理する、そんな会話を想定して喋りだしたら一刀両断とか! つーか今は書く以外にやることあるだろ!


「兎に角書いてください。物語を。先生はそれ以外できないでしょう」

「あのな。書けって言ったって、ペンも、紙も無いってのに……」

「今は口伝で構いませんので。さっさと話しを考えて。アイデア、プロット、なんでもいいです。貴方が覚えられなくても私が覚えますので」

「好き勝手言うなお前ェオォッ!?」


 頭で考えた事を口で整理して伝えろってか! 小説家を何だと思ってんだこの人!


「まずこの世界でどうやって生き抜くかを考えるのが……」

「その結果です」

「なんでやぁ!? 先ず働き口というか、そう言うモノを探すのがだなぁ」

「私たちのような、現地の生活に全く疎い素人を誰が雇うのでしょうか」

「うっ……」


 いや、まぁ、そりゃあ、そうだけども。


「故に、ここの生活に合わせたら負けです。私たちの強みを押し付けて金を巻き上げねば生活とてままならないのです」

「お前なんかやり手商業マンみたいなこと言ってんな」


 しかし全くの正論。俺達の、というか俺個人の強みと言ったら確かに……うぅ、小説以外は考えられもしないが、だからって……


「こ、こんな所に来てまでアンタのお小言聞きながら……」

「余計な口を叩いている間にも時間は過ぎていきますよ。話し合うにも宿は必要。こうして話している間に考えられた話で、宿の一つも取れるかもしれませんね?」


 うっ、うぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううう!


「――やりますか? やりませんか?」


アンデルセン先生ごめんなさい。


スキルも魔法もありやしないんだ。やれる事なんて……

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