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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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クラシックは基礎にして奥義

「さて、一つ大きな疑問があるんだが……王族に通じる話ってある?」

「世界を揺るがすような大作とか? それこそアンデルセン先生のような」

「無茶言うなアンタ!? 俺はその人の残滓を、ギリギリ法の範囲内でしゃぶってる悪人みたいなもんだよ!? それにどうしろと!?」

「――良いから書きなさいこの腰抜け」

「ひどすぎん?????」


 そんな、そんな汚物を見るような眼で見る事ないじゃない……い、いや、めっちゃ正論じゃないのかなぁ。それとももっと上を目指せって事なのかな? だったら腰抜け呼ばわりはちょっと勘弁して頂けると。


「……すみません、少し言い過ぎました」

「あ、ハイその辺りは認めてくれるんだ」

「ちょっとイラっとしたもので、つい心の声が口を突いて出て」

「ちょっとイラっとしただけでアレだけの暴言が口突いて出てくるの??? もうちょっと俺に対する思いやり持ってもらえると先生嬉しいかな???」


 いや、贅沢言える立場ではないよ? 無いけどもせめてちょっと腰抜けは。まぁ現代の男子、割と腰抜けと言うか、度胸に欠けている男子多いけども。度胸に賭けて居るレベルもそれはそれでどうかと思うが。


「まぁ歴史的対策は兎も角として、何方かと言えば庶民受けする者の正反対を行くべきかと思いますけれど」

「すなわちは?」

「クラシック。それに尽きるかと思います」


 ……クラシックかぁ……いやぁー、それは、なぁー……!


「俺が恋愛系以上に苦手な物、ご存知でしょうよ」

「先生は何方かと言えば邪道、搦め手、インパクト重視の作品を書いてらっしゃいますからね。クラシックは恋愛系以上に苦手……寧ろ不俱戴天の大敵と言った所でしょうか」

「俺の強みがまぁ、悉く封殺されていくわけだからなあ」


 クラシックにも、やはりちょっとアクセント加えた展開の物もある。だが結局の所、クラシックと相性が良いのは正道、王道の展開だ。邪道、横道、そうじて我が道を行く俺の作風とはまぁ噛み合わない。


「一遍チャレンジしたけど……アレは、なぁ……うーん……」

「私も失笑したのを覚えています」

「二度と書かないと誓ったよ。俺は。本当にショックすぎて」


 実際俺も失笑物の仕事ではあったけどな。自分で読んでてみても『おっ、コレは小学生の作文コンテストの金賞かな?』って、変にポジティブに考えちゃったもん。うん。ちょっとショックすぎて。


「余りの出来にさぁ、ちょっと、俺も衝撃受けちゃってさ。兎も角、クラシック系は、ちょっとやめておいた方が良いんじゃないかっていう話になってこない?」

「ですが、確実に通じるのはその系統ですよ、間違いなく」

「分かっちゃいるけど、不可能な事だってわかってる泥沼に突っ込むのは無理よ?」


 という事で、問題しか無い計画で殴り合うのも、ちょっと危ないという事でクラシック系は止めておいた方が良いと思います!


「……いいえ、泥沼でも、突っ込まざるを得ないと思いますよ」

「なんでや!?」

「結局の所、どうにかしなければ私達は詰みになってしまうんです。逆に、ここさえ何とかすれば、この先の展望が見えてくるんです」

「今は、展望すらないって事なんですかね俺達」

「そうです。切り開くしかないんです。我々は。王族に取り入るしかない……と言う訳でも無いですが、それが一番手っ取り早い、と言う話です」


 いやだから、俺がその泥沼に突っ込んで、行けるならいいよ。でも確実に失敗するって分かってて、そのまま突っ込むのは唯の愚行じゃないのかなぁ……?


「幸い、チャンスは何度でもあります。ウケる話を書く傍ら、クラシックの腕を磨いていくしかないでしょう」

「……し、失敗するって分かってなお出すって事!?」

「恥は私が被ります。その代わり、二話を同時に執筆してもらう事になりますが」

「いや、二話の執筆、は、キツイっちゃきついけども。それより、も、なぁ」


 ……最大の試練は、最大のチャンスって事か……しかし、しかしだからって、あんな作品を世に送り出すとか、ジョークにしてもタチが悪い! アレを出して、失笑されるっていうのが一番キツイ!


「……」

「顔色が悪いですね?」

「いや、そんなことは無いけども。別に」

「プライドを傷つけられるのがキツイですか? あんまりにも、酷い作品を世に送り出すのが? ――気持ちは、分かりますよ? 先生」


 い、いや、そんな事は、別に。ありませんけども。


「先生にも、今まで頑張って来た作家としての、色々なものがあるでしょう。しかしながら、そんな物に拘っている場合では無いというのは分かるでしょう?」

「だから! ウケないレベルの酷い作品だったら意味無いだろうがよ!」

「練習の為の物です。別に最後が良ければいいんですよ……?」


 ひっ、く、首筋っ!? 撫でられた!? って言うか顔近い!? なに!? 凄い怖いんだけども!? やめてやめて、覗き込んで来ないでっ!


「ひぃぃぃぃぃい……」

「先生……? 生き残る為にも……ここは、そのプライドを投げ捨てて……頑張る時なんですよ……? 言ったじゃないですか。なんでも、やる、って」

「い、いいました、けどもぉ……」

「先生の覚悟、カッコ良かったですよ?」


 あ……あぁ……抗う気持ちが失せて行くって言うか、普通に命が惜しいって言うのもあるし、普通に練習をすると考えるのであれば、別にそこ迄恥ずかしくは無いと思うけれども……いやっ! でも結局は他人に見られるんだろう!?


「ダメ……いや……しかし……」

「迷っていらっしゃいますね。では……こうしましょう。余りにも目に余る作品は、私が精査して見せないようにします。行けそうと私が判断したレベルの作品なら、先生も文句はないでしょう?」

「う……そ、それなら。まだ」


 あーでも、こんな都合の良い条件を出されたら、もう俺だって書けないとは言えないじゃないかよ……


「あー、どうやって、どんな作品を書こうかなぁ。そもそも、クラシック系の作品を書くのには、本当に生きた知識とか居るんだぞ……」

「別に深い知識が必要というばかりではありません。王道で、人の心を深く捉えるからこそのクラシックです。先ずはその辺りから、じっくりやっていきましょう」


 王道の展開か。やってこなかった訳では無いけどなぁ。熱い展開とか、そういうのは苦手ではないけどなぁ。うーん……どうにも、丸くなるんじゃないかなぁ、そういう話は。



アンデルセン先生ごめんなさい。


こうも頻発で投稿ミス……予約投稿をした方が良いのか。

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