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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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貴殿、フラグを恐れよ

「続きを書くのは良いけど……新作は良いの?」

「えぇ。寧ろ今回は続編のみで何処まで行けるかを試してみるつもりなので」

「実験か何かしてんのアンタ?」


 しかも俺の作品でさぁ。悪用されている、訳でも無いのが、ちょっと……凄い微妙な感じになってしまう。ワンチャン良い事をしてくれてる気すらする。


「実験と言うより、稼ぐやり方の探求です。此方でも稼げるのであれば、アイデアの温存もしやすいと思うので」

「あっ、じゃあ是非このままで……」

「それに……迂闊な話をして反感を買われないようにした方が、これからの聞き込みにも良いのかな、とは思いまして」

「でももう手遅れじゃないの?」

「聞かないよりマシでしょう?」


 んまぁ……しかし、悪行と言うのは、具体的に何をしたというのか。それを聞いてみたんだが、どうやら俺の偽物というのは、まぁ、しょぼい悪事しかしてなかった模様である。いや、しょぼいって言っても十分な悪事ではあるんだけど。


「なんだっけ? 食い逃げからの押し入り強盗、空き巣、小石で民家の窓を作業の様に叩き割り続けた挙句の、小銭を拾って返さない……」

「一個一個は立札立てるレベルじゃないんですけど、まぁ数がね」

「俺は別に悪いこと一つもしてないんだけどもなぁ。なんか、罪悪感がガンガン増えていくまである気がする」

「同族嫌悪ですか?」

「偽物に同族もクソも無い気がするんだけど」


 まぁ顔がそっくりっていう一点だけを考えれば、確かに同族と呼べないことは無いけどもね。いや、同族と認める訳にはいかん。俺と言うアイデンティティを利用して悪事を働かれたのだ。


「まぁ、捕まえるには手遅れっていうだけで、諦めるのは早いか」

「そうです。濡れ衣を晴らさない事には、この国で自由に動けもしません。自由に動けなければ、来るループへの対処も……」

「そろそろ来そうな気がしないでも無いんだよなぁ」


 隣国に入って大分経つもん。逆に来なかったら、前までのあの三度の来襲は一体何なのかっていう話だよ。二度あることは三度ある、でもって三度あったから何度でもある、的なお約束崩壊するぞ。してもらった方が嬉しいけどそんなラッキーはないって知ってる


「とはいえ、第二部が始まるにはもうちょっと時間がかかりますし、二部に関連して始まるのであれば、まだ時間はありそうな気がしますけど」

「……もしその空白の一か月の間に、何かしらイベントを作れ、的な事だったら?」

「その場合はもう笑って対処するしかないでしょうよ」


 そんな場当たり的な対応でどうにかなるんだろうか。とか思ったけど、結局予測して対応した結果、もっとダメな状態に放り込まれてしまったとかいう間抜けがあるからなぁ。


「その為にも、再確認しましょうか」

「えっ、何を?」

「第二部はどんな感じで始まるか、ですよ。偽物やらお姫様やら、色々考えてる事もありましたけど、私達が考えなければいけない所はもっとあるでしょう」

「……どんな感じで始まるか、か」


 といっても、大分苦労したんだよな。いよいよ始めようってなった時。王子と人魚姫にも負けないキャラクターがテコ入れに欲しかったわけで……って、あぁそうだ。もう一人忘れてた。


「第二部で警戒しなきゃいけないの、もう一人いたわ」

「誰です?」

「王子の側近。というか、騎士。王様の命でなんども人魚姫を捕らえようとするお邪魔虫くんだよ。当然ながら俺のオリジナルですね」

「……そう言えばいましたね、そんなの」


 王様の追撃命令によって生まれた、この小説の重要なキャラクターの一人。本来は作るつもりも、そもそも登場させるつもりも無かったっていう、まぁ作家の病、『その場しのぎが案外良い所に行っちゃって……』っていう奴?


「隣国の姫と王子の元に現れようとする人魚姫。それを阻止しないのは、王様の発言的にどうなんだろう、と思ってまぁ、モブキャラから格上げしたんだけども。そのキャラがまぁ丁度、ね。居ないタイプだったから」

「周りが超人だらけのなか、常人の知恵と技で上手い事戦って見せる」

「そうそう。寧ろその四苦八苦する様子が、共感を呼ぶキャラだったのが完全に俺の想定外だったよなぁ」


 お陰で想定以上に出番が増えて、まぁこの前も言った通りの人魚姫の前に立ち塞がる事が増えてしまったと……いや、俺だって別に嫌いな訳じゃなかったんだけども。にしたってもうちょっと何とかならんかったのかと。


「まぁ、彼が関連してこないっていう訳は、無いと思うけども」

「その二人について考えて、対処するのが一番、と言う感じでしょうか」

「当然主要キャラのお二人も考えない訳ではないけども。当然ながら」


 しかし、あの騎士って正直何でもするっていうか。人魚姫と王子の邪魔なんて真似迄したんだし。命令だけど。気になる所なんだよな。そんな、騎士だから、って言って仕事を選ばないのが余計に。


「俺達の干渉でどうにかなる相手かって言うとなぁ……」

「というと?」

「王族としての義務感につけ込んでの行動誘導。恋する乙女っていう俺の設定から逆算した行動への追い込み……人魚姫がどっちかと言えば、頭脳戦を得意とする相手じゃなかったら上手く嵌ったって部分もあるけど」


 あの騎士は、違うんだよなぁ。


「要するに、汚い手段に強い訳だ。単純明快に」

「まぁ人魚姫を色々な手で嵌めてましたし。それが上手く行ってしまって居る辺り、とても頭も良いという事ですね」

「つまり、俺達の稚拙な策略では、バレる可能性大なんじゃないかな、と」


 仮に、何かしらのループが発生して、それにアイツが絡んで来るとすれば……勝てないよなぁ、我ながら、本当に頭脳明晰、力では無く、知恵と搦め手で締め上げるっていう結構なキャラクターに仕上げたし。


「……もしそうだとしたら」

「ん?」

「私達の事も、バレていたりして。もう」

「いやぁ、流石にそれはないだろうよ。隣国まで逃げて来たんだぜ?」


 これで俺達の事まで分かってたまるかってんだ。流石にアレも人間だよ。こんな極限のイレギュラーの事分かるかってんだ! な!


「――本当にこのあたりか?」

「あぁ。騎士長の読み通りならな」


 ……ほぉぉぉおおおおおおおおん?


アンデルセン先生ごめんなさい。


私も知恵と勇気でなんとかするキャラは大好きなんですよね。

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