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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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ハンター赤ずきん

――赤ずきんちゃんは、お爺さんのベッドの横に立って言いました。


『お爺さんのベッドは、どうしてこんなに軋んでいるの?』

『そ、それはねブフゥ……お、オデの逞しい肉体に耐えきれなかったからだよォ……? 凄いよねぇ……? オデの、ふくよかな体……』


 赤ずきんちゃんには正直太っているようにしか見えませんでしたが、それはそれ。お爺さんへのお見舞いはちゃんと済ませなければいけません。とりあず、お花と果物をベッドの脇にゆっくりと置きました。


『お爺さんの肌は、どうしてそんなに脂ぎっているの?』

「そ、それはね……オデのあふれ出る若い力が、体から溢れ出しているからだよ……ブフッブフフフウウウ……!」


 そのニキビ塗れの顔を見つめながら……赤ずきんちゃんは、最後に、まるで氷のような瞳で呟きました。


「お爺さんは、どうしてそんな鼻がひん曲がる程男くっさいの? 男特有の、体臭が私、とっても不快よ?」

「そ、それは……えっ?」


 そして、そう言った赤ずきんちゃんが、お爺さん……に化けた、デブ狼に向けたのはその手に構えた一本の鉈でありました。首の辺りに添えられたその鉈は、綺麗に磨かれ、鉈と言うか一本の剣の様に輝いています。


「――私のお爺さんは、そう言った体臭にも気を使える紳士なの」

「あ……あぁ……」

「貴方の様な、オス臭さを隠しもしない、落伍者とは訳が違うのよ。騙すのであればもう少し、手段を考えなさいな」


 赤ずきんちゃんはあっという間にデブ狼に馬乗りになると、先ずその喉を、一突き! 悲鳴を上げる手段を封じてしまいました。


「――っ! ――――――――っっ!?」

「しー……静かに……お仕事の時間なのよ? あまり手間をかけさせないで。大丈夫、直ぐに終わるから。苦しいのは、ちょっとの間だけ……」


 そして、その鉈を逆手に構え……今度は、その切っ先を、心臓の上へ。デブ狼は、その冷たい感触に、涙を流しています。


「お爺さんに化けた事だけは、褒めてあげる。けどそれ以外、私の大切なお爺さんを狙った事も含めて……すべて許しがたいわ、よって、貴方は……そうね。その悪い事を考える頭を、丁寧に……切り裂いてあげるわ」




「――と言った感じの語りをした結果、大きな歓声と悲鳴とおひねりを頂きましてございます。ほら、こんな感じで。見てください、この量。町の規模が違うので凄いですね……と言いたかったんですけど」

「前の町とあんまり変わらんなぁ」


 いや、多いって言うのは間違いないと思う。というか、多いって編集さんご本人が言ってたから。俺個人の意見? 金感情に関しては素人同然だからね俺は? そんなね、素人の指示厨みたいな事はしませんよ。


「とはいえ、稼ぎは問題ありません」

「まぁそうだな。これだけあれば食事分は十分賄えると思う」

「とはいえ、この大半を使い切らないと、羊皮紙なんて買えませんけれども……」

「こ、こんなにするんだねぇ、羊皮紙って。紙って、凄いなぁ。アレを大量生産できるようになったのって、人類の進歩なんだなぁ」


 ありったけの英知をかき集めないと探し物は見つからないのだという事でしょう。それを大量消費する前提の作家って、本当に贅沢な職業なんだなぁ……正直、未来の娯楽レベルが跳ね上がってるからこそ、何とかこうして保ててるっていう自覚はある。


「紙を使わなくてもいいとは思うんですけれどもねぇ……紙に書けるっていう、その凄い便利さを味わってしまうとねぇ……!」

「というか、私も一々覚えるのは面倒なので。紙に書いて貰った事を読むほうが楽です」

「あ、じゃあ紙を買うこと自体は問題ないと」

「もう買う場所も辺りを付けました。大きな町ですし、早めに見つかりましたよ」


 とはいえ、貴重品は貴重品だし、気を付けて使わないとなぁ……


「――で? 危険人物プリンセスの姿は?」

「ありませんでした。ラッキーだったのか、アンラッキーだったのか……」

「いや間違いなくラッキーだよ。というか、未だ諦めてなかったんかい」

「そりゃあそうですよ。お金持ちの方に贔屓して貰えれば、それだけ稼げるという事ですから。お金があれば行動しやすくなるというものです」


 ……金の亡者みたいな発言してるけど、この人は金にも執着しないからなぁ。この人が執着するのは俺の原稿の締め切りだけなんだよなぁ……どうしてそんなに執着されるのかが本当に分からない位執着するし。理由が知りたいです。


「とはいえ、先生の言う事も最もなので、ラッキーという事にしておきましょう。お姫様の事を気にしすぎて、怯え切って書けなくもなる、とかになると余りにも可愛そうなのでまぁ」

「小動物扱いは本当に気に入らないが多分そうなるのが目に見えてるんだよなぁ」


 正直俺は小物ですから。そりゃあ追われる恐怖に駆られたらまず間違いなくビビっちまってどれだけ時間が経っても眠れなくなるのは分かる。隣の人は間違いなく大物だからこそ小物ぶりが目立つ。


「……それで? なんか分かったか?」

「何も。ここに来るのが遅すぎたと申しますか」

「遅すぎた?」

「ここ最近は、先生の偽物も一切活躍してらっしゃらないようなので。町の人々も、今は平和だとおっしゃっていました」

「何時頃までは平和じゃなかったんだよ」

「……丁度、先生がこの国に到着した辺り。その直前にまぁ忽然と、と言った感じだったようで。はい。だから遅すぎた、という事で」


 そうか、もうここら辺には居ないって事かよ……! くそぉ、正体を掴むのはもう絶望的って事か。色々正体の考察しても、捕まえない事には、どうにもならならないじゃないのアンタ。


「仕方ないか……」

「まぁ、これ以上悪行を重ねられることは無いと考えれば……」

「あー、そうだなぁ。ネガティブに考えるよりは、そうやって考えるのがまだ」

「後は先生が何も悪行をしなければ大丈夫だと思います」

「俺が悪行をする前提なのやめない?」


 俺そこら辺の人よりずっと倫理観はしっかりあるんですけれど……


アンデルセン先生ごめんなさい。


とあるフィギュアより着想をえました。

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