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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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いざ、新天地へ!

「――そうして、鶏の番の贈り物は、無事に守られて、鶏に届けられたのでした……めでたし、めでたし」

「ほぉおおおおおおっ……」

「はー、ったくひやひやさせてくれやがって、上手く行って良かった良かった」

「……母ちゃんに贈り物、しようかなぁ。あんまりセンスねぇけど」

「やめとけやめとけ、そんなのより黙って抱き締めたほうが嬉しいだろうよ」

「おめぇ……」


 いや、贈り物と一緒にすれば良いんじゃないかな。なんか『なるほど、そりゃあ良いじゃないか』的な雰囲気だけど。


「ったく、こんなのが酒代で聞けるってんだから、良い時代だよなぁ」

「これからもガンガン語って欲しいね!」

「ねーちゃん! また楽しみにしてるからよぉ~! これからもよろしくなぁ!」


 そう言って貰えるのはありがたいけど。残念ながらもうこれで俺達はスタコラサッサするんだよ。すまないね。別に騙して逃げる訳じゃないから、許して欲しいな、なんて言ってみる。


「皆様、今日はありがとうございました……ですが、今日はこれだけでは終わりませんとも。早めに始めさせていただいたという事で、まだまだ、追加でお話でも、と思いましてございます」

「おぉおおおおおおおっ!」

「チクショウ! もう今日はもう金が……いや、安酒一杯を長めに……!」

「おい馬鹿やめろ! しっかり飲んで金落してけ酔っ払い共が!」


 それは余りにも正論で草も生えない。酒屋だもんね。そりゃあ編集さんにお金全部落して行ったら一切オヤジさんに入らないからね、


「ったく……盛況すぎても困るもんだなぁ」

「けど今日は特に酒が売れてるじゃないか」

「そりゃあ確かに。ぶっちぎりで嬉しいけどな。俺だって欲張れるところは欲張り隊だろうがよ」


 だから編集さんには渡したくないってか。ったく。まぁでも直そんなの気にしなくても良くなるっていう話だ。


「……」


 ちらりと入り口を見る。商人さんが立っている。彼に話しかければ、準備完了っていう算段だ。まるでRPGみたいだなぁ……まぁでもこういうラノベチックな欧風世界は実質RPGですし。


「しっかし、今日でここらともおさらばかぁ……」

「――本当に行っちまうのか?」

「何言ってんだ。本当だからオヤジさんだって全力で稼ごうとしてんだろうよ、今のうちにってよ。この前先に報告した事じゃあねぇか」

「そりゃあ、そうだけど」

「ショバ代だって納めたんだから文句言われる筋合いは……いやあるか。いきなり使うって言われて、今度はいきなりもう使わないって言われるんだ。どれもこれもいきなりではあるしなぁ」

「いや長々と言ってるところ悪いが、全くねぇよ」


 ないんかい。


「でもなぁ……もうちょっと、なんだ……行くにせよ、送り出しに宴の一つでもよぉ」

「気持ちは嬉しいけどなぁ。こっちは殆ど夜逃げ同然に出て行くんだ。そんなんやって貰う方が申し訳ないってんだ」

「いや、アンタ等の事情を考えれば、別の場所に活動の場所移す、っていうのも納得できる話だと思うけどなぁ……で、何処に行くかは結局教えてくれないのかい」

「あぁ。残念ながらな」


 取り敢えず、商人さんと店のオヤジさん以外は全く俺達が何処に行くかも知らない。完全に夜逃げだが、とはいえ一番お世話になった人には一応筋は通した。文句はねぇだろう無いと言ってくれ。


「……すまねぇな。最後まで酒を頼まねぇで」

「あぁ、良いさ。正直、ぶん殴って土下座した上からウチの酒全浴びせかけてその分請求したい所ではあるけどな」

「えっ、こっわ、金にがめついやんけ……」

「そりゃあそうだよ。けどまぁ、今までウチに服を齎してくれたからな。その分でチャラにしておいてやるよお姉ちゃん大好き小僧」

「おう上等だ酒を浴びせかけてみろよ。オラ喧嘩だ喧嘩。戦争でも良いぞ」

「乗るな乗るな冗談だろうがよwwww」


 冗談に聞こえないんだけどなぁ……!? 目が笑ってんぞ! なんなら言葉の最後に草が生えてんのが見えてんだよこのクソ店主! 良し分かった、戦争したいのであればその喧嘩、買ったってんだよ!


「クッソがぁアアアアア最後に白黒つけてやる!」

「上等だクソガキ! 酒場のオヤジ舐めるなってんだ!」

「俺に可笑しなレッテルつけてくれた、その借りを返すぞオヤジ! 恨みっていうものの恐ろしさを知るがいい……!」


 喰らえ! 渾身のストレートをよぉ!




「勝てる訳ないと思うんですけど、冷静に考えて」

「う、うるへー……恨みのパワーってのは、時に肉体を凌駕、するんじゃい」

「だからって普段から暴れてる酔っ払いの制圧くらいは手馴れてる店主さんに殴り掛かるとは、中々にクレイジーですね」


 は、途中から哀れな者を見る目になっていく店主から目をそらしてしまったぜ。『お前貧弱すぎんだろ……』って、あの眼は語ってたよ。しょうがねーだろうが、こちとら何年引きこもりやってたと思うんだよ。


「――とはいえ、これで心残りは無いですね」

「あぁ……今日の夜、だっけ」

「はい。商人さんの馬車の準備が出来次第ですけど。今日中には出発できると思われます。荷物を纏める……にせよ、その纏める荷物もほとんどありませんね」


 まぁ、本当に必要最小限の荷物と、新しく買った服しかないしなぁ。


「では先生、取り敢えずこの襤褸布は羽織っておいてくださいね」

「あぁ、そりゃあ羽織っていくけどさ」

「決して脱がないように。宜しいですね?」


 なんでそんなに強調するかね……? いや、まぁ言われなくても脱がないけど。何となくずっとこれ羽織ってた所為で、気に入ってるんだよ。表はもうスッゴイ汚いけども。でもそれがいい味出してる気がする。


「いよいよ、ここともお別れかぁ……?」


 ここらへんで、思い出も一杯出来たなぁ……まぁ、危ない部分の思い出も多くあるけども。それはいいか。忘れちゃおう。どうせ、次の町に付いたら、その危ない思い出が増える事も無いってんだ。


アンデルセン先生ごめんなさい。


いろんなーことー、あったーでしょー

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