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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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追い詰められて覚醒する、お決まりですね

「――早急に稼ごう。全力で隣の国に逃げないと」

「そうですね。何時彼らが此方に再び聞き込みに来るかも分かりませんので。アイデア出しも全力でやりますよ。脳味噌をフル回転させてください」


 言われなくてもだ。もう一回誤魔化せと言われても絶対に無理! それだったら、取り敢えず安全圏まで逃げて、そっから様子を伺う方がまだマシってなもんよ! 行くぞ行くぞ行くぞオラァ!


「と言っても、先日のがこけたばかりだしなぁ」

「それについては大丈夫です。穴埋めする為ならば、手段は選びません。今までやって来た奴のリバイバルをやって荒稼ぎするつもりです」

「えっ、それは前に聞いたってならない?」

「前に聞けなかった話を聞きたいというお客様もいらっしゃいました。きっと大丈夫ですよ。お茶は二番煎じまで許されますし」


 成程、本当になりふり構わず手を打つ感じだな。好き勝手やって、でここには帰ってくるつもりはないと。やってる事がクズそのものだが、俺達とて首つりは嫌だ。悪いが手段は選びはしない……!


「私がリバイバルで時間と金を稼ぎますので、先生はその間に……」

「アイデア出しだな。任せろ。もうこうなればカンヅメも辞さねぇ構えだ!」


 ホントはクソほど嫌だけど。いやな思い出しかないし……あっ、違うんです仲居さんコレはちょっと、極限の閉鎖状態のストレスを発散する為で、決して脱ぐのが好きな変態という訳では……


「――いえ、先生は私と一緒に行動してください」

「えっ、なんで」

「リバイバルの間に、情報チェックを行います。それで、リバイバルで一番受けた話の続編、又は類似する作品を書いて頂きますので」

「いやそこまでする??????」


 マジでなりふり構ってないやん。


「兎も角安全を確保する為ですから。さ、早速行きますよ」

「はえー……って、何処に?」

「酒場です。リバイバルの宣伝しましょう。其処の反応でも情報は得られるので」


 マジで稼ぐために頭脳使ってる。編集さんの目が、お金マークの形に瞳が燃えてやがるじゃあねぇか……! いいぜ、俺も金の亡者の道へと踏み出していってやる! 行くぞ! 出来る限り搾り取ってやろうじゃねぇか!




「人気は白雪姫とブレーメンです。二正面作戦ですね」

「よっしゃぁあああああもうヤケクソだよぉォォォオオオ! 二つ掛け持ちだ! 頭がいかれるまで全力で仕事をしてやるってんだ!」


 凄い! 無垢な人々から金を巻き上げるとかいう糞みたいな行為に手を染めてこれ以上の悪夢を見ることは無かったと思ったら、更なる悪夢がやって来たぜ! しかも二作品同時進行は初めてだぜヒャアッハァアアア!


「よっしゃああああ! 編集さん、インクじゃんじゃん持ってこいや! 紙もドンドコ寄こせってんだ! 羊皮紙を全部真っ黒に染め上げてやるってんだよ!」

「無駄遣いせず効率的に書いてください。タダじゃないんです」

「了解いたしましたぁ!」


 余りにも冷静過ぎて草も生えないんだよなぁ。俺だってテンション上げて押し切ろうと思って居たというのに。それすら寸断するクールプレイよ。いいもんいいもん俺だけテンション上げて書き切るもん!


「ウォオオオオアイデアが湧いて来るけどやっぱり纏まんなくて暴走してきそうだよギャハハハハハ! だーめだ文章が糞みたく纏まんない! ブレーメンがブーメランとかクッソ見たいなオヤジギャグ出て来ちゃって、見た事もねぇなぁこのレベルは!」

「どうしました? そんなクッソ情けない悲鳴なんて上げて、書けないんですか? 書けない小説家に価値なんてあるんでしょうか?」

「うっひょほお! しかも言葉で追い込まれているぅ! スピードが上がるかなぁ!?」


 兎に角書いて書いて書いて、先ずは波に乗らないとマズイ! 波に乗ればどんどん書けるんだけど、それまでが長いからなぁ!


「編集さぁん!」

「弱音は聞きませんから書いてください」

「はえぇええええわっかりました全力を尽くしますワァアアア!」


 慣れぬ羽ペンにメッチャ苦戦して腱鞘炎染みたダメージを負ってるんだけど弱音が許されないなら全力しかないだろうよ! いやぁもう両腕が限界だってつってんのに書かねばならぬとはホント作家は地獄だぜフゥハハハハッハァーッ!


「とりあえず、書けてる分は速攻でチェックしますから、急いで回してください。ダメそうなら言いますので」

「おうじゃあ頼むわぁ!」

「早いですね。分かりました頂きます。えぇっと……おや」


 次だ次! これがダメでももう止めらんねぇから出来る限り今知恵絞って一発オーケーになる様に調整してはいるけど、情熱が止めらんなかったらごめんねぇ! いや止められる気がしないからダメだと思っておこうかな!

 

「ふむふむ、成程。一発オーケーですね」

「ダメかそうか! 分かった分かっ……えっ一発オーケー?」

「はい。良い仕上がりです」


 ……マジでッ!? 嘘でしょ!? もうなんか、自分でもなに書いてるんだろうってなってるレベルの状態なのに、どうして!?


「作品の展開から自然に持ち込む導入、そして余りにも突飛すぎる、という事も無い盛り上げ方、ギリギリを攻めた良い作品かと思います」

「そ、そうなのか……」

「恐らくは、急かされる限界的状況、先生の情熱の暴走、それらが先生の頭のネジを外して狂気と正気の間で良好な作品が生まれたのかと」


 急かされたからこその奇跡……! いや、ちょっと待て、思わず聞き入っちゃったけどそれあんまり褒めてる感じしないぞ? 纏めると頭が可笑しくなってでもそれが逆に良い感じに作用してますよって事だろ?


「……なるほどな!」


 でももう何でもいいや! 良い作品が書けるなら!

 今、頭がブーストされてるなら文句なんて言ってる暇はない! 頭がおかしい内に書けるだけ書けばいいだろうよ! よーし腕のケイデンスを上げろ馬鹿野郎! 締め切り(命の終わる時)のギリッギリ迄、走り抜けろォ!


アンデルセン先生ごめんなさい。


書かねば死ぬって言われりゃあそりゃあ書きますよ

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