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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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ホラーって割と新しい娯楽な気が

――からーん……ころーん。


『ひぃっ! や、やめてくれっ! 俺が、俺が悪かったんだ……』


――哀れ、モグラの体は傷だらけ、泣いて怯えて声を上げても、姫に情けはありません。


『モグラさん、モグラさん。哀れで惨めなモグラさん。カエルと魚の友達が、貴方のお付きを待ってます。さぁ、此方においでなさい』

『やっ……やめてくれ』


――キラリと光る、姫の親指の爪。さっきは真っ赤に染まっていたのに、今はとても綺麗に磨かれています……いいえ、親指姫が、きっと丁寧に舐めとったのでしょう。折角のプレゼントなのですから。


『大丈夫です。今度はきっと、綺麗に裂いて見せますから。お二方は、少し暴れてしまったので、上手く行きませんでしたけど、今度は大丈夫です。直ぐに、パパッと終わらせて差し上げます』


――ちょっと綺麗な紅いお化粧をほほに付けて、親指姫はモグラの頬にそっと手を這わせると……親指をそっと、そのモグラの目に向けて、近づけて行きます。つんと尖った、その爪の先を……


『先ずは、その綺麗なお目目からですね』




「――ぶちゅり」

「「「いやぁあああああああああっ!?」」」


 ……何だろう、そこまで悲鳴上げる? いやまぁ、怖く思えるように書いたのは間違いないけどもさぁ。大の大人が揃いも揃ってキャーキャーと、流石に情けなさすぎるんじゃないかな。


「『その後、彼らの行方を知る者は、誰もおりません』……」

「……」

「あーっ……うえ……」


 そしてね。あの、誰も彼も反応が良くない。どうしてだろう。ホラーとしては結構出来良いと思うんだけどな。ちゃんと、良い感じに演出できてるし。特にカエルを沼から出てきて引きずり込むとか、結構良い演出じゃないのかな。


「あの、もしかしてお気に召しませんでした?」

「……お気に召しませんわ!」

「こ、怖かった……うぅ、母ちゃん、今日は一緒に寝てくれねぇかなぁ……」

「いや、面白くなかったっていやぁ嘘、だとは思うんだけどよ」


 ……なんでだろうなぁ。親指姫っていう名前からは想像も出来ないような内容、口調をキラー側は絶対に乱さない。寧ろ清楚位に書く、とか結構拘ったんだけど。何がお気に召さなかったんだろう。


「いや、こんな話されちまったら、もう俺ら夜歩けねぇよ……」

「というか、お貴族様はこんな話を好んでんのか!? 全く、俺らには理解できねぇ話だぜマジでよぉ」


 いやぁ……やっちまった? これやっちまったか? さては。あ、編集さん、お帰りになる感じですか。分かりました、はい。帰ります帰ります。そっと帰ります。あ、店主さんには好評と。はいはいはい。




「しくじりました」

「しくじったねぇ……出来は、悪くなかったと思うんだけど」

「今回に関しては私の見通しが甘かったです。本当に申し訳ありません。そもそも誰にでもホラーは通じる、と思って居たのは間違いでした。正直」


 えっ。


「そこから?」

「そうです。そもそも、この時代の人々は、夜闇を恐れるのが普通です。夜闇を恐れないのは、それこそこの前会った様な賊か、夜闇を恐れる必要もないくらい強い人間。兵士さんくらいでしょう」


 ……あー、あーっ、成程。そうかそうか! 理解できたぞ。そう言えば、昔の言い伝えって夜闇は危険だってのを、分かりやすく子孫に伝える事が目的なんだってなぁ。そう言えば。となると。


「もしかして、ホラーってこの頃は完全に怯えさせる感じですか?」

「夜が切り開かれ、夜闇が怖くなくなったからこそホラーというのは怖いもの見たさの人達にウケるようになったのでしょうね」


 はー……なんてこった。洗礼された娯楽だからって無条件で受けるって訳じゃないって事だな。クソ、結構現代じゃ当たりのジャンルが使い物にならなくなったとなれば、コレは結構痛手だなぁ。


「あーチクショウ、折角稼げると思ったのになぁ……」

「一切受けない、という訳でもなかった様ですが。ほら、ちょっとくらいは」

「あ、ホントだ」


 と言っても本当にちょっと、誤差くらいだなぁ。仕方ない。今回は完全にチョイスミスって事で仕方ない。諦めるとしようか。


「良し、切り替えて行こう」

「あら、コレに関しては取り乱さないのですね」

「いや、取り乱してもどうしようもないし。またアイデア出しに追い込まれるのは、正直ちょっと厳しいけども」


 そもそも出したアイデアが全然受けなかったのなんて、もう慣れたもんだよ。寧ろバッチリ成功したというのに次々、って急かさせる方が正直辛いものがある。ちょっとくらい休ませろ。


「兎も角、くよくよしちゃいけない。次だ次」

「先生がやる気であれば良かったです。まぁ資金はまだまだ必要ですし、そう言って頂ければ助かります。さ、早速次の話をですね」

「――あのー、お客さん」


 あん?


「どうなされました?」

「いや、宿の前に兵士さんが来ててね。アンタ達の話を聞きたいって言ってらっしゃるんですけども。ちょっと、来ていただけませんかね」

「……えっ?」


 えっ……えっ?


「あ、あのちょっと待ってください。着替えの最中で!」

「はいはい。早めに頼みますよっと……」


 兵士。兵士さんが来てる? ちょっと待って、一体何を調べにだ。ヤバいぞ、バレたか!? 首か、首を取りに来たのか!? だとしたらなんでバレたんだ!? い、いや今はそんな事言ってる場合じゃないか……


「編集さん!、逃げるか!?」

「……取り合えず、会わない、というのは論外です。適当に話を合わせて、切り抜けるしかないと思います。行きましょう」


アンデルセン先生ごめんなさい。


なんで親指姫かと言えば、何となくです。

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