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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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慣れは人間最強の武器

「――ん?」

『どうも先輩。囚人の護送を行っておりますので、失礼します』

「おー、任務ご苦労さん。逃げ出されないように頑張れよー」


 ……もう何だろう。七回目ともなると先輩への受け応えのムーヴに磨きがかかってる気がする。生きていく上で必ずも必要かどうか分からないムーヴだけれど。しかもそれだけじゃないんだよね。


「それと一つ聞いて良いんか?」

『一つだけでしたら』

「お前マジで俺を囚人扱いしてんな? さては。だからこんな俺の縛り方も回を重ねるごとにしっかりして来てんだろうなアンタ」


 さっきまではさ、腕をちょっと動かすくらいは出来てたのが、事ここに至ってもう『あっ……これダメな奴だ』って素人でも分かるレベルまで仕上がってるよ縛り方。


『逃げられたら困るので』

「囚人じゃねぇって言ってんのを理解しろ。ったく……縛られんのは嫌いなんだよ」

『先生……時期遅れの中二病は余りにも痛すぎますからやめてください』

「物 理 的 な 問 題 だ か ら !」


 誰が精神的な話をした。まぁ……精神的にも縛られんのは嫌いだけども。


「ってそんな話をしてる暇じゃない! 誰かに見つかる前にさっさと進むぞ」

『さっき此方の道は行き止まりで特に何も無さそうでしたし、逆の通路ですね。というかさっきの兵士の方には毎度毎度確定で見つかっているのに何を今さら』

「うっせぇうっせぇ、少しでも見つかる人数が少ない方が良いだろ常識的に考えて……こんな惨めな姿。良いか? ここが物語の世界だとすると、自分のガキみたいなもんだぞ。俺が書いた物語の住人ってのは」


 それにこんなSMプレイみられるとか……控えめにいって土下座案件だよ。羞恥心砕け散ってどうしようもなくなるわ。一応、理想の作品だと思って書き上げたのに。


『ここの誰も、貴方が創造主なんて信じもしないでしょうね、そんな哀れな姿を見ても……まぁそう思うのでしたら、砕け散った心を集めて直す準備をなさってください』

「えっ?」

『目の前』


 眼の前ってあっ……? へ、兵士だ。兵士の集団がっ……!?


「ったく、人魚姫の強襲を凌げっつったってなァ」

「出来るもんかね俺達にさ」

「やるしかないだろう。何の為に俺達がこの城に詰めていると思って……ん? どうしたお前。どうした其処の縛られてる奴は」


 へっ……へぇえええええええ、けっ、結構いるなぁ。ひいふぅみぃの……あー十人はいらっしゃいますねぇぇぇぇぇえええええ。


『暫くは彼らと何度も遭遇するのですね。先生の魂は持つのでしょうか』

「ふっ……いっそ殺せぇ……」

『戯言は良いので、行きますよ――先輩方、申し訳ございません、そちら通して頂けないでしょうか』




――ドッグォォォォォオオオオオオオオン……




「――この城に詰めていると思って……ん? どうしたお前。どうした其処の縛られてる奴は」

『囚人です。相当な重要人物の模様なので、急いで連れてまいります』

「お、そうかそうか。じゃあ引き留めるのも悪いな。頑張れよー」


 ……良し。抜けたな。


「さ、行こう」

『先生、無表情になってより囚人らしくなりましたね』


 なんだって? 無表情? 


「甘いな編集さん。これは心の痛みと現実の折衷の為に習得したスキル、悟りだ」

『何がスキルですか異世界転生に一番似合わなそうな顔と身長しておいて。ただの自分を守るための現実逃避でしょうに』

「はははははそれ以上は精神崩壊するが? どうする?」

『面倒なのでやめておきます』


 流石編集さんだ、とてもとても賢明な判断だな! 何だろう無表情の筈なのに、目から熱いモノがあふれている気がする。


『さて、この通路に面する部屋は全て調べましたけど……』

「まぁ見事に全部空振り、と来た。後はこの通路の先、位だけど」

『本当に心当たりは無いのですか?』

「ねぇよ。大体なんだよ自分の作品の世界がループする心当たりって。そんな素っ頓狂な心当たりとか妄想に片足突っ込んでるレベルじゃないか!?」

『心当たりがないとドンドンループが繋がりますが?』

「辞めろ、言うんじゃない……」


 コレで十回は軽く超えてると思うループ現象。当然ながら、二、三回目で何かしら発見する、とかいうそれこそ物語の主人公染みた事も無く……そして、その分俺は羞恥プレイをさせられたので、もう縛られる事にも慣れた。慣れたくなかった。


「く、繰り返す事で分かった事もあるだろうが……タイムリミットとか! 地道な試行錯誤と繰り返しこそが人間が成長するのに必要なんだよ!」


 さっきから聞こえる、人魚姫の一撃による門破壊のド派手な音。それが確実なタイムリミットだってのが分かったって言うのはデカいだろうよ! 時間を意識した動きがちゃんと出来るようになってるんだし!


『良い事を言っている風ですけど……その格好で言われましても、説得力が』

「やかましいわ!」


 アンタがさせた格好に必死になって慣れたんだぞ! それに向かってそんな格好だとお前ェ!? 無礼通り越して謀反レベルの大惨事だぞ!


『というか、騒ぎ過ぎると不審者が鎧を着てると気付かれてしまいますよ? お静かにしないと……ね?』

「こ・い・つ・はぁぁぁああ……」


 お、俺が言う事を聞かない、仕方ない坊やみたいに……心底ムカつく、ムカつくが……バレたら……クソッたれ……ええい、非情に業腹ではあるが黙るのが一番賢い、か。


『では参りましょうか。大丈夫ですよ。先生が大人しくしていればまずバレませんし』

「何時か絶対、マジで、見てろよ。なんかするからな本当に」


 ったく……これでこっちも外れだったらもう、次は牢屋に引き篭もってちゃんと次、何処に行くかを考えないといかんかな……?


「こっちの通路は……おっ」

『……複数人居ますね。それに一人、明らかに格好が違いますよ』

「確かに、豪奢というか……いや待って、ゴメン。凄い見覚えあるわ」


 見覚えがあるというか。人魚姫のもう一人、凄い重要なファクターだぞ。


()()()……」


 めっちゃ閣下ぽいスーツを、筋肉でパツパツに盛り上げた大男。人魚姫最大のライバルにして強敵。王国の誇る無敵の最強の盾……王子である


アンデルセン先生ごめんなさい。


主人公は徹底的に辱めていくスタイル。

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