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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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殴り合い夢中

「うわぁああああああっ!?」

「なんてこった、此奴ら此処まで……!」

「頭ッ! 逃げましょう! 金より女よりまず命ですよ! さぁ!」

「当然だろう! オメェら! 慌ててないでとっとと引き上げるぞ!」


 おーおー一瞬で命を優先しなさる事で……当然と言えば当然すぎて特に何も言う事はない。頑張って逃げてくれ。そして出来れば囮になってくれ。その間に……


「――編集さん!」

「言われなくても全力逃走です。急ぎましょう。アレに巻き込まれたら多分助かりませんよ、多分死ぬよりひどい目に合うまであります」


 いや、死ぬよりっていうか間違いなく死ぬのよ。ゴミカスの様に無様に死ぬのよ。なんだったらトマト状態になって哀れに死ぬのよ。のよ三段活用。そんな事言ってる場合じゃねぇけど気晴らしって事で許して。


「ヌゥンハッ!」

「甘いわっ!」


――ズドォン!


 もう音が人間のそれじゃないっての。戦車の砲撃音がこんなんじゃなかったっけ? もう想像もしたくないんだけども。というか、ヌゥンハッ、の方が女性の声のソレだったんだけど、金髪美人が言ったのヌゥンハッ、インパクト強過ぎるんだけども。


「――先生」

「ええぃどうした!? 逃げるんじゃないのか!?」

「その逃げ道が潰されました。緊急事態です」


 ……えっ?


「ホラ」

「ど、どういう事なんじゃあこの大木はぁ!?」


 こ、こんな物さっきまでなかったのに! どっから降って来たこんな障害物……チクショウ、乗り越えちゃるこんな……その間に俺死ぬかもなぁ。


「さっき、乱入してきた時に吹っ飛ばしてきた木だと思います」

「それが空中から降って来たっての!? はーマジで嵐みたいなもんだなあの二人の殴り合いはぁ!」


 もう帰りたいってのに……帰らせてもらえない……なんだよお前ら! 俺の事そんなに好きかよぉ!(泣) うれし涙かな! うーんこのしょっぱさは間違いなく哀しみの涙でござるなぁ!


「何処かに隠れますか?」

「なんで貴女はそんなに冷静になんだろう!? でも今はその冷静さがとても頼もしいわホント! 小石が今、後ろから散弾みたく飛んで来てるんだけどもさ! なんでそんな冷静なんでしょうか!?」


 さっきからチリって体に掠るんだよ。


「怖いですけど、まぁ一周回って冷静になったと申しますか……はい」

「そ、そうなのか……成程、幾らアンタでもこの状況じゃなぁ、ってちょ待って! ヤバいドンドン小石飛んで来てる! 早く隠れないと!」

「あ、そう言えば間近でこんな殴り合い見るのは初めてですね。一応見ておきます?」

「本当に怖がってる貴女? ねぇ? もうちょっと怖がってる素振りあるでしょ?」


 絶対怖がってるとか嘘だよ。嘘以外の回答が出せないよ……見ておきたくないと言えばそれこそ嘘になるけど! 先ず隠れ場所なのよ。


「隠れ場所ですか。それこそ、あの辺りとかどうですか?」

「あの辺りって……?」

「ホラ、あの浅い穴とかですよ。あるじゃないですか」

「あ、ホントだ。丁度いい所にあるなアレ。って言うかあんな穴あったっけ?」

「後ろのお二人の激突で出来た穴ですよあれ」

「アーンどんだけぇ~!?」


 うーん安全になったのは嬉しいけど恐怖が倍増したのはちょっと許しがたいかな私といたしましても。あ、何でもないです大人しくそこに入ります。


「うっわ……深いじゃん……めっちゃしっかり掘ってあるじゃん……バカじゃん」

「掘ったというか拳で大地を削ったと思うんですけど」

「あー恐怖が二乗したわ。もう立ってられないから穴の中で寝るわ」


 よしっ! 丁度いいサイズだな! 寝やすい! ……じゃなくて後は此処に突っ込んで来ない事を祈るしかない。ここが避難場所として失敗したら俺は死ぬのが確定しますからね。この穴みたく、バカでかい丸い隙間になるか、生き延びて勝利の果実をすするか。


「――勝負ッ!」

「アァァアアア羅ァァァアアアアッ!」

「通さぬ……通さぬぞォッ!」

「あっ、すいませんなんでもないですそっとしておいてくださいできれば……」

「勝手に勝負仕掛けて勝手に負けるのは止してください。情けなさすぎます」


 だって……気合入れた途端に目の前に金髪の阿修羅と金剛力士像体系の王子様が目の前で凌ぎ合いしてたんだぞ、そりゃあ『あっ、すいません帰ります』ってなるよ。アレだよね。あの、スジ者の方々に絡まれた気分ですよ。


「しかし凄い迫力ですねぇ。もう音が、ズドドドドドド、ですもんね。工事現場ですものね。こんな穴だって掘れちゃいますよ」

「……人間サンドバッグとかそのレベルの絵面なのに」


 しなやかな女性の足(細マッチョ)と逞しい男性のゴリマッチョがぶつかって聞こえるのが、人間が奏でるとは思えぬような重厚な掘削音! 俺の耳は間違いなくおかしくなってる。それともこの世の物理法則が彼らに敗北している?


「凄い怖いのが、打ちこまれても王子がピクリともしてない事ですかね」

「蹴りの重さを音が表してるのに、その音で殴られ続けているというのに全く動かないのがより恐怖を煽ってるよ……」


『人魚姫から、濁流の如く蹴りが浴びせかけられる。イワシの群れたちが体を張って鍛えさせてくれた連続キックを、しかし王子は真正面からなんと、堰き止めている。両者の鍛え方は、双方尋常でないことの表れである』


 とか書いてたら実際にこんな事になったっていう。あのね、文字で表現しようと思った事をホントそのままやって下さってね。ありがとうございます! でも感謝山盛り恐怖も山盛りですわよ! でもカッコいいと思っちゃうビクンビクンあっちょ、小石飛ばさないで。


「……あっ、また地面が抉れましたね」

「はえー、もしかしたら俺達もああなるかもしれないのか」

「あっ、逃げ損ねた盗賊さん達が天へと吹っ飛んでいきましたよ」

「そっかぁ、俺達の未来の姿かもしれないねぇ~」


 ……思考停止しても恐怖は全く減らない。俺はね、今日大事な事を学びましたよ。


殴って殴って、その先へ。

尚周りには恐怖以外の何者でもない模様。

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