表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
57/285

これがラブコメだ(暴論)

「――ほう、少しは、俺の守りを打ち崩せるようになったか。芯に響く良い、蹴りだ」

「舐めるな、私の足は大海原で鍛えられた筋金入り。アレだけで終わる様な軟なモンじゃないのよ」

「ならばその荒波仕込みの足技で、我が門を如何に崩すか、試してみろ」

「言われずとも! 濁流が如く、押し通らせてもらう!」


 で、音がパァン! ……拳と脚のぶつかりあう音で、最早銃声と同等のとんでもない音が出てしまうのはね、軽い恐怖なのよな。重たくないのが逆に怖いというか。そして、蹴りの度にふわりと靡いて月の光に輝く、人魚姫の金の髪が綺麗だと思いました。まる。


「あと、目に見えて衝撃波が出てますね」

「衝撃波ってイメージだと思ってたんだけどなぁ……」


 見えるんだね。線で見えるって言うか、景色が歪むんだよ。線で。其処を衝撃波が通ってるってハッキリ分かる位に。いやぁ、こう言うのを見てると、参考になるなーって思うわ。小説の……


「なんて悠長な事言ってる場合じゃないよなぁ……揺れてるよなぁ……」

「はい。衝撃波がこっち迄飛んで来る度に」

「やっぱり逃げた方が良かったせず。これ、そう遠くない未来、折れるぞ」

「そうしたら私達、重症でそのまま入院という流れもあり得ますね」

「院がないからワンチャンどころか十中八九で放置だろうけども」


 そうしたら俺間違いなく死ぬなぁ。いやだなぁ。しかし、下りてさっさと逃げるか、とするにしてもそう容易くはいかぬ模様で……


「……どうだ?」

「まだまだ下に居ますよ。王子様の対決を見守ってらっしゃいます」

「あー成程ねはいはい。皆様熱心な事で。クソが」

「先生、もう少し、丁寧な口調でお願いします」

「あぁゴメンゴメン……クソわよ」

「そう言う事ではありません先生。そしていつも思うんですけど、お嬢様はそんな口調になりませんから」


 だからお嬢様風語録なんだと思うけれども……まぁ、それはどうでも良いか。ハイ。まぁ王子様に置いて行かれた兵士様が、周辺で王子様を応援してらっしゃいます。


「あー、完全に降りるタイミング見誤ったよね」

「見所が出来た、と判断できた時点で帰るべきだったとは思います。正直」


 でも、これはもうどうしようもないですよホント。ビビって降りたらぶっ殺されて終わりですよマジで。槍で刺し貫かれるか、殴り潰されるか……下手すると逃げ出したのが俺だってバレてまたぞろ捕まって首を落とされるまである。


「――とはいえ、タイミングが無い訳でもないと思いますけど」

「あるか? あるかなぁ……いや、あると信じたいと思うけど。え、どのタイミング?」

「いえ、遅かれ早かれあの勢いで全てを巻き込んで薙ぎ倒して終わりになると思うのでその辺りにこっそりと」

「いやそれ俺らも終わりになってそうだけど……?」


 首落される前に吹っ飛んで命落しそうだなぁそれは……何だったら周りの人たちの命も全然全て落ちてそうだなぁ。うん。


「その前に逃げないとどうしようもなくない!?」

「大声を出さないで。バレますよ」

「いやそんな事言ってる場合か。要するに俺は死ぬまでこの木の上って事だろ!?」

「そうじゃなくて。人間より木の方が耐久性があるでしょう。つまり周りの兵士さんの方が倒れるのが早いという事ですよ」

「……木が倒れてしまう前に、ここら辺は安全になると?」


 凄い暴論だなオイ。いや、あながち間違ってるとは言い切れないけどもさ。だからと言ってその勢いに乗ってしまうのは濁流に飛び込んでいくが如き、エゲツナイ暴挙じゃないのかな流石に。


「砕けッ! 我が右足!」

「我が守りをそう容易く抜けると思われては、業腹だな」


 えっ、もうだってさ。さっきから凄い勢いで、とんでもなく加速してるよお二人の戦いが。もう、人魚姫の足なんかカポエイラもかくやっていう勢いでグニャングニャンに曲がって自由自在だし。その勢いを、どっしりと王子様しっかり受け止めるし。


「……周りの兵士の人に襲われるリスク覚悟で降りた方が良いんじゃないかな」

「そちらもそちらで死ぬリスク高いですけど」

「そ、それはそうだけどもさ……」


 だからって、地雷原を突っ切るより、傍の濁流に飛び込めばもしかしたら奇跡的に流木に縋れば助かるかもしれない……的な、そんなどんぶり勘定。そんな事してたら多分間違いなく助からないと思うんですけども。


「兎も角、いずれにせよ危険は伴います。なら運次第で無事に帰れるかもしれない選択肢の方が宜しいのではないですか?」

「アンタが言うと、それが正しい事に聞こえてくるから困る」


 ……結構強引な力技である事には間違いないけど、運任せで奇跡的に助かると考えればお得、なのかもしれない。


「これでっ……おしとおぉぉぉる!」

「通さぬ、我が守り、抜けると思うな! その軟弱な一撃で!」


――ズッ……ォォォン


 あーいや、どんぶり勘定に染まって来てる良くない良くない。だって、だって今の渾身のヤクザキックとアームブロックの衝突で、この木の揺れ方、絶対にダメなやつでしょう。グラって、グラってなったぞ。今、マジで木が折れるかと思って……?


「そろそろですかね……っと」


 あのちょっと。何を降りてるの。


「危ないって!?」

「ですから。今の凄い余波で、結構倒れてますけど」

「はぁっ? ……あ」


 ホントだ。兵士の方々、結構な人数が気絶してらっしゃる……えっ? あのどんぶり勘定成功したのまさか。いやちょっと流石に納得がいかないんだけど。というか、さっきの余波で人間がこれだけの人数気絶するって何だろう、冷静に考えて。


「上手く行ったからそれが正義ですよ」

「そ、そうなのかな……」

「さ、下りましょう。もう私達も見届けましたから。コレは間違いなく見せ場になりますよ。それだけ確認できたから宜しいではありませんか」


 いや、ちょっと……ああもう行っちゃったし! ちょっと、ちょっと待ってくれよ! 置いてかれるのは流石に、ちょっと! くそ、選択肢ってもんが無いのか俺には!


アンデルセン先生ごめんなさい。


これがラブコメなんだ……きっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ